2024.07.10
2024年3月にカリフォルニア州サンノゼとオンラインのハイブリッドで開催された世界最大規模のAIカンファレンス、「NVIDIA GTC 2024」。生成AI の最先端技術を活用した取り組みや研究結果が紹介されました。また、2024年4月に行われたGoogle Cloudの旗艦イベント「Google Cloud Next '24」でも生成AIが注目テーマとして取り上げられました。
今回のSILICON VALLEY TREND NOW 2ndでは、「AI市場の主要企業、NVIDIAとGoogleのカンファレンスからみる!今後のAIトレンドとは」をテーマに、シリコンバレーに赴任しグローバルトレンドのキャッチアップをミッションに活動している日立ソリューションズのキーマン2人が、上記の2イベントに参加して得られたトレンド情報を現地からライブ配信で報告。その概要をお伝えします。
田中 秀治
Director, Business Development and Alliance Group, Hitachi Solutions America, Ltd.
2010年 株式会社日立ソリューションズ入社。
地銀向けインターネットバンキングシステム、某ポイントシステム、某省庁の全世界の情報通信基盤など多くのプロジェクトを担当。2018年より経営戦略本部に異動し、海外アライアンス事業における事業開発を担当。2021年よりシリコンバレーに赴任し、海外商材の探索、トレンド調査、日系企業との新規事業共創に従事。2023年7月よりシリコンバレー拠点を率いる。
坂元 歩
Business Development Specialist, Business Development and Alliance Group, Hitachi Solutions America, Ltd.
2014年 株式会社日立ソリューションズ入社。
アカウントエンジニアとして、顧客の各種基幹システムのインフラ構築・移行プロジェクトに多数従事。2023 年6月よりHitachi Solutions Americaシリコンバレー拠点にて業務研修。海外商材の探索、トレンド調査、日系企業との新規事業協創に従事。
今回の事前申込者は400名を超え、関心の高さを感じられるイベントとなった。レポートセッションの冒頭で田中は、世界の生成AIマーケットの概況について言及した。2023年1月~12月までの生成AIに対する投資規模は、金額と取引数ともに過去最高を記録。その主な投資先は生成AI開発インフラ領域に向かい、中でも基盤モデルを開発するスタートアップに投資が集中しているという。これまでは大規模言語モデル(LLM)が主流だったが、現在はマルチモーダル(画像・音声・テキスト)/オープンソース/小型化/エージェント型などのサービスを開発するスタートアップが台頭。
田中は「MicrosoftやGoogle、AWSなどのメガベンダは資金を提供することでAIスタートアップへのガバナンスを効かせるとともに、自身のサービスとも連携しやすくして顧客獲得をめざす考えのようです」と分析する。
次に、坂元から、2024年5月18日~24日にアメリカ・サンノゼで開催されたNVIDIAの年次カンファレンス「NVIDIA GTC 2024」の概要が報告された。このイベントはAI業界の有識者や研究者、エンジニアを対象とし、AI技術、自動運転、ロボティクス、エッジAIデバイスなど多くの最新技術が集結した。
デモンストレーション・ブースエリアには、新型GPU「NVIDIA Blackwell」やコンテナ化されたマイクロサービス「NVIDIA Microservices」(NIM)などが展示されていた。
キーノートで発表されたのが、AIの高度なシミュレーション機能を提供する「NVIDIA Omniverse」だ。工場や物流倉庫など物理的なスペースにロボットや高価な機器を導入する業界では、AI適用・自動化を推進するためのシミュレーション・ファーストのアプローチが必要となる。そのためAIの開発・テスト・改良をデジタルツイン上で行ってから、現実の産業インフラにデプロイ(展開)することで、時間とコストを大幅に削減できるという。
他にも、データセンター構築に最適化したデジタルツインの導入事例や、「Apple Vision Pro」を活用してインタラクティブな産業用デジタルツインをVRヘッドセットにストリーミングできるようにする計画なども発表された。
続いて田中は、2024年4月9日~11日にアメリカ・ラスベガスで開催された、Google Cloudの年次イベント「Google Cloud Next '24」について紹介した。
「会場は生成AI一色でした」と述べる坂元は、コンピューティング、LLM、AI開発プラットフォーム、エージェントアプリレイヤなどの各領域で発表が相次ぐ中で、Google独自の高性能半導体「TPU」の新モデルも注目されたという。
LLM関連では、最新モデル「Gemini 1.5 pro」の一般プレビューが行われた。テキスト・画像・オーディオ・ビデオなどを扱うマルチモーダルなモデルとして強化し、最大で1時間のムービーや70万語のテキスト、11時間のオーディオ、3万行を超えるコードが1つのストリームで扱えるのが特徴だという。
坂元は「注目のキーワードは"エージェント"でした」と強調する。Google Cloudが生成AIポートフォリオのブランドをGeminiに統一したことで、今後、人やエージェント、エージェント同士がどのようにつながるのかの具体的な事例も紹介されたという。
また、開発プラットフォーム「Vertex AI」のマルチ環境への対応も話題になっていたという坂元は、「マルチモーダル、マルチモデルへのアクセス性を強めているのが印象的でした」と述べる。さらに、「Google Chat」に導入された「AI Teammate」というエージェントが会話の要約や質問への回答などに対応するデモや、「Google Docs」、「Google Sheets」、「Google Slides」に次ぐ新しいアプリケーションの「Google Vids」などが紹介されたという。
最後に、まとめとして坂元は、「NVIDIAやGoogleはパートナーシップ提携でAI事例の確立をめざしています。MicrosoftはOpenAI連携をベースとしたCopilotに注力。NVIDIAはGPUで培ってきた物理演算・グラフィック処理領域で差別化している印象でした。また、GoogleはGeminiをコアとしたAIエージェントを積極的に作っていくように感じました」と語り、レポートセッションを終了した。
今回のイベントは報告内容が盛りだくさんで時間が押してしまったため、事前に受け付けていたご質問やご意見などにオンタイムではお答えすることはできなかったが、コミュニティ「ハロみん」のチャットルーム(Slack)で登壇者自ら回答をする予定だ。また、イベントのアーカイブ動画や資料もチャットルームに掲載している。見逃した方もぜひチャットルームからアクセスいただきたい。
日立ソリューションズでは協創で未来をつくっていくオープンなコミュニティ「ハロみん」を2024年4月からスタートしました。
ハロみんは「ハロー、みんなの◯◯」を略したことばです。◯◯には皆さんが実現したいサステナブルな地球社会を示す様々な言葉が入ります。例えば、「誰もが自分らしく過ごせる社会」、「エシカル消費が当たり前な社会」、「みんなが清潔な水を使える社会」などです。
ワクワクする未来へ一歩踏み出す協創の出発点を掲げ、心豊かに暮らすためのサステナブルな地球社会をめざして活動してまいります。
その一環で、今回のようなイベントも継続して実施し、オウンドメディア「未来へのアクション」でもご紹介していきます。皆さんのご参加もお待ちしています。今後のイベント予定はこちらをご参照ください。
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