2025.03.07
2024年11月19日、東京・中野区の丸井グループ本社にて、株式会社日立ソリューションズと株式会社丸井グループの共催イベント「社会課題解決に向けた"will"の重要性と組織間連携(企業、官民)の可能性」がリアル・オンラインのハイブリッドで開催されました。業種や業態も異なる両社ですが、社会課題解決への共通した思いを持っています。コミュニティ同士がイベントを通して「つながる」ことで、社会に及ぼすインパクトを拡大することができるのではないかという可能性を探りました。イベントでは両社のコミュニティ活動を紹介するとともに、スペシャルゲストとして、株式会社Publink 代表取締役社長 CEO 栫井 誠一郎氏をお迎えし、一人ひとりが持つ"will(意志)"の重要性と、官や民との組織間連携の可能性をテーマとした講演が行われました。また、両社コミュニティ運営メンバーによるトークセッションも用意されるなど、バラエティに富んだ内容となりました。以下にその概要をお伝えします。
<スペシャルゲスト>
栫井 誠一郎氏
株式会社Publink 代表取締役社長CEO
2005~2011年に経済産業省・内閣官房(NISC)で勤務。官と民、両方の肌感を理解し繋げることの必要性を痛感し退職。システム受託やITベンチャーの共同創業者(CTO兼CFO)を経て、官民両方の経験を元に株式会社Publinkを設立。官僚数百人との繋がりや信頼関係を強みに、新規事業・新規政策創出、Webメディア、官民への研修等を推進。代表的な事例は、レベル4自動運転トラック(TaaS)のガバメントリレーションや、自治体向けとしては長野県「チャレンジナガノ」プログラム事務局など。22年には『Forbes JAPAN』の「日本のルールメーカー30人」に選出。
最初に、日立ソリューションズ ハロみん運営事務局 コミュニティマネージャー 中崎 一成が登壇し、コミュニティ活動の概要について説明しました。「日立ソリューションズはITの会社としてソリューション提供など経済価値に軸足を置いきましたが、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)(※1)を経営の旗印とすることにより、お客さまのみならず社会に対しても価値を提供する会社にトランスフォーメーションしていく方針を定め、さまざまな変革の活動を行っています」と中崎は話します。
日立ソリューションズのSXプロジェクト
SXを実現するためには、社員一人ひとりが意識を変え、行動変容を起こす必要があります。また、多様なステークホルダーとつながり、知恵や技術を出し合って未来を作っていく"場"も必要となります。そのため、「ワクワクする未来へ 一歩踏み出す、協創の出発点」をコンセプトに、パートナーや地域社会を含めてつながるオープンなコミュニティ「ハロみん」を2024年4月に立ち上げました。ハロみんではSXにつながる最新トレンドを学んだり、同じ志を持つ仲間とつながったりする場として、さまざまなテーマでイベントを開催しています。特に、最新技術情報をテーマとしたイベントは参加者の皆さまからも好評で、参加者同士で闊達な議論が行われています。
ハロみんのコンセプト
次に、丸井グループ 社内起業家コミュニティ検討イニシアティブ 西山 知早紀氏が登壇。同社のコミュニティ活動について紹介しました。丸井グループでは、「すべての人が『しあわせ』を感じられるインクルーシブな社会を共に創る」というミッションを掲げ、全ての事業活動を通じてこの実現に取り組んでいます。西山氏は「挑戦を促す組織づくり(プロジェクト型組織)を、当社では『公認イニシアティブ』と呼び、手挙げしたメンバーそれぞれの強みを活かしながらSIコミュニティを活性化させる為の取組みを行っています」と説明します。現在、丸井グループではソーシャル・イントラプレナー(SI)の活躍を通じて社会課題の解決が加速する世の中を実現するため、このような公募で集まったメンバーを中心に活動を行っています。ソーシャル・イントラプレナーとは、既存の組織にいながら組織のリソースを活用することで社会課題を解決する働き方や生き方のこと。SIコミュニティの参加メンバーは、所属・組織を越えた幅広い人財が集まり、SIによる社会課題解決の実現をめざしているということです。
続いて、スペシャルゲストとして登壇したのは、Publink 代表取締役社長CEO 栫井 誠一郎氏です。「社会課題解決に向けた "will" の重要性と組織間連携(企業、官民)の可能性 ~ゼロセク・インキュベーションプログラムの経験をもとに~」と題した講演を行いました。栫井氏は経済産業省時代にさまざまな政策テーマを扱い人々との対話を通じて実行してきましたが、中央官庁でのキャリア形成だけでなく民間企業や自治体の方々とも交流し、つながることで世の中の壁を突破することをビジネスベースで拡大していこうと思い立ち、28歳で経産省を退職。システム受託やITベンチャーの共同創業者を経て、2018年にPublinkを設立しました。「各組織がバラバラに動くのではなく、一人ひとりが互いのwill(思い)に共感し、組織の壁を越えて共創していく仕組みを作りたかったのです」と振り返ります。
日本は戦後、官民が議論を行い、産業育成や工業環境整備、素材産業の構造改革、規制緩和など、長期的視野に基づく企業の成長がありました。しかし、次第に官民の癒着が問題化し、会話がなくなってしまったと栫井氏は指摘します。「現在は官民共創での事例は増えており、遠隔医療、エネルギーの自由化と事業参入、病院の株式会社解禁、スマートシティ、他にも多くの事例が生まれました。Publinkでは事業活動と並行して官民のさまざまなコミュニティで中心的な役割を担い、省庁、自治体、大企業、ベンチャーへの豊富なネットワークを官民連携のシナジーにつなげています」
また、Publinkでは、第三セクターならぬ「第0セクター」(ゼロセク)と称し、ゼロから話して未来を創るインキュベーションプログラムを実施しています。「社会が急速に変化する中で、企業は自社のサービスや事業が追いつかない、若手の採用・転職防止に苦戦している、長期視点での新規事業が育たないといった課題を感じていると思います。このプログラムでは5日間で事業や政策の企画をブラッシュアップします。これまで省庁や自治体、企業、コンサル、クリエイター、ソーシャルベンチャーなど数多くの官民の担当者が参加し、課題を解決しながら意欲的なプロジェクトも数多く立ち上がっています」と説明します。
最後に栫井氏は、事業を推進していく人の共通点があるといいます。1つ目は、とにかくwill。本気の思いが大事であること。2つ目は、言語化と発信。それにより周囲を巻き込んで仲間を作ること。3つ目は、壁打ち(自分の考えやアイデアを他人に話してその反応をもとに考えを整理する手法)の量。さまざまな人と会話をすることが重要だと指摘し、講演のまとめとしました。
イベント後半では、栫井氏をモデレーターに迎え、日立ソリューションズと丸井グループ両社のコミュニティ運営メンバーによるトークセッションが行われました。
画面奥、左から、日立ソリューションズ側メンバーの竹谷 未希人、中崎 一成、後藤 桃香、野田 勝義、
モデレーターの栫井 誠一郎氏、丸井グループ側メンバーの塩田 裕子氏、藤澤 紘司氏、西山 知早紀氏、陳 子頡氏
はじめに、各社コミュニティ活動では何が成功の定義になるのかが話題となりました。丸井グループの塩田氏は「何を成功とするかを毎年のように悩んでいます。どのように社内起業家を育てるのか、SIを構築するのかなど、今期も壁打ちをしているところです」と打ち明けます。それを受け、西山氏は「SIの認知拡大や世の中にSIをブレイクさせる方法、SIとして活躍するまでのロードマップなども考えています」と補足します。また藤澤氏は「私たちもwillを探している途中です。それも含めて社内にもSIとしての働き方、生き方を広め、丸井グループ全体を盛り上げようとしています」と話します。また、陳氏は「私は学生時代に起業の経験があり、応援された側でしたが、社会人になった今、SIを応援する側にもなってみたいと思い、活動を行っています」と話します。
日立ソリューションズの野田は「みんなで持続可能な社会を創っていくために、さまざまな価値観を持った方々が、学び、繋がり、協創していくなど、活動の輪を広げていくことが大事であると考えています」と語ります。「当社では5%ルールを定めてSX活動を推進する制度もつくりました。一人ひとりがどのように行動するかを考え、アクションを起こすカルチャーを作っています。また、イノベーション創出活動の面においては、特に若い世代には新規事業や海外ベンチャーとの協創に意欲を持つ社員も多いので、スタートアップの育成制度や海外でのリサーチ、ベンチャーキャピタルとの交渉も推進しています」と説明します。竹谷は、「スタートアップ制度を立ち上げて数年経ちますが、プログラムの要件をクリアして海外で会社立ち上げを成功させているケースもあります」と紹介します。
次に、両社のコミュニティの違いについて議論されました。栫井氏は「丸井グループは文系的な社会課題解決のアプローチですが、日立ソリューションズは技術で未来を変えたいという理系的なアプローチです。日立ソリューションズの技術を、丸井グループのフィールドで役立てるとおもしろそうですね」と提案します。塩田氏は「両社の社会課題を解決したいというwillが重なると、強みや得意分野を持ち寄って、より大きなインパクトになるかもしれません」と期待します。野田も、「IT業界以外の企業様とコラボレーションする際は、まさに"絵を一緒に描くこと"がとても大事であると考えています。また、どう実現するかにおいては、ITなどのさまざまな技術が必要になってくるので、それを一緒に考えるための技術を提供したり試したりすることも可能です」と応えます。栫井氏は「それぞれ得意分野が異なるので、willを共有することで共感が得られ、さまざまな可能性がかけ算のように広がっていくでしょう。とてもワクワク感がありますね」と述べます。
続いて、willについての議論が交わされました。栫井氏は「willの形は人それぞれで正解はありません。『私のwillはこれです』というのがあれば教えてください」と問いかけます。言語化は重要だと指摘する塩田氏は、「尊いことを言わなければだめだとか、仕事に関わることしか話せないなどと考えると言語化できません。仕事していて楽しいこと、やりたいことを言えるのもwillになるのではないでしょうか」といいます。藤澤氏は「私は以前、商業施設をオープンさせる機会を持ちました。開店の数時間も前から行列を作ってお待ちのお客さまを見て、オープンさせるまでに様々な苦労はありましたが、新規店舗を作って本当に良かったと実感しました。そうした感動を多くの社員に共感してもらいたいと思うこともwillかもしれません」と話します。
日立ソリューションズの後藤も、「以前セキュリティ人財に関するイベントを行った際、社内の女性セキュリティスペシャリストに集まっていただき、仕事を始めたきっかけや今後への思いなど語ってもらいました。セキュリティは堅い・難しいというイメージを持たれがちですが、そうした親しみやすいイベントを通してさまざまな方にセキュリティへの興味を持ってもらいたいと考えています。」と語ります。中崎も「SXには明確な到達点はなく、遠い目標に感じられますが、小さなことでも継続的に積み重ねていくことが重要です。今回のイベントもそのひとつですが、同じ思いを持つ参加者とつながり、次に会う約束ができたとき、私たちは次のステップに進むことができます。出会って次の展開を話し、また会う約束をする。このように積み重ねていくことで、確実にSXに近づいていきます。このような積み重ねを続けていくことが、今の私のwillです」と答えます。
最後に栫井氏は、「今回のイベントではさまざまな可能性を感じました。主体的に声を上げることで共創が実現していくと確信しました」と語り、トークセッションを終了しました。
その後、会場では、リアルに参加された皆さんと栫井氏、登壇した両社のスタッフによる交流会が行われました。今回のリアル参加者は登壇者も含め総勢25名程でした。それぞれが社内コミュニティ運営やイノベーション創出、社会課題解決につながる働き方などのテーマに真剣に取り組む方々のため、即席のプレゼンがあちこちで繰り広げられるなど、熱気溢れる交流が行われました。日立ソリューションズのハロみんスタッフも、丸井グループのイニシアティブメンバーの方々との情報交換や親睦を深めることで、新たな見識を広げる貴重な機会となりました。
また、本イベントのアンケートにおいても、この交流会が有意義だったとの意見が多く寄せられました。
日立ソリューションズの協創で未来をつくっていくオープンなコミュニティ「ハロみん」では、ワクワクする未来へ一歩踏み出す協創の出発点を掲げ、心豊かに暮らすためのサステナブルな地球社会をめざしてサステナビリティをテーマにコミュニティを作って活動してまいります。その一環で、今回のようなイベントもオウンドメディア「未来へのアクション」でご紹介していますので、皆さんのご参加もお待ちしています。今後のイベント予定はこちらをご参照ください。
https://future.hitachi-solutions.co.jp/community/