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2026.04.22

【イベントレポート】
AIエージェントは製造現場をどう変えるのか。
製造業DXとOTセキュリティの最新動向

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株式会社日立ソリューションズ(以下、日立ソリューションズ)が運営するコミュニティ「ハロみん」は、2026年3月3日に『NextGen Security Meeting AIエージェントで変わる製造現場の未来とは ~つながる工場と支えるOTセキュリティ~』を開催しました。

本イベントでは、「フィジカルAI元年」とも言われる技術潮流を背景に、製造業におけるAI活用や現場DXの可能性、そしてそれを支えるOTセキュリティのあり方について議論しました。

講演では、現場DXの取り組みやAIエージェントと3Dモデルを活用した現場支援、OTセキュリティの動向などが紹介されました。設備データや熟練者の暗黙知をどのようにデジタル化し、現場で活用していくかといった実践的な課題についても具体例とともに示されました。

パネルディスカッションでは、製造業DXの技術進展や現場・アフターサービス領域でのイノベーション、OTセキュリティの課題、そして変革を進めるための第一歩について議論が交わされました。

本レポートでは、各講演と議論の内容をもとに、AI時代の製造業DXの論点をご紹介します。

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<登壇者>

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    福本 勲 氏

    合同会社アルファコンパス 代表CEO 
    中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)

    1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。同年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げに携わり、その後、インダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」を立ち上げ・編集長などをつとめ、2024年に退職。2020年にアルファコンパスを設立し、2024年に法人化、企業のデジタル化やマーケティング、プロモーション支援などを行っている。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX: EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』、『製造業DX Next Stage: 各国/地域の動向やAIエージェントがもたらす新たな変革』(近代科学社Digital)がある。主なWebコラム連載に、ビジネス+IT/SeizoTrendの『第4次産業革命のビジネス実務論』がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。2024年6月より現職

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    吉村 健太郎 氏

    株式会社日立製作所 
    研究開発グループ
    モビリティ&オートメーションイノベーションセンタ
    主管研究員

    2001年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。同年日立製作所 日立研究所入社。2009年大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了、博士(情報科学)。産業機器、自動運転などの制御システムおよびソフトウェアに関する研究に従事。近年は、生成AIおよびAIエージェント技術の産業応用に関する研究開発を推進。IEEE Senior Member、情報処理学会 組込みシステム研究会 幹事。
    <著書>実践AIエージェントの教科書(共著、リックテレコム社)、ソフトウェアプロダクトラインエンジニアリング(共訳、エスアイビーアクセス社)

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    江角 忠士

    株式会社日立ソリューションズ
    産業イノベーション事業部
    グローバル本部
    第2部
    部長

    2001年 日立システムアンドサービス(現日立ソリューションズ)入社。
    日立製作所のコンサルティング部門において、IT技術コンサルタントとして活動後、自社に戻り、コンサルティングビジネスの立上げに従事。グローバル経営管理や管理会計などの大規模BIシステム構築プロジェクトにPM、ITコンサルタントとして参画した後、ERPパッケージやBIシステムの大規模プロジェクトのプリセールスを担当。2014年からMicrosoft事業に従事し、Microsoft社の最新技術を用いたソリューション開発、製品・サービスの導入や伴走型のDX推進サポートを担当。生成AIの登場に伴い、Microsoft Azure OpenAI、Copilot Studioを活用した生成AI事業立上げに従事。

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    岡野 芳徳

    株式会社日立ソリューションズ
    セキュリティソリューション事業部
    サイバーセキュリティソリューション本部
    ネットワーク・サイバーセキュリティソリューション部
    第4グループ
    グループマネージャ

    2006年に現日立ソリューションズ入社。認証セキュリティを担当後、ネットワークセキュリティ部署に異動。2023年より株式会社オプライゾンに出向し、ビル向けのネットワークサービスにおいてプロダクトのマネージャーを担当。2025年より現職でネットワークセキュリティ、OTセキュリティ業務に従事。

<モデレーター>

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    野田 勝義

    株式会社日立ソリューションズ 
    経営戦略統括本部
    サステナビリティ推進本部
    シニアエバンジェリスト

    入社後、開発事業、ネットワーク事業、コンサルティング事業などに従事。2022年より、全社SX(サステナビリティトランスフォーメーション)プロジェクトのリーダーとして、MVV刷新、マテリアリティ特定などを推進。2024年には、「ハロー、みんなのSX」を旗印としたオープンなコミュニティ「ハロみん」を立上げ、サステナブルな未来社会の実現に挑んでいる。2025年に、日立ソリューションズが大阪・関西万博 シグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」にパートナーとして協賛した際には、プロジェクト責任者として体験型ワークショップをはじめとする各種活動を牽引した。

※2026年3月時点の情報です。

基調講演|AIエージェントとフィジカルAIが拓く製造業の未来

合同会社アルファコンパス代表CEOの福本勲氏は、AI技術の進化を踏まえ、AIエージェントやフィジカルAIが製造業の現場をどのように変えていくのかについて講演しました。

製造業のAI活用は生成AIからAIエージェントへ

福本氏は、製造業におけるAI活用の進化を、マシンラーニング、ディープラーニング、生成AI、AIエージェントという流れで整理しました。生成AIは「賢い辞書」のように人の指示に応じて情報を生成するのに対し、AIエージェントは「優秀な部下」のように目標に基づいて自律的に判断し、複数のツールや情報を組み合わせてタスクを実行できる点が特徴だと述べました。

製造業では、生成AIの試験導入を経て、現在は社内データや業務履歴と連携した実用段階に入りつつあり、保守・保全やカスタマーサポートなどで活用が広がっているといいます。さらに、構内物流、生産管理、生産計画などの専門領域ごとにエージェントを設計して連携させる「マルチエージェント型」の取り組みも始まっています。福本氏はこれを製造業の「大部屋会議」に近い取り組みだと説明しました。

海外では、製造現場の作業指示や検査に生成AIを組み込む取り組みも進んでいます。福本氏は製造現場向けのデジタル作業基盤を提供する米国企業の「Tulip」の「Frontline Copilot」を例に、AIが作業指示を出し、カメラや各種データをもとにミス検知から品質判定まで行う仕組みを紹介しました。

こうした動きを踏まえ、欧米では生成AIが作業者に指示を出す現場が現実になりつつあり、作業の標準化が進めば一部業務はロボットに置き換わる可能性もあると指摘しました。

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AI時代に求められるサイバーセキュリティとデジタルトラスト

次に、AI活用の拡大に伴いサイバーセキュリティの重要性も高まると指摘しました。企業間のデータ連携やITとOTの接続が進む中で、サイバー攻撃の影響はサプライチェーン全体に広がる可能性があるといいます。

日本企業では自社防御にとどまりがちですが、取引先の脆弱性が全体のリスクにつながるため、企業間で信頼関係を築きながら対応する必要があると指摘しました。こうした考え方は「デジタルトラスト」と呼ばれ、サイバーセキュリティは単なる防御ではなく経営戦略の一部として捉えるべきだと説明しました。

また今後は、複数のAIエージェントが連携して意思決定やタスク処理を行う「AtoA(Agent to Agent)」の広がりも見据え、共通ルールや標準化の重要性にも言及しました。

フィジカルAI元年に向けた日本の製造業の戦略

最後に福本氏は、ロボットやヒューマノイドが状況に応じて自律的に動くフィジカルAIが、製造現場を含む物理世界を変える可能性に触れ、「フィジカルAI元年」とされる2026年がその転換点になるとの見方を示しました。

そのうえで、日本の製造業が取り組むべき方向として、半導体を「産業インフラ」として捉える視点、現場データの活用による競争力強化、熟練者の暗黙知のデジタル化を挙げました。日本の強みは現場に蓄積された知識や文化にあり、重要なのは技術導入そのものではなく、現場知と組み合わせて生産性を高めていくことだと強調。AIはそのための手段として活用すべきだと述べ、基調講演を締めくくりました。

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製造設備保全で熟練者の知見を継承するフィジカルAI

株式会社日立製作所 研究開発グループ モビリティ&オートメーションイノベーションセンタ 主管研究員の吉村健太郎氏は、設備保全を支援するAIエージェントの開発事例を紹介しました。

労働人口不足と産業高度化に対応する日立製作所の取り組み

吉村氏は、労働人口不足の深刻化や地政学リスクの高まり、デジタル化・AI化による産業の複雑化といった課題を挙げ、こうした環境変化に対応するため、日立グループでは「世界トップのフィジカルAIの使い手になる」ことを掲げていると説明しました。

その実現に向け、自社でAI活用を徹底して試す「カスタマーゼロ」の取り組みを進め、得られた知見をもとに顧客やパートナーとAIのエコシステム構築をめざしているといいます。

また、プロダクト、OT、ITを併せ持つ点を強みとし、これらを統合して産業分野の知見と組み合わせることで、フィジカルAIやAgentic AIの活用を進める枠組みとして「Lumada 3.0」や「HMAX」を推進していると述べました。

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熟練技術者の思考プロセスを再現する保全AI

本取り組みでは、製造設備の故障原因や対策を短時間で推定するAIエージェントを開発。ダイキン工業との共同プロジェクトとして進められ、試験運用も始まっています。

背景には、設計データや設備ログ、保全記録といったデータが十分に活用されていないという課題がありました。特にテキスト中心の保全記録は新人技術者が読み解くのが難しく、熟練者のノウハウ継承が課題となっていました。

従来のRAGでは既存知識の検索は可能でも、新規故障への対応が難しいため、熟練技術者の思考プロセスに着目。図面をもとに設備構造を把握し、原因を推論する熟練者のプロセスをAIで再現したと吉村氏はいいます。

具体的には、設備図面から構造情報を抽出したナレッジグラフと、STAMP/CASTに基づく原因分析手法を組み合わせることで、設備の構造や相互関係を踏まえた推論を可能にしました。これにより、自然文の入力に対しても設備内の位置関係や流路を参照しながら原因を特定できる仕組みを実現しています。

正答率90%まで向上。AIと人が学び合う産業社会へ

このAIエージェントはダイキン工業の熟練技術者による評価も受けており、従来のGPT-4+RAGの正答率約67%に対し、約90%まで向上しました。吉村氏は、新規故障にも対応でき、特に複雑なケースほど図面を理解したAIの有効性が高いと評価されていると紹介しました。

また三菱ケミカルの工場でも実証が進み、2026年2月には「HMAX Industry 現場サポートAIナビ」として正式提供が開始されています。

吉村氏は、本取り組みの本質を「熟練者のナレッジの抽出とAIへの継承」にあると説明しました。AIの提案を人が評価し、知識を追加して再学習することで、AIと人がともに学び合う循環が生まれるといいます。

さらに、スキル部分を共通化し設備データを差し替えることで他設備や他社にも展開可能であり、フィジカルAIの再利用を通じて産業全体の変革につながる可能性を示しました。最後に吉村氏は、「人とAIが学び合いながら成長する産業社会の実現」に期待を示し、講演を締めくくりました。

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工場の3Dモデル化とAIエージェント活用による保守サービス支援

株式会社日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部 グローバル本部 第2部 部長の江角忠士は、工場の3DモデルとAIエージェントを活用した保守サービス支援の取り組みを紹介しました。

AIナビと3Dモデルによる現場作業支援

江角は、保守サービス現場の課題として、設備の高度化・多品種化による業務の複雑化と人員不足を挙げました。育成に十分な時間を割けない中で熟練者への依存が高まり、未熟練者が判断や作業に不安を抱えやすい状況が生まれているといいます。

こうした課題に対し、「教育による成長実感」「安全・安心の確保」「生産性向上」を支援する仕組みとして開発されているのが日立「Frontline Coordinator - Naivy(ナイヴィー)」です。

本仕組みは、AIと3Dモデルを組み合わせて現場作業を支援するものです。作業者はタブレットからAIに質問することで対応方法を確認でき、さらに設備を3Dモデル化したVR空間上で対象箇所の位置を視覚的に把握しながら作業を進めることができます。

また、管理者はOTデータをもとに設備状況を把握し、現場へ遠隔で指示を出すことも可能です。AIによるナレッジ検索、3Dモデルによる位置案内、OTデータによる遠隔支援を組み合わせることで、未熟練者でも作業を進めやすい環境の構築をめざしていると説明しました。

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暗黙知のデジタル化と現場3Dモデルの自動生成

一方で導入には、熟練者の暗黙知のデジタル化や、3Dモデル・VR教材の作成負担といった課題があります。ノウハウは文書化されていないことが多く、AIが活用できる形に整理するのは容易ではありません。またVR教材もPoCでは評価されるものの、制作負担や専門スキルの壁から継続運用が難しいケースがあるといいます。

こうした課題に対し、日立ソリューションズは二つの取り組みを進めています。一つは、AIによる業務インタビューの自動化です。AIエージェントが熟練者に質問し、音声を記録・要約しながらナレッジ化することで、注意点や判断基準まで体系的に抽出します。

もう一つは、現場3Dモデルの自動生成です。360度カメラで撮影した画像からAIが点群データを生成し空間を再構築することで、低コストで設備表示まで識別できる精度で再現可能な3Dモデルを作成できると説明しました。

技術継承の本質は「一緒に考えるAI」

講演の最後に江角は、保守現場で求められるAIは単に答えを提示するものではなく、人と一緒に考えるAIだと述べました。AIが複数の選択肢を提示し、最終判断を人が行う形が現場に適しているといいます。

また、未熟練者の心理的安全の観点からも、作業中の適切なタイミングでアドバイスを行うAIの重要性を指摘しました。その実現には、文書ナレッジなどのITデータだけでなく、設備データや熟練者のノウハウといったOTデータを組み合わせることが不可欠だと説明しました。

生成AIにはまだ制約もあるものの技術進化は速く、今後こうした課題も解決されていくとの見方を示し、講演を締めくくりました。

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製造現場のDXを支えるOTセキュリティ

株式会社日立ソリューションズ セキュリティソリューション事業部 ネットワーク・サイバーセキュリティソリューション部  第4グループ グループマネージャの岡野芳徳は、DXやAI活用が進む製造現場で求められるOTセキュリティの考え方について講演しました。

つながる工場で高まるサイバーリスクと事故事例

まず、OTセキュリティの重要性が高まる背景として、AIやクラウド活用によるITとOTの接続拡大を挙げました。従来は閉じた環境で運用されていたOTも、データ連携が進むことでサイバー攻撃の対象となり、セキュリティは前提条件になっていると説明しました。

続いて岡野は、事故事例を紹介しました。ドイツの生産設備メーカーでは、不審な通信の影響範囲を特定できず、結果的に工場全体を停止する判断に至りました。実際にはOT側は侵害されていなかったものの、影響範囲が不明なまま停止範囲を広げてしまったケースです。

また、半導体向け計測機器メーカーでは、ランサムウェア攻撃を受けて一部工場が操業停止となり、売上に約2億ドルの影響が発生。さらにその先の半導体メーカーにも約2.5億ドルの影響が及びました。岡野は、OT領域の被害はサプライチェーン全体に波及する可能性があると指摘しました。

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OTセキュリティは可視化・分離・検知・復旧の順で備える

被害を防ぐための基本対策として、岡野は「IEC 62443」や経済産業省の「工場システムにおけるサイバーフィジカルセキュリティガイドライン」、内閣官房 国家サイバー統括室(NCO)が示す「サイバーセキュリティ2025」に触れ、ネットワーク分離やアクセス制御、ログ管理、暗号化などの基本対策の重要性を説明しました。

最後に岡野は、OTセキュリティ対策を「可視化」「分離」「検知」「復旧」の4段階で整理しました。

まず「可視化」では、OT資産と通信関係を把握し、ASM(アタックサーフェスマネジメント)の考え方で脆弱性を管理してリスクの所在を明確にすることが出発点だと述べました。
次に「分離」では、ITとOTの境界を明確にし、Zone&Conduitに基づいてゾーン設計を行い、必要な通信のみを許可する設計にすることが重要だと説明しました。
「検知」では、OTの異常検知とIT・OTログの連携により、侵害の影響範囲を把握できる体制を整える必要があるとしました。
最後に「復旧・継続」では、バックアップに加え復旧手順を整備し、サイバーBCPを通じて事業継続性を高めることが重要だと述べました。
このようにOTセキュリティは段階的に整備することが重要であり、生産を止めないための備えとして取り組む必要があると強調し、講演を締めくくりました。

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パネルディスカッション|製造業DXを前に進めるための論点

パネルディスカッションでは、前半の講演内容を踏まえ、製造業DXを前に進めるための課題と可能性について議論が行われました。モデレーターの野田が提示した4つの問いを軸に、技術、現場、セキュリティの観点から登壇者が意見を交わしました。

製造業DXの技術はどこまで進むのか

最初のテーマでは、フィジカルAIやスマートグラス、AIエージェントなどの新技術が製造業DXの中でどのように進展していくかが議論されました。

福本氏は、生成AIと連携したソリューションの拡大を背景に、製造業でのAI導入は今後さらに進むとの見方を示しました。技能継承が難しくなる中では、生成AIに指示される現場の抵抗感があっても、従来とは異なる現場運営が求められる可能性があると述べました。一方で、未知の改善までAIが担えるかは不透明であり、生産技術の自動化は今後の技術進展を見ていく必要があると指摘しました。

これに対し吉村氏は、日立グループの大みか工場におけるデータ活用の取り組みを紹介し、HMAXやLumada 3.0のもとで設備保全ではAIが故障対応方法を提示するケースも生まれていると説明しました。マニュアルや図面といった蓄積データを生成AIで現場に活用する取り組みも進んでいるといいます。

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現場やアフターサービス領域でのイノベーション

二つ目のテーマでは、AIエージェントなどの技術が現場やアフターサービスでどのように活用されているかが議論されました。

江角は、AIエージェントや3Dモデルは、リスク予知や安全教育での活用ニーズが高いと説明しました。作業前のブリーフィングで危険箇所の共有や、事故リスクの疑似体験トレーニングへの活用が検討されているといいます。デバイス面では、スマートグラスは安全面の制約があり、現時点ではタブレットの方が実用的であるものの、今後の進化によってリアルタイムの作業支援につながる可能性もあると述べました。

福本氏は、製造業は垂直統合型から、企業間連携によって顧客体験価値を生み出す方向へと移行しつつあると述べ、コアコンピタンスを見極めた協業の重要性を指摘しました。

吉村氏は、新技術は完成を待つのではなく現場で試しながら実装していく姿勢が重要だとし、顧客とともに実証を重ねながら技術開発と課題解決を進める必要があると述べました。

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サイバーセキュリティで現場を守れるか

三つ目のテーマでは、製造現場におけるOTセキュリティの課題と現状が議論されました。

岡野は、IT部門と現場の連携の難しさを課題に挙げました。対策は進みつつあるものの、ネットワーク構成や機器接続の整理が不十分でリスクを把握しにくいケースが多く、AIやクラウドと接続するうえでは基盤情報の整理が重要になると述べました。

岡野は、IT部門と工場現場の連携の難しさを課題に挙げました。IT部門がセキュリティ対策を推進しようとしても現場は忙しく対応が難しいため、「どうやって現場に実行してもらうか」がIT部門の大きな悩みになっていると指摘しました。現状、ファイアウォール設置や資産管理などの対策は進みつつあるものの、ネットワーク構成や機器接続の整理が不十分でリスクを把握しにくいケースが多く、AIやクラウドと接続するうえでは、まずこうした基盤情報の整理が重要になると述べました。

福本氏は、サイバー攻撃は国家レベルで行われるケースも多く、情報システム部門だけで対応できる問題ではないと指摘。セキュリティは経営課題として捉え、インシデントを組織で共有することが重要であり、攻撃側がAIを活用する時代には防御や教育でもAIを活用する発想が必要になると述べました。

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革新を進めるためのはじめの一歩

最後に、革新を進めるための具体的なアプローチについて議論が行われました。

岡野は、OTセキュリティの出発点として「可視化」の重要性を挙げ、資産や通信関係、脆弱性を把握して初めてリスクを認識できると説明しました。実際にはネットワーク構成図が存在せず、作成から始めるケースも多いといいます。

福本氏は、AI活用は難易度の高い領域ではなく、図面や報告書の検索、データ照合などミスが起きやすい業務から始めることで効果を実感しやすいと述べました。

江角は、現場でのデジタル活用には成功体験の積み重ねが重要だとし、熟練者と若手双方に価値を示しながら理解を広げる必要があると説明しました。また、顧客と協創しながら技術を実装していく姿勢が重要だと述べました。

吉村氏は、製造業に共通する課題はコミュニティやコンソーシアムで共有しながら解決していく必要があると指摘しました。さらに、生成AIの時代には知識を「実行可能な形」で活用していくことが重要になると述べました。

福本氏も、「何ができるか」だけでなく「何とつながれるか」という視点が重要だとし、他社との連携による価値創出においてコミュニティの役割が高まる可能性を示しました。

パネルディスカッションの最後には、製造業における変革推進に不可欠な「協創」とコミュニティの大切さが議論されました。吉村氏は、設備保全やセキュリティ、AIの安全な運用といった課題は製造業全体の「共通問題」であると指摘し、これらを一社単独で解決するのではなく、コミュニティを通じて共に解決策を導き出し、全体で活用していくことの重要性を強調しました。福本氏も、今後のビジネスにおいては巨大なシステムを単独で作るのではなく、「自社で何ができるか」と「他者とどうつながれるか」の視点を掛け合わせることが不可欠だと述べました。自社の強みを活かしつつ不足する領域を他者と補完し合い、「つながる価値」を設計する場として、コミュニティやエコシステムが極めて重要な役割を担うと締めくくりました。

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Q&A|予知保全はどこまで実現できるのか

Q&Aでは、製造業における予知保全の実現性について質問が寄せられ、「30日後に故障する」といったレベルでの予測が可能か議論されました。

吉村氏は、設備データから異常の兆候を捉える「予兆検知」はすでに実用化されており、近年は時系列AIや物理現象を扱うモデルの進展によって精度向上が期待されていると説明しました。

一方で福本氏は、近い将来の変化を予測することは可能でも、故障時期を日単位で特定することは難しく、現状は確率的な予測にとどまるとの見解を示しました。吉村氏もこれに同意し、兆候の把握と時期の特定には依然として差があると補足しました。

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クロージング|製造業DXを進めるための4つのポイント

福本氏は、製造業の革新は熟練者のノウハウの扱い方にかかっているとし、暗黙知をデータ化・可視化しながら段階的に活用していくことが重要だと述べました。

吉村氏は、生成AIによってロングテールの事象や新しい故障へ対応できる可能性が広がっているとし、熟練者の知見をAIエージェントとして企業間で共有できるエコシステムが製造業全体の発展につながるとの見方を示しました。

江角は、現場改善や暗黙知といった強みを生かしつつ、技術は現場で使ってこそ価値があるとし、顧客と協創しながら実装を進めていきたいと語りました。

岡野は、技術の進化に伴いセキュリティの重要性が高まっていると指摘し、技術活用を支える前提としてセキュリティを捉えて議論を深めていきたいと述べました。

最後にモデレーターの野田は、製造現場のAI活用とセキュリティ対策は今後さらに重要になるとまとめ、企業単独ではなくネットワークを通じて知見を共有しながら進めていく必要性に触れ、パネルディスカッションを締めくくりました。

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本レポートが、AIエージェントやフィジカルAIの進展が製造現場をどのように変えていくのかを考える手がかりとなり、技術と現場、セキュリティを組み合わせながら製造業DXを前に進めていくための示唆となれば幸いです。

日立ソリューションズからのお知らせ

日立ソリューションズでは、協創で未来をつくっていくオープンなコミュニティ「ハロみん」を、2024年4月より運営しています。「ワクワクする未来へ 一歩踏み出す、協創の出発点」を掲げ、「繋がる」「探索する」「深める」「創る」をコンセプトにイベントや参加者同士の交流などの活動を行っています。モビリティ・セキュリティ・まちづくりDX・先進技術など、幅広いテーマを取り上げております。その一環で、今回のようなイベントもオウンドメディア「未来へのアクション」でご紹介していますので、皆さんのご参加もお待ちしています。今後のイベント予定はこちらをご参照ください。
https://future.hitachi-solutions.co.jp/community/

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日立ソリューションズはオープンなコミュニティ『ハロみん』でサステナビリティをテーマに活動しています。
みんなでより気軽に、より深く繋がれるよう、無料のオンラインチャットルームをご用意しています。
情報収集や仲間探しなど、さまざまな話題で自由にお話ししましょう。
ぜひご参加ください。