
2026.04.15
株式会社日立ソリューションズ(以下、日立ソリューションズ)が運営するコミュニティ「ハロみん」は、2026年3月12日に『仕事と介護の両立支援を企業文化に:3社の事例から考える風土のつくり方』を開催しました。
本イベントでは、仕事と介護の両立を「あたり前」にする企業文化のあり方について、企業の両立支援の事例をもとに議論が行われました。
講演では、従業員主体のコミュニティやDI施策(ダイバーシティ&インクルージョン)を起点とした取り組み、社内周知の設計や制度活用の課題が紹介され、両立を支える風土づくりや「話せる場」の重要性が具体例とともに共有されました。
パネルディスカッションでは、介護を語れる職場のつくり方や社内浸透の工夫、管理職の役割、働きがいとの両立などについて、多様な立場から議論が交わされました。
<登壇者>

山中 藤子氏
株式会社電通
シニアマーケティングディレクター/HRM Co ディレクター
dJ Carers Hug主催/電通シニアラボ
マーケティング領域でブランド戦略やDX推進に長年、従事。現在、人事課題に取り組むHRM CoディレクターとしてHRM業務を兼任。遠距離介護経験を契機に、介護としごとの両立を考える社内ERG(※1)「Carers Hug」を主催し、コミュニティ支援や情報発信を推進。電通シニアラボでも高齢化社会の課題解決を企画中。

國松 志帆氏
パナソニック株式会社エレクトリックワークス社
人事・総務センター
Well-Being推進部
Well-Beingチーム
主幹
自治体にて化学職、独立行政法人にて企画,医療系施策,NGO/NPO支援担当。
2018年パナソニック入社 CSR,健康経営,DEI担当のほか、新規事業複業を経験。
2026年1月より現職 組織開発,DEI,健康経営,人権DD担当。
#ENFP #元リケジョ #F1 #韓ドラ #単身赴任 #家族旅行LOVE

伊藤 直子
株式会社日立ソリューションズ
経営戦略統括本部
エグゼクティブエバンジェリスト兼 事業戦略本部 本部長
1992年、日立中部ソフトウェア(現 日立ソリューションズ)に入社。
ソフトウェア製品開発、ネットワーク・セキュリティSEを経て、2004年管理職へ。2015年から働き方改革のプロジェクトに入り、自社の改革推進とともに、自社での取り組みを生かして企業の働き方改革をITで支援する事業に携わる。2023年から「仕事と介護の両立」に向けた全社での取り組みをリード。エバンジェリストとして働き方改革について、また、女性活躍支援や企業のダイバーシティについても、講演実績やメディア出演実績を多数持つ。
※名古屋在住で、在宅勤務メイン、週1~2日程度東京出張している。

天川 博史
株式会社日立ソリューションズ
営業統括本部
通信・社会営業本部
第4営業部
第2グループ
部長代理
※挨拶・パネルディスカッションのモデレーターとして登壇
本イベントの冒頭では、株式会社日立ソリューションズの天川博史が登壇し、本テーマに取り組むに至った経緯を説明しました。
きっかけは、約3年前に同社で実施されたサステナビリティアイデアソンです。SDGsをテーマとした同コンテストで、「仕事と介護の両立」を提案し、最優秀賞を受賞しました。当時中学1年生の子どもに意見を求めた際に「これからは介護でしょ」と言われたことをきっかけに、次世代にとっても身近な課題であると認識したといいます。
その後、取り組みは社内プロジェクトとして発展し、本イベントの開催につながりました。天川は「皆さまとともに学びを深めていきたい」と述べ、開会の挨拶を締めくくりました。

講演の1つめとして、株式会社電通の山中藤子氏が登壇し、従業員主体の活動であるERG(Employee Resource Group)を起点にした取り組みと、ビジネスケアラーの増加という社会的背景について紹介しました。あわせて、社内コミュニティ「Carers Hug」の実践が共有されました。
山中氏はまず、ERGを「従業員が主体となり、会社の支援を受けながら働きやすさと組織パフォーマンスの向上につなげる活動」と説明しました。生活課題や社会課題に向き合う点が特徴であり、電通ジャパンではグループ横断で知見の蓄積を進めています。
また、働きながら介護を担うビジネスケアラーの増加により、介護は個人の問題から企業が向き合うべき課題へと広がっていると指摘しました。特にミドル層では、仕事の責任と介護が重なり、キャリアや生活に複合的な影響が生じます。
山中氏自身の経験も踏まえ、「介護は働く現場におけるリスクとして捉え、両立のあり方を考える必要がある」と述べました。
こうした問題意識を背景に、従業員コミュニティ「Carers Hug」が立ち上がりました。
社内セミナーをきっかけにグループ会社からも反応が広がり、「わかりやすい形で推進すべき」との声を受けてコミュニティ化が進展。人事やDI、サステナビリティ部門も参画し、組織横断で展開されています。
初期のランチタイムサロンには、直前の告知にもかかわらず100名以上が参加し、その後も関心の高さが継続しました。当初は制度や情報提供を検討したものの、情報量の多さから整理が難しく、方針を転換。実際の体験に基づく「気づきの共有」を中心とした運営へと切り替えました。
個人の体験談を60秒で伝える「ロールストーリー」も展開し、個別性の高いテーマでありながら共感を得られているといいます。
山中氏は、「共通解がないテーマだからこそ、個々の気づきを共有することに意味がある」と述べました。

社内アンケートでは、「上司の理解やサポートが必要」との回答が約7割にのぼる一方、制度が十分に活用されていない実態が明らかになりました。山中氏は、この背景として「制度の存在と使い方の理解が結びついていない」点を指摘します。
また、相談会の取り組みでは利用が進まず、「相談」という形式自体がハードルになっている可能性も見えてきました。こうした試行錯誤から、「自然に話せる場づくり」の重要性が認識されたといいます。
山中氏は、仕事と介護の間にあるギャップが孤独感を生みやすい点にも言及。職場で介護の話ができる環境があれば、情報共有や相談が生まれ、そのギャップを埋めることにつながると説明します。そのうえで、「風土改革は大きな施策ではなく、日常の中で話せる環境の積み重ねから生まれる」と述べました。
「Carers Hug」の取り組みはまだ途上にありますが、ERGを通じて従業員主体の活動と企業の支援が組み合わさり、組織横断の連携や経営層の関与も広がりつつあります。
山中氏は、「従業員の視点から継続することに意味がある」とし、この1年の取り組みで得た気づきを今後も共有していきたいと語り、本セッションを締めくくりました。

続いて、パナソニック株式会社の國松志帆氏が登壇し、人事の立場から、仕事と介護の両立に関する社内周知の進め方と課題について紹介しました。「いかに社員に届け、行動につなげるか」という実務視点の取り組みが語られました。
同社では、CHRO(Chief Human Resource Officer)チーム主導でDI施策を推進し、国内約1万8000名を対象に周知を展開してきました。女性活躍や健康課題、アクセシビリティなど多様なテーマに加え、育休復帰前セミナーや不妊治療に関する講演、経営層向け研修など、横断的な施策を実施しています。特に経営層約400名を対象とした研修では、各責任者が自らの言葉でDIの必要性を発信する機会を設けてきました。
一方で、介護は従来のDI施策では中心テーマではなく、2024年頃からCHROの発信を契機に取り組みが本格化したといいます。また、制度自体は整備されているものの、「制度があること」と「実際に使われること」の間には隔たりがあると指摘しました。
社員への周知として、eラーニングや研修に加え、外部ネットワークへの参画や他社事例の取り込みを進めてきました。中でも、企業横断で介護課題に取り組む「エクセレントケアカンパニークラブ」への参画を通じて、自社の立ち位置や実態把握の必要性が明確になったといいます。
そのうえで、國松氏はデータと具体的なケースの提示を重視しました。社内アンケートでは、「上司に状況を伝えていない社員が3割以上いる」ことが明らかになり、自由記述からは属人化への不安やチームでの支援を求める声も把握されました。
これらを研修で全従業員と管理職へ共有することで、自分事化を促すことができた一方で、情報提供が一方向になりやすい点には課題も残っていたと振り返りました。

そこで國松氏は、従来の"介護中の人向け"施策から、「これから介護に直面する可能性がある層」への周知へと転換しました。
外部知見をもとに、最も不安が大きいのは介護前の層であると捉え、対象やタイトルを明確に設計し、検索では得にくい初期情報を中心に構成。あわせて「介護を10年遅らせる」という視点を取り入れ、フレイル予防や健康寿命延伸といった内容も組み込みました。
その結果、通常100名程度の参加規模に対し、210名が参加するなど高い反応が得られ、参加者からは「不安が軽減された」との声が多く寄せられたといいます。
國松氏は、本取り組みを「視点の置き方によって周知の質が変わる一例」と位置づけました。制度の充実だけでなく、「いつ・誰に・どう届けるか」という設計の重要性を示しつつ、今後の実践への広がりに期待を寄せて本セッションを締めくくりました。

最後に、株式会社日立ソリューションズの伊藤直子が登壇し、仕事と介護の両立をテーマにした社内施策と、介護を語り合える風土づくりの具体的な取り組みについて紹介しました。
伊藤はまず、介護支援が企業にとって「経営課題」として位置づけられつつあると指摘。2024年3月に経済産業省が企業の経営者向けガイドラインを公表したことにも触れ、企業として向き合う必要性が高まっていると述べました。
そのうえで、「介護休業の捉え方」の重要性を挙げました。制度上は93日取得可能ですが、「介護をするための期間」と捉えると「短すぎる」と誤った評価をしてしまいます。
しかし伊藤は、「介護休業は介護のためではなく、体制を整える準備期間」であり、分割取得などを通じて両立できる状態をつくることが目的だと説明しました。
そのため、「自身で介護を担う」のではなく、「プレイヤーではなくマネージャーとして関わる」視点が重要であり、ケアマネジャーや地域包括支援センターなど外部支援と連携して体制を構築する必要があると述べました。

介護に向き合う視点として「自立とは依存先を増やすこと」という考え方を紹介しました。複数の支援先を持つことが安定につながり、介護も一人で抱え込まない状態が望ましいといいます。
この前提のもと、同社では2023年から全社プロジェクトを開始し、ビジネスケアラーやネクストケアラーが安心して働ける環境づくりを進めています。
社内アンケートでは、介護中の社員が約5〜6%いる一方、制度や相談窓口を知らない社員が約9割にのぼることが判明。これを受け、「制度整備だけでなく、認知と話しやすさの両立が必要」と整理しました。
同社では、トークライブや講演会、イントラ発信、社内コミュニティなどを組み合わせ、体験共有を軸にした施策を展開しています。
中でもトークライブは2〜3ヶ月に1回実施され、初回は229名が参加し、チャットでも多くの発言が寄せられました。実体験や不安が共有されることで、「社内で話したいニーズ」があることが明らかになったといいます。
講演会では、有識者に加え、社長や当事者、その上司や同僚も登壇し、実際の関係性を含めた状況を共有。社内コミュニティも、不安時に情報交換できる場として無理のない形で運営されています。
さらに、AIを活用した漫画コンテンツなども取り入れ、情報への心理的ハードルを下げる工夫を行っています。伊藤は、「入口のハードルを下げることが重要」と述べました。
最後に、取り組みの要点として、外部資源の活用、介護休業を準備期間と捉えること、介護はプレイヤーではなくマネージャーとして関わる視点の3点を挙げました。また、制度や知識に加え、不安を共有できる環境があってこそ両立が可能になると述べ、風土づくりはその積み重ねによって形成されると指摘し、本セッションを締めくくりました。

パネルディスカッションでは、3社の登壇者によるディスカッションを通じて、「介護を語れる風土づくり」「社内浸透の進め方」「管理職の役割」など、実務に直結する論点が議論されました。
はじめに、介護を職場で語れる環境づくりについて、各社の実践をもとに議論が行われました。
伊藤は、「暗い・辛い・話しにくい」といったイメージを払拭し、カジュアルに話せる場を設計することが重要だと述べました。体験者の具体的な話がきっかけとなり発言が広がり、終了後に「実は自分も」と語り出すケースも見られたといいます。また、経営層が自身の経験を語ることも後押しになると説明しました。
國松氏は、アンケートで得られたリアルな声を社員や管理職に届けることで、自分事化が進むと指摘しました。あわせて、心理的安全性やアンコンシャスバイアスの解消について、経営層の継続的な発信の重要性にも触れました。
山中氏は、話しやすさは施策の積み重ねで生まれると述べ、外部メディアでの発信をきっかけに男性社員からも相談が寄せられた経験を紹介しました。職場では表に出にくい声があることを実感したと語りました

続いて、社内浸透に向けた工夫とともに、各社の失敗や試行錯誤が共有されました。
山中氏は、相談の場を設けても利用されなかった経験に触れ、「相談」という形式が構えを生み、ミスマッチがあった可能性を指摘しました。専門窓口とは役割が異なるため、「自然に話せる場」の方が適していると述べました。この課題はメンタルヘルスやジェンダーなど他のテーマにも共通するといいます。
伊藤は、社内浸透には時間がかかるとし、ダイバーシティの定着に約5年を要した経験を紹介しました。特効薬はなく、施策を組み合わせて繰り返し伝えることが重要であり、継続することで「気づきにつながる」といった参加者の声もあると述べました。また、社外発信が結果的に社内認知につながる側面にも触れました。
國松氏は、「人事や経営の発信と現場の実態のギャップ」がエンゲージメント低下につながると指摘しました。そのため、制度だけでなく、現場のリアルもあわせて伝える必要があると述べました。
次に、管理職が介護に直面した部下に対してどのように関わるべきかが議論されました。
國松氏は、相談内容を介護・仕事・コミュニティに切り分け、適切な窓口につなぐことが重要だと説明しました。工夫として、地域包括支援センターなどの相談先を一覧化し、初動で迷わない仕組みづくりを進めているといいます。
伊藤は、介護対応は専門窓口に委ね、管理職は業務のアサインや調整に集中することが役割だと指摘しました。「どのように働き続けるか」を軸に対話することが、本人の負担軽減につながると述べました。
山中氏は、制度の複雑さが現場の障壁になっている点に触れ、「介護休業は準備のために使う」といったコンセプトをわかりやすく伝えることが重要だと述べました。

次のテーマでは、働きがいを維持しながら介護と向き合うための考え方が共有されました。
國松氏は、この問いに明確な正解はないとしたうえで、「制約があっても能力を発揮できる環境づくり」を地道に続けることが重要だと述べました。
山中氏は、介護と仕事の間で軸足が定まらないことが働きがいの低下につながると指摘し、「自分はどうしたいのか」という軸を持つことの重要性に言及しました。そのうえで、周囲と対話しながらバランスを調整していく必要があると説明しました。
伊藤は、「自分のライフ全体をマネジメントする視点」が重要だとし、できること・できないことを整理し関連者に共有すること、さらに時期に応じて仕事と介護の比重を調整することも視野に入れてもよいのではないかとコメントしました。
モデレーターの天川は、こうした考え方を具体化するためには、事例やロールストーリーの共有が有効であるとし、取り組みの広がりに期待を示しました。

最後に、介護における価値観の違いへの向き合い方が議論されました。
伊藤は、介護は家族間でも考え方の違いが表れやすく、なおかつ意思決定を伴うため対立が生じやすいと指摘しました。そのうえで、「自分と相手の違いを前提に受け止め、理解しようとする姿勢」が重要であり、自身の考えを言語化することも必要だと述べました。
國松氏は、こうした場面では理想的な「ベスト」を選ぶことが難しく、「ベター」を積み重ねていく現実的な判断が求められると指摘しました。
山中氏は、価値観は説得するものではなく、それぞれ異なる前提として受け入れる必要があると述べました。すべてを一致させるのではなく、時間をかけた関わりの中で共感できるポイントを見つけることが現実的だと語りました。
クロージングでは、登壇者それぞれがイベントを振り返り、対話の意義と今後への期待を語りました。
山中氏は、議論を通じて多くの気づきが得られたとし、その場で考え続ける経験自体に価値があると述べ、対話の積み重ねが今後の取り組みにつながるとしました。
國松氏は、異なる企業の実務担当者同士で意見交換できたことに触れ、こうした場の価値を強調しました。また、担当者の関心や熱量が施策推進に影響する点にも言及し、参加者との今後の連携に期待を示しました。
伊藤は、企業の枠を越えて本テーマを議論できた意義に触れ、本日の内容が各社の取り組みのきっかけになることへの期待を示すとともに、今後の情報共有や連携の継続に意欲を示し、ディスカッションを締めくくりました。

その後の交流会では、「仕事と介護の両立」に関する取り組みや課題について活発な意見交換が行われました。登壇者と参加者が直接対話し、各社の実践や工夫を共有しながら理解を深めるとともに、企業同士のつながりも生まれ、今後の取り組みに生かせる示唆や連携の可能性が見出される時間となりました。
本レポートが、仕事と介護の両立を企業文化として捉え直すきっかけとなり、各社の風土づくりや施策検討を進める一助となれば幸いです。
日立ソリューションズでは、協創で未来をつくっていくオープンなコミュニティ「ハロみん」を、2024年4月より運営しています。「ワクワクする未来へ 一歩踏み出す、協創の出発点」を掲げ、「繋がる」「探索する」「深める」「創る」をコンセプトにイベントや参加者同士の交流などの活動を行っています。モビリティ・セキュリティ・まちづくりDX・先進技術など、幅広いテーマを取り上げております。その一環で、今回のようなイベントもオウンドメディア「未来へのアクション」でご紹介していますので、皆さんのご参加もお待ちしています。今後のイベント予定はこちらをご参照ください。
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