
2026.04.20
サントリービバレッジソリューション株式会社(以下、サントリー)はキャッシュレス対応の自販機を開発し、「ジハンピ」として展開しています。この自販機では、キャッシュレスのタッチ決済のほか、多くの人が利用している共通ポイントでもタッチで飲料を購入することができます。日立ソリューションズは、「PointInfinityマルチポイントゲートウェイ」を通じてサントリーの自販機事業を支え、自販機を利用するユーザーに共通ポイントで自販機の飲料を買えるという顧客体験を実現しています。


森 新
サントリービバレッジソリューション株式会社
マーケティング本部
担当課長
サントリーで自販機関連の新規事業を担当し、ジハンピ・社長のおごり自販機・ボスマート・DAKARA給水所・宅弁などを開発した"自販機LOVER"のキーパーソン。

篠田 善佑
株式会社日立ソリューションズ
ビジネスイノベーション事業部
デジタルソリューション第4部
グループマネージャ(課長)
自販機向け通信機器などのハードウェア製品の開発エンジニアを経て、現在は自社のクラウドサービス事業を中心としたソフトウェア製品の企画・開発を担当。

佐々木 優茉
株式会社日立ソリューションズ
流通・サービス営業本部
第3営業部
主任
入社以来、流通業を中心としたアカウント営業に従事し、ポイントシステム、販売管理システム、インフラ、AIなど多岐にわたる領域での提案・導入を経験。
森:私は、「実はとってもすごいのに、あまり正しく評価されていないもの」にスポットライトを当てることに並々ならぬ情熱があるという特殊なタイプなんです。自販機は、自販機そのものを作る人、飲み物を作る人、自販機まで飲み物を運ぶ人、飲み物の品質保証をする人、自販機に合うように容器形状を設計する人など、多くの人が関わっており、日本が誇る産業の1つだと思っています。私は機械をいじることも好きだったので、新入社員の頃から自販機にかかわる新規事業をやりたいと考えていました。
2018年、オフィスのエレベーターが昼にとても混雑しているという状況を背景に、自販機のボタンを押すと職場近隣のレストランが作る弁当を注文でき、12時までに職場にできたての弁当が届けられる「宅弁」というサービスをリリースしました。これによって、職場の課題を自販機で解決できるという感触を得られました。次に、カップ麺や軽食、お菓子などを置いた棚を自販機の隣に置き、セルフレジのように自販機を使って支払いができる「ボスマート」というサービスを開発しました。たとえば、工場勤務でコンビニまで距離がある場合など、休憩時間に外に出なくても軽食が買え、時間を有効利用できるサービスです。「社長のおごり自販機」というサービスも開発しました。社員証を2人同時に自販機にかざすと、会社負担で飲料を2つ買えるようになっていて、職場内のコミュニケーションを生むきっかけ作りに寄与しています。コロナ禍で黙食が推奨された影響で、職場内での会話が減ってしまっているといった課題解決の一助にもなっていたと思います。自販機を活用した熱中症対策サービスの「DAKARA給水所」など、さまざまな社会課題を自販機で解決する新規事業をここ数年は数カ月に一度のペースで開発してきました。

森:私はこれまで職場やオフィスにある自販機に対して、法人向けのサービスを作ってきました。ですが自販機は、職場以外に利用される設置場所も数多くあります。こういった自販機全体に付加価値を付けられるサービスができないかとずっと考えてきた中、社会的にキャッシュレス化が進み、多様な支払い方法に対応させる必要があると考えました。しかし、自販機をキャッシュレス対応にするには、膨大なコストと取付時間がかかります。この課題をどう乗り越えればいいのかを模索していました。
佐々木:私は財布を持たずにスマホだけで外出するタイプなので、現金支払いのみの自販機は使わず、キャッシュレス対応している自販機やコンビニを利用していました。
森:女性の服はポケット自体がない場合もあるため、短距離であれば多くの方が財布を持たずにスマホだけ持ち歩いているという印象があります。外出時にお財布を持ち歩かない世界は今まででは考えられなかったですが、お客さまによっては、もはやスタンダード。このままでは選択肢にすら入らないという焦りがありました。何とか、キャッシュレスという選択肢を急いでお届けする必要があると考えていました。
森:自販機のキャッシュレス端末がなぜ高額になるのかというと、多様な決済手段やマネーブランドを受け付けるための液晶やタッチパネル、QRコードやNFCを読み取る機械、これらを動かすための電源制御機構、サーバーと通信させるユニット、自販機と連動させるユニットなどのさまざまな機械を、屋外の過酷な環境にも耐えうる防水・防滴・防塵で組み合わせなければならないからです。
篠田:私はもともとハードウェアエンジニアで、自販機をIoT化する装置の開発に携わっていました。その経験から、自販機まわりの機器は規格が細かく決まっていて、独特でコストもかかる世界だということを知りました。だからこそ、すべての自販機をキャッシュレス対応にするのは、相当な苦労があるだろうと感じています。
森:そこで、マネーブランドの選択や通信網などはお客さまのスマホの力をお借りして、自販機と連動するユニットだけあればキャッシュレス化が実現できるのではないかという仮説を立て、どうすれば実現できるのかを考えていきました。その中で、真っ暗な場所に置かれることもある自販機では夜間にQRコードが読み取れない・気が付きにくいなどの課題があることが分かり、QR読み取りではなく、スマートにタッチ決済できるようにしようと考えました。「ICカードを自販機上の決済端末にタッチする」のが通常のタッチ決済ですが、ジハンピはその逆で、「スマホを自販機上に設置したNFCタグにタッチする」ことで、自販機上はNFCタグだけの設置のみとなるため、コストを大幅に抑えてキャッシュレスを利用できるようにしたのです。スムーズなタッチ決済ができるようにジハンピのアプリを作り、皆さまに使っていただけるように3本無料のキャンペーンなども企画しました。これにより今まではキャッシュレス対応できなかった自販機にも対応ができるようになり、キャッシュレス対応自販機をお客さまに届けられるようになりました。
森:できるだけ多くの決済手段の選択肢をお客さまに提供したいと考え、オンライン決済で対応できるメジャーなブランドには対応したいという思いはありました。キャッシュレス決済比率は2024年で42.8%に達し、141.0兆円が使われていると経産省の発表(※1)があり、共通ポイントの流通量は年間約3兆円もあります。(※2)現金を使わない決済手段という意味とその流通規模で、もはやポイントもキャッシュレスサービスの一環だと考えました。さらに、ポイントって数百ポイントといった絶妙な金額が貯まっているシーンが多いですよね。自販機の飲料は単価的にポイントを使いやすく、相性がよいと私は思います。また、ユーザーの利便性を上げるには、共通ポイントが「貯まる」についても付加価値になると考えました。
篠田:自販機のような無人決済のシーンで共通ポイントを利用できるようにするのは、かなりハードルが高いため、ほかではほとんどないと思います。そのため、森さまの意気込みは素晴らしいと感じましたし、1つのイノベーションだと思います。
森:単一ポイントなら対応しているところはあると思いますが、メジャーな複数のポイントに対応しているシステムは確かにあまりないかもしれませんね。
篠田:複数の共通ポイントを扱うケースでも、対応数は3種類程度が一般的です。サントリーさまの自販機のように5種類の共通ポイントを1つの小売業で同時に対応するのは日立ソリューションズとしても初めてでした。5種類に対応するにあたって、当時のマルチポイントゲートウェイでは未対応のポイントや機能もありましたが、森さまの熱い思いもあり、ジハンピの開発スケジュールに合わせて、ゲートウェイ側も機能拡張することで実現しました。

森:共通ポイントサービスに接続するためには、専用の閉域網が必要になります。1つの共通ポイントに接続するだけなら投資することも検討できますが、5つの閉域網へそれぞれ専用回線を引くのはコスト的に現実的ではありません。複数の共通ポイントに接続できるサービスがないか探したところ、PointInfinityマルチポイントゲートウェイが見つかりました。PointInfinityマルチポイントゲートウェイでまだ接続されていないポイントに挑戦したいという考えについても快く相談に乗ってくれて、私たちの挑戦を後押ししてくれる姿勢に、「一緒に仕事がしたい」と思いました。
佐々木:森さまと初めてお話ししたときに、自販機やそのユーザーが抱えている課題、複数の共通ポイントに対応したいという要望、今後の展望など、熱い思いを聞いていく中で、私たちもワクワクしてきて、この事業を一緒に立ち上げたいと思いました。そして、かなりのスピード感で対応しなければならない案件だと感じました。

篠田:マルチポイント(複数の共有ポイント)を導入するには、PointInfinity マルチポイントゲートウェイのような中継サービスの導入が最適で、ネットワークインフラやファシリティにかかるコストを抑えられます。開発期間が非常に短期だった中、システムの仕様や企業文化が異なる5つの共通ポイントに対応することになり、「本当に間に合うのか」と感じる場面もありました。ビジネス的な領域はサントリーさま主導にはなりますが、システム的な領域は日立ソリューションズがサポートを行い両社で連携を取ることで、プロジェクトを成功できたのだと思います。
森:共通ポイントでの決済をストレスなく高速に行うために、システム的な面で共通ポイント事業者と交渉していくときも日立ソリューションズが強くサポートしてくれました。自販機の前でユーザーにお待たせする時間を0.1秒でも減らせるように、高速な決済にこだわったことはよかったと思っています。日立ソリューションズは開発や問い合わせ対応が迅速で、気持ちよく仕事を進められました。
森:当初の狙い通り、共通ポイントを使ったり貯めたりできるサービスをスピーディに実現できたのは大きな成果です。ジハンピは既存の自販機を入れ替えなくても、5分程度の設置作業でキャッシュレス化対応できるのも大きな収穫でした。すぐに設置できる仕組みになったことで、飲料を補充するオペレーターさんが補充のついでにジハンピ端末を設置することができるのです。これにより驚異的なスピードで設置が進み、現時点(2026年3月末時点)で、約19万台の自販機がキャッシュレス対応となりました。ジハンピは決済だけでなく、アプリへの登録についてもスピード感にこだわって作りました。そのため、氏名・メールアドレスなどの会員情報登録の手間をすべて省いて、SMS認証だけでユーザーがすぐに使えるようにしています。少しでも早く・手間なくキャッシュレスで自販機を使えるようにすることに重きを置いたのです。その結果、現時点(2026年3月末時点)でアプリは1,600万以上ダウンロードされ、自販機の売上が3%以上伸びています。多くのお客さまに支払いの選択肢の多様化を届けられ、うれしい声も多数頂いているので、挑戦してよかったと思っています。時短というニーズで自販機を選ばれるお客さまが多い中で、シンプルで早いという声を多く頂いています。使える共通ポイントが多いことや、それらすべての決済手段がタッチだけで決済が行えることは、他のキャッシュレス対応自販機にはない強みだと思います。
篠田:日立ソリューションズはポイントゲートウェイの中での業界市場ナンバーワンを意識しているので、コンビニなどの導入実績に加えて、今回ジハンピで顧客接点を一気に拡大できたことは大きな成果です。今回のプロジェクトによって対応する共通ポイントの種類を増やせたのもよかったと思います。期間限定のポイントがサービスで配られることはよくあるのですが、ユーザーにとっても自販機でポイントが使えることで、少額の期間限定ポイントを失効させることなく活用できるのはメリットではないでしょうか。

森:自販機の収益力を超えた高額なキャッシュレス端末だけを自販機に取り付けて網羅させることは事業継続性の観点から極めて難しい。だからといってキャッシュレスに対応しなければ、お客さまに選んで頂けなくなり、自販機という存在の持続性が損なわれてしまいます。私は自販機が大好きなので、自販機事業に持続的な形で今後も携わっていきたい。ジハンピを成功させることで、サントリーにとっては自販機事業のサステナビリティを保つことの一助になると私は考えており、お客さまにとっては自販機の利便性をこれからも身近に感じられる環境を持続できると思っています。
篠田:持続可能性という点でいうと、共通ポイントとの連携では、回線切替や仕様拡張されることがあるのですが、それらを気にせずにいつもと同じように継続して使うことができるように日立ソリューションズでは対処しています。
森:そういったことを日立ソリューションズにお任せできるのは、非常にありがたいですね。回線関連のハードウェアを自社で持ってメンテナンスしなくてよいのも助かります。日立ソリューションズはコンビニなどの膨大なトランザクションを難なく処理している事例があるので安心感があります。19万台のジハンピのトランザクションをさばいているということも、今後のPointInfinity導入検討者の安心材料となるのではないでしょうか。
森:ジハンピをより拡大させて、多くのお客さまに使っていただきたいと考えています。個人的な思いとしては、飲料以外で自販機を活用した課題解決をしたいと考えています。私の大好きな自販機にはもっともっと可能性がある――。自販機が身近にあることの良さが再評価されるような仕組みを日本に広げていきたいです。
佐々木:日立ソリューションズとしてもジハンピの拡大に貢献したいと思います。ジハンピを実現した両社の絆で、快適なキャッシュレス生活を支えていきたいです。
