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2026.01.06

座談会【有限責任監査法人トーマツ×日立ソリューションズ】
企業のサステナビリティを支援するために強力なタッグを組む
サステナビリティ専門家とITプロ集団

63回表示しました

近年、世界的に企業によるサステナビリティ情報開示の規制化が進んでいます。日本でもSSBJ(サステナビリティ基準委員会)基準や欧州CSRD(企業サステナビリティ報告指令)に基づく開示への対応が必要となる局面が生じつつあり、サステナブル経営に対する関心は引き続き高い状況です。日立ソリューションズは有限責任監査法人トーマツとともに企業のサステナブル経営を支援するソリューションを生み出し、両社の特徴を生かして、サステナビリティ情報の効率的な収集から管理そして開示までを実現します。

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    土畠 真嗣

    有限責任監査法人トーマツ
    監査アドバイザリー事業部長
    パートナー

    グローバル製造業や運輸業の監査業務および経理DX業務、業務改善、決算早期化、経理PMI、経理オペレーションサポート、J-SOX、サステナビリティ開示等、数多くのアドバイザリー業務に従事。デロイトアジアパシフィック地域のAudit & Assuranceのアライアンスビジネスリーダーを兼務。公認会計士。

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    竹中 真一

    有限責任監査法人トーマツ
    サステナビリティ開示アドバイザリー部長
    パートナー

    サステナビリティ情報開示のアドバイザリー案件に数多く関与するとともに、ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)やSSBJなどのサステナビリティ基準へのコメントレター作成、日本における非財務情報保証のあり方に関する議論や意見発信に深く関与し、日本公認会計士協会の企業情報開示委員会委員などを歴任。公認会計士、サステナビリティ情報審査人。

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    斉藤 隆

    株式会社日立ソリューションズ
    スマートワークソリューション本部
    インフォメーションシェアリングソリューション部
    ESGマイスター

    ビジネスコラボレーション事業に従事する中でESG経営貢献に係る新たなソリューションの企画・開発を担当。現在、ESG情報開示をターゲットにWorkivaソリューションなどのマーケティングを推進。

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    佐々木 宣昭

    株式会社日立ソリューションズ
    スマートワークソリューション本部
    インフォメーションシェアリングソリューション部
    グループマネージャ

    ビジネスコラボレーション事業に従事する中で、現在、ESG情報開示をターゲットとしたWorkivaソリューションの提案や導入プロジェクトを推進。

ESGの重要性と日本企業の課題

ESGの基本概念と重要性について教えてください。

竹中:ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つを示しており、企業の持続可能性を考えるうえでポイントとなる観点です。投資家を含む企業外部のステークホルダーも注目しており、サステナビリティ情報として開示対象化が進む傾向があります。米国や欧州の状況からサステナビリティやESGへの取り組みが減速しているのではないかといわれることもありますが、政策や規制に一定の調整があるとしても、企業によるサステナビリティへの取り組みは今後も継続するものと考えています。気候変動や人権といった地球規模の課題の解決に向けて、企業によるサプライ・チェーン全体を視野に入れた取り組みの必要性や期待が変わっていない以上、今後も企業には長期にわたりサステナビリティへの取り組みが求められるはずです。サステナビリティは、今後も企業経営や投資判断の重要な視点になり続けると考えています。

日本企業がサステナブル経営を行う意義と現状や課題などについてお聞かせください。

竹中:サステナビリティが投資判断や企業価値に与える影響を踏まえ、日本企業はさまざまな取り組みを進めてきました。一定のサステナビリティ関連活動・方針やGHG排出量の変化などの成果を集約・開示する段階から、収集したサステナビリティ関連データをいかに活用し、具体的な取り組みを促進して企業価値向上につなげるかという戦略的な検討フェーズに入っている企業もあります。

日本企業には広範なステークホルダーを重視する傾向があるといわれたり、環境配慮型の製品開発や高度なリサイクル技術などの活動実績もあります。一方で、これらの取り組みをグローバル基準のフレームワークで開示して、投資家や顧客の理解・評価を得ることに課題を感じている企業は少なくありません。また、多くの開示媒体や開示基準が存在する中で、どのような情報をどう開示するかの試行錯誤も続いています。

財務諸表に基づく情報は、会計処理の基準や開示様式が標準化されていることから比較可能性も高く、企業の内外で活用についても経験が蓄積されています。他方で、サステナビリティ情報については、関連する基礎データが複数の部署に散在しているうえに指標の収集・算定方法や内部統制が標準化・確立されていないなど、社内体制の整備が途上であるケースや、国内外のステークホルダーの期待に応える報告内容を適切に決定することに難しさを感じている企業も存在します。

こうした状況を踏まえて、有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)では、デロイトのグローバル・ネットワークを駆使して、先行するEUのCSRDを含む欧州の規制動向や欧州企業の対応などに関する最新の知見を日本企業に提供することも含め、日本企業のサステナブル経営の具体化と高度化を支援しています。

斉藤:SDGsと混同して捉えられることがありますが、ESGは経営トップが考えやすい観点だと思います。ESGは投資の指標として見られるので、経営をより高みに持っていくための方向になります。例えば、グリーンウォッシュという言葉があるように、いかにも環境によさそうなことをやっているように見えるのに、実際に計算するとそんなにCO2排出量削減になっていないということがあります。そういったことを考えると、非財務情報を財務情報と関連づけることが求められるESGという考え方のほうがSDGsよりわかりやすい気がします。

竹中:グリーンウォッシュに対しては、特に欧州の規制当局は厳しい姿勢で臨んでいます。私たちトーマツはグローバルで活動するデロイトの一員であり、世界各地で何が起きているのか、特に欧州や米国での規制や市場の最新動向を常に収集・分析し、日本企業が実効性のあるサステナブル経営を推進するための価値ある知見として提供できることが強みです。

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日立ソリューションズのESGのソリューションへの取り組みとトーマツとの出会い

日立ソリューションズはESGのソリューションにどのように取り組んできたのですか。

斉藤:ESG経営に貢献するソリューションは最近取り組み始めた事業で、ESGに対してわれわれがどのように貢献できるのかを検討し始めたのが2022年です。それまでわれわれが取り組んでいたのはビジネスコラボレーション事業で、文書管理やコミュニケーション活性化、AIを使った価値創出などのソリューションを提供していました。それらをベースにお客さまのサステナブル経営にどのような貢献ができるのかを考えたときに、ESG情報開示を支援できるのではないかと思い、2023年に「Workiva」というソリューションの販売代理店契約を結んで提供を開始しました。しかし、われわれだけでは規制の内容を追えずソリューション提供が難しいと考え、トーマツさまと2023年12月にアライアンス契約を結んで、協力してソリューション提供するようにしました。

土畠:長年にわたりさまざまなサステナビリティ関連の業務に取り組んできた蓄積も活かし、トーマツでは2020年くらいからサステナビリティ制度の開示やサステナビリティ開示の充実による企業価値向上に関する助言の提供体制の強化を進めてきました。2022年くらいからは制度化が進んでいたEUのCSRDへの対応を進める日本企業が増加し、その支援を本格化してきました。マテリアリティを踏まえて開示すべき情報内容の確定などの上流の助言から、実際の開示を実現するための情報収集プロセスや内部統制の整備についても支援を拡大しています。元々米国のデロイトがWorkivaさまとのアライアンスに取り組んでいたこともあり、トーマツも2022年9月にWorkivaさまとアライアンス契約を行いました。同じような時期に日立ソリューションズから今回のアライアンスのお話をいただき、トーマツにとってもWorkivaさまのビジネスに取り組むにあたって、日本のITの専門家と協働することで、サステナビリティ以外のソリューションと連携できる可能性も広がるほか、企業との接点の拡大への寄与も含めて、より多くの日本企業へ提供できる価値の向上につながると考えて、日立ソリューションズとアライアンスを組むことにしました。

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斉藤:日立ソリューションズがトーマツさまに話を持ち掛けたのは、日立ソリューションズが規制内容に精通していないことに加え、情報開示プロセスや第三者保証対応などの業務がわからないという課題があったからです。さらに、顧客に提案を行うときに、われわれと関係が深い情報システム部門ではなく、新しい規制に対応する部署との橋渡しや連携の促進も手伝っていただきたいと考えていました。

協業における両社の役割を教えてください。

斉藤:お客さまがCSRDに対応しなければならなくなったとき、お客さまはCSRDの内容を知り、何をやらなければならないかを把握し、開示した情報が正しいことを第三者が保証するようにする必要があります。そのあたりの上流の助言はトーマツさまが担当します。日立ソリューションズはお客さまとシステム要件を整理し、その要件にあったシステム設計を行ってシステム構築し、保守まで行うところを担当しています。

両社の協業によってお客さまはどのようなメリットを享受できるのでしょうか。

土畠:トーマツが持つサステナビリティ情報開示や企業の経営管理への知見と、ITの専門家である日立ソリューションズのシステム実装力が一体となることで、クライアントである日本企業はサステナビリティ情報開示の高度化の実現に向けて必要なすべてのサポートを統合的に得られることをめざしています。

プロジェクトを進める中での両社の印象

協業してプロジェクトを進める中で、お互いにどのような印象を持ちましたか。

佐々木:私は今回対談の他メンバーより少し後に本協業に参加したのですが、参加できることになったときは本当にうれしかったですね。環境問題などの社会課題に対して、自分がシステムで何かしらの貢献ができることをうれしく感じています。今まで色々なコンサルファームの方とお仕事をしてきましたが、ほとんどの場合、お客さまプロジェクトのキックオフからコンサルファームとの関係構築がスタートするので、助走や準備期間が長くなりがちです。今回の協業ではお客さまプロジェクトが始まる前から関係構築できていたので、迅速に動けることが大きな特徴となっていると思います。

私自身、CSRDの知識がなかったので、プロジェクトの中で非常に勉強させていただきました。日立ソリューションズの強みは、システム開発や導入において高品質を達成する手法を確立している点にあります。独立したQA*部門でプロセスQAといったアセスメントを行うことで品質を高めています。ゼロからCSRDに対応するお客さまの例では、トーマツさまが用意したCSRD向けのWorkivaテンプレートをわれわれがお客さまの要望に合わせてカスタマイズし、品質を確保しながらプロジェクト期間を短縮できました。最初のお客さまのプロジェクトでの反省点を整理して双方で協議し、次のお客さまのプロジェクトにつなげられた点もよかったと思っています。

※1 QA:Quality Assurance。品質保証のこと。

土畠:カスタマイズの際には、内部統制をどう整備・運用していくか、将来保証が入ったときにどのようにWorkivaの機能を使っていくかといったことを話し合いながら進めていきました。CSRDの規制内容がアップデートされたときなども助言を行っています。

斉藤:トーマツさまが開発されたWorkivaのテンプレートを見て、非常によくできていると感心しました。将来、規制が変わったときのことも考慮されていて、Workivaの機能をどのように使えば規制変更に柔軟に対応できるのかということがよくわかりました。

竹中:柔軟性は規制に基づくサステナビリティ報告の体制整備において必須の要素と考えています。変更の可能性がある複数の規制に対応しないといけないので、Workivaテンプレートは柔軟に作っておかないと実務におけるスムーズかつスピーディな対応が実現できません。

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佐々木:カスタマイズを実行した立場からいうと、トーマツさまのWorkivaテンプレートは業務目線で作られていると感じました。われわれが作ろうとすると、システム目線でガチガチなものになったと思います。そういったところも非常に勉強になりました。

土畠:ITの専門家たちはプロジェクトマネジメントがしっかりしていて、堅実に取り組む姿勢が印象的でした。こうした両社の違いは双方に刺激をもたらし、お互い勉強になったと思います。

斉藤:毎週の定例会で意見交換し、規制に関する領域で多くのことを教えてもらったり、われわれが作ったものをチェックしてもらったりしたのは、非常に助かりました。このような意見交換は今後も続けていきたいですね。

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ESGの範囲を広げて財務などでも協力していく

今後はこの協業体制をどのように広げていこうと考えていますか。

土畠:CSRDなどのEUの関連規制は緩和が検討されていますが、引き続き対応が必要となる日本企業の支援を協業により推進していきたいと考えています。

また、日本のSSBJ基準に基づく開示に向けた企業の準備も始まっており、上流について助言を行う案件の数も増えているため、日本の開示制度に対してもCSRDと同じように必要な情報を確実に集める仕組み・プロセスを作っていきたいと思っています。こうした日本の制度開示への対応に加えて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)などの別の報告のフレームワーク・基準に基づく報告の最適化についても、CSRDにおいて実施している形と同様な協業の可能性があると思っています。

さらには、サステナビリティに限定されない領域、例えば財務や内部統制のソリューションでも将来的な協業の可能性を検討していきたいと考えています。

竹中:一部の欧州企業はCSRDに対応した開示を行っているほか、海外ではISSB基準を任意適用する企業も出てきています。日本企業には、こうした企業に見劣りしない水準の開示をめざす企業から、まずは最低限の対応で様子を見たい企業まで、温度差があるのが実情です。私たちがクライアントと対話する中で、「CSRDの開示義務が2年後ろ倒しになるのなら、Excelで管理するのではなく最初からシステムを構築したい」、「単なる制度対応に留まらず、サステナビリティに関するデータを成長戦略のドライバーとして活用できるようにしたい」、「サステナビリティのリスクを全社的な統合リスク管理に組み込みたい」といった先進的な声が確実に増えています。サステナビリティへの取り組みを経営マターとして高度化する企業と制度対応に注力する企業が併存することも踏まえて、それぞれのニーズを踏まえて幅広く対応していくことが重要だと感じています。

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土畠:クライアントは経営判断や開示情報の基礎となるデータをさまざまなシステムで管理されている場合が多いです。その場合、Workivaにデータ連携してから、内部報告や開示情報を準備することで業務が効率的になります。今はデータ連携を手作業でやっている会社が多いのですが、効率を考えるとシステム連携で行ったほうがよいのは間違いありません。

斉藤:われわれの部門は、Workivaを用いた情報開示のソリューションからESG事業を始めましたが、この事業をさらに拡大したいと考えています。日立ソリューションズではさまざまなソリューションを扱っているので、今後はESG情報開示や財務・非財務統合管理のためのシステム連携やわれわれの部門が扱うWorkiva以外のソリューションをESG事業で活用できるようにしたいと考えています。今後もトーマツさまとともに考えていきたいと思います。

佐々木:ここ何年かでESGの知識を身に付け、ESG情報開示のモデルケースを作ることができました。システムの観点から言うと、今後、土畠さんのいわれた通り、手入力している人の業務を効率化するために、Workivaをさまざまなシステムと連携できるようにし、システム連携のモデルケースを作っていきたいと考えています。

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ESGの市場を拡大して企業を意識変革していくためには、啓発活動が重要だと思います。セミナーなどは行っているのでしょうか。

斉藤:2025年3月にトーマツさまやWorkivaさまとの共催セミナーを開き、サステナブル経営では何が必要か、Workivaがどのように役立つかなどを将来の話を含めてお話ししました。今後も共催セミナーなどの情報発信を続けていきたいと考えています。

制度や規制に対応して、ESGに取り組んでいきたいと考えている企業へメッセージをお願いします。

竹中:多くの企業が、すでにさまざまな素晴らしい取り組みを実践されています。より大局的な観点からは、制度や規制対応の視点に加え、企業の戦略やリスク管理にサステナビリティの観点を統合し、企業価値向上につなげる成果を生み出し、価値創造の状況を外部に適切に伝達することがめざすべき姿と考えています。そのためには、制度や規制に効率的に対応することに加え、サステナビリティ関連データの戦略的活用という視点が欠かせません。手作業でのデータ収集は属人化しやすく、データの正確性や比較可能性の担保が困難な上、将来の第三者保証への対応も難しくなるため、制度や規制への対応という観点のみからも最適解ではない可能性があります。加えて、こうしたデータを戦略的に活用することも困難です。このように、制度や規制対応に加えてデータの戦略的活用という観点からも、システム化を実現することが有力な選択肢になるとお伝えしたいです。

斉藤:ESGの取り組みを行う部門が複数あって縦割りになっているために、ESGの取り組みがバラバラになっているケースが多く見受けられます。会社全社としてサステナブル経営とはどうあるべきかを考えて、全体最適の視点で取り組んでほしいと考えています。

土畠:同感です。サステナビリティ情報をコーポレート部門のCSRやサステナビリティ担当部署が集約している会社で、事業やサプライ・チェーンの理解の不足に起因して十分な情報が集められなかったり、実施すべき事項が適切に具体化できていない状況も散見されます。また、こうしたコーポレート部門が集約するデータを、まず事業部門やグループ会社が収集することも一般的ですが、多数の事業部門やグループ会社がそれぞれ独自の方法やインフラを使ってデータを集めていることもあります。色々な部署でバラバラにやっていると非常に非効率なうえに、データの整合性が取れなくなったりします。やはりトップがリーダーシップを発揮し、全社的な仕組みを整備することが適当であると感じます。われわれもさまざまな企業のさまざまな部署・階層の方に接点を持っていますので、最適な仕組みの実現について今後も対話を進めていきたいと考えています。

※ Workivaは、Workiva, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。

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