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2023.09.19

座談会【三井住友建設×日立ソリューションズ】
めざす未来へ足場を固める
デジタル検測で挑んだ生産革命

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三井住友建設株式会社(以下、三井住友建設)は、土木と建築双方の強みを活かした街づくりで暮らしを支え、人々をつなぐ希望の橋を架けてきました。インフラの老朽化への対応が急務となっている今、建設業界の人手不足は社会全体の課題になっています。日立ソリューションズのITを活用し、建設現場の生産性向上を目的に開発したのが「デジタル検測技術」を中心にした2つのシステム。建設現場にゆとりと安心を届けるために、協創による未来を見つめた挑戦は続きます。

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    水田 武利

    三井住友建設株式会社

    土木本部 土木DX推進部 土木DXグループ長

    入社と同時に橋梁の設計および現場施工を担当。その後、技術開発担当として、ITやDX等の先進技術の導入の推進に携わってきた。今回の協創では、建設現場での豊かな知見を活かし、中心的な役割を果たしている。

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    吉野 優磨

    三井住友建設株式会社

    土木本部 土木DX推進部 土木DXグループ

    橋梁の建設現場で、新設・補修工事等の業務経験を経て本社に異動。DXの推進・開発を担当。施工現場で働く一人ひとりの現状に耳を傾けながら、具体的な業務改善策の導入をめざして奮闘を続けている。

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    櫻井 さやか

    株式会社日立ソリューションズ

    サステナブルシティビジネス事業部

    スマート社会ソリューション本部 フィールドソリューション部 グループマネージャ

    十数年にわたり官公庁向けの提案業務に従事した後、空間情報分野での新規事業の立ち上げや拡販を担当。製造業、建設業の現場におけるDX推進に関わる。2022年度より建設テック事業を主な活動の場にしている。

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    齋藤 卓磨

    株式会社日立ソリューションズ

    サステナブルシティビジネス事業部
    スマート社会ソリューション本部 フィールドソリューション部 グループマネージャ

    GISのシステムエンジニアとして、インド政府機関との空間情報活用プロジェクト、アジア向け新規事業創出に携わる。現在は、国内の建設業との協創によるIT技術を活用した新サービスの企画・開発に参画中。

生産革命の先駆をきって、現場の最前線を変えていく。

開発の背景にある建設業の現状を教えてください。

水田:少子高齢化による労働人口そのものの減少に加え、建設現場はきつい、危険といったマイナスイメージが今も根強く残っています。こうした背景による、現場作業者の高齢化と若者の担い手不足は、建設業界にとって深刻な課題になっています。
このような状況の中、公共事業などの受注を継続していくためには、一人当たりの生産性を上げていくことが必要です。
今回、日立ソリューションズとの協創により、現場の作業効率化につながる2つのシステムを作ることができました。

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建設業に対する日立ソリューションズのこれまでの取り組みをお聞かせください。

櫻井:私たちはこれまで、位置情報やセンサーデータなどの空間情報を活用し、社会インフラや製造現場の保守など、フィールド業務の生産性向上を支援してきました。
国土交通省から「i-Construction」(※1)が発表されたのは、ちょうど私たちが建設業向けソリューションの開発に着手した頃のことでした。ITを活用し、建設現場の生産性向上を図るというものです。
さらに厚生労働省からは、「働き方改革」の実現に向けた概要も打ち出されています。
こうした政策にも呼応し、建設業の業務改善に貢献することをめざした取り組みをいっそう強化してきました。

※1:国土交通省が掲げる20の生産性革命プロジェクトの一つ。測量から設計、施工、検査、維持管理におけるすべてのプロセスでITを導入することにより生産性向上をめざす取り組み。
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協創のきっかけを教えてください。

水田:昨今の機器やソリューションは飛躍的に向上しており、建設業界においても業務のデジタル化が加速しています。しかし、建設現場のDXを進めていくためには、高度な専門知識や技術力のある会社とのタイアップが必要だと考えていました。
当社は以前、作業員の位置情報から安全管理を支援するためのシステムを、日立ソリューションズより提供を受けた実績があります。その時に使用したセンサー技術が、今回開発した「鉄筋出来形検測システム」にも応用できることがわかり、協創の話が進みました。
日立ソリューションズが、社会課題に貢献したいという思いで建設テックに力を入れている点も、協創強化の決め手になりました。

「鉄筋出来形自動検測システム」に着目した理由をお聞かせください。

水田:鉄筋検測は、数多くのステップを踏まなければならず、建設業界で最も作業の効率化が求められている業務の一つです。
建設現場の作業者2人がペアになり、手作業で検測しなければならず、検測項目も多いため、大きな負担になっていました。こうした業務の効率化を図ることが最大の狙いでした。
システム化により、1人の作業者がタブレットで検測できるようになり、遠方にいる施主にも画像で確認をとることが可能になりました。

今回、「ロックボルト(※2)配置間隔計測システム」もあわせて開発されました。ポイントをお聞かせください。

水田:トンネルの壁一面に打設されたロックボルトの配置間隔を測るのは大変な作業です。手の届かない所など、場所によっては高所作業車や足場を使用して計測する現場もあり、安全面でのリスクがありました。また、計測作業中はトンネル内の工事を一時的に止める必要があるなどの課題を抱えていました。
日立ソリューションズに相談したところ、「鉄筋出来形自動検測システム」の検測技術がこれらの課題に対しても応用できそうだということになり、ロックボルトの配置間隔を計測するシステムの開発へとつながりました。デプスカメラを搭載したタブレットを使い、遠隔での計測が可能になったため、課題だった高所作業が不要になり、安全性の向上にもつながりました。
現在はまだ試験導入の段階ですが、すでにいくつかの現場での使用を予定しています。使い勝手を順次フィードバックし、システムをアップデートしながら、計測業務の効率化を図っていきたいと思っています。 

※2:トンネル等の工事で、掘削後に安定した状態で作業ができるよう、地山や岩塊を押さえつけるためのプレートを締め付けるボルト。国土交通省などから示された配置間隔等の基準に則り、計測・管理が必要。

開発の鍵を握った現場での検証
協創の最大の収穫は建設業の"現状"を学べたこと

今回の開発を通じて、得られたことを教えてください。

櫻井:三井住友建設さまとの協創の最大の収穫は、実際に現場で働く作業員の方々の声をお伺いし、一緒に試行錯誤しながら開発を進められたことです。今の技術が現場でどれくらい使えるのか、機器を使って検証し、実証することができました。
「ロックボルト配置間隔計測システム」も、「鉄筋出来形自動検測システム」の技術がマッチすることを早々に確認できたので、開発をスムーズに進めることができました。

「鉄筋出来形自動検測システム」は、数々のアワードを受賞(※3)しました。感想をお聞かせください。

齋藤:両社の取り組みが、第三者から高く評価されたことがうれしいです。建設業が抱える課題が、それだけ重要視されていることを実感しました。受賞を通して、今回の協創で開発したシステムが建設業界の方々に広く知っていただくことを期待しています。DXにより建設業全体の業務の効率化を図っていくという私たちの目標に一歩近づけたと思います。

※3:ASOCIO(アジア・オセアニアコンピュータ産業機構)が開催する「2022 ASOCIO Tech Excellence Award」で「Outstanding Tech Company Award」の受賞をはじめ、独創性や優れたインターフェース、国際的に通用するチャレンジングな取り組みが国内外で高く評価されている。
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水田:社外から認められたことの意義は大きいと思っています。客観的な評価がないと、自己満足になってしまいがちです。公的な立場、影響力を持つ機関からの受賞は、信頼性の向上と社会への貢献にもつながると感じています。

夢見ていた未来は、刻一刻と近づいている

今後の協創についての意気込みを教えてください。

櫻井:直接、現場のニーズをうかがい、課題を肌で感じ取ることで、私たちにできること、提供できる価値は何かを具体的に検討できるようになりました。こうした関係性を深めながら、建設業の知見を継続して学ばせていただき、次の提案に結びつけていきたいと思っています。 

吉野:今回は、デジタル検測の技術を使い、検査項目が特に多い鉄筋出来形検測とロックボルト配置間隔計測の業務効率化を図ることができました。
施工管理の現場は、計測業務の連続といっても過言ではありません。この他にも、コンクリートをはじめとするさまざまな出来形を計測し、確認しています。
開発したシステムが、他の計測業務で求められる精度や条件をクリアできれば、多様な計測システムへとカスタマイズして適用範囲を広げることができます。
将来的には、これ一つであらゆる長さを検測できるという汎用的なシステムの開発を、日立ソリューションズと協創していきたいと考えています。

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齋藤:建設業のプロの方から、どのような検測項目があるのか、どのように検査しているのかを教えていただきながら、私たちはITのプロとして、共通して使えるベーシックな検測機能や、検測する対象に求められる変更点を明確にしていく予定です。
その上で、必要な精度、不足している機能を探り、現場検証をしながら先に進む。膨大な現場の作業を一つひとつシステム化し、着実に成果を積み上げていくことで、施工現場全体の効率化につなげることを目標にしています。
施工の幅広い領域をカバーできる、計測アプリのようなものに発展させていけたらいいですよね。

すべての人が笑顔で働ける、安心・安全な建設現場をめざして

DXの推進で、建設業の未来はどのように変わっていくと思われますか?

水田:以前から、会社のトップに言われてきたことがあります。
建設業ではさまざまなものをつくっています。例えば、私や吉野が関わってきた橋梁には、「やじろべえ工法」と言われるものがあります。それぞれの橋脚を中心に橋桁を徐々に張り出していって架設するのですが、こうした一連の作業が、自動化できないかというものです。
ボタンを押すだけで、巨大な機械がロボットのように動き出し、橋の建設を自動で行う夢のようなシステムです。
国土交通省も、建設ロボットによる無人化施工の開発を加速させる意向を示しています。遠隔操作も進み、重機に人が乗って操作する時代は、いつか終わりを告げるのかもしれません。
建設ロボットは夢のような話かもしれませんが、このように、現場の職員に負担をかけることなく、人が安全に作業でき、インフラの建設ができると良いなと思っています。

櫻井:ロボットによる完全無人化の実現は、現在の技術や私たちだけでできるものではありませんが、将来的にもっと多くのことが可能になっていくことは間違いありません。
今回のシステムでも、専用機械でなく汎用品を使っています。機器自体の性能も格段に向上しています。できることは確実に増えています。
近い将来とまでは言えなくても、夢のような未来に近づいていけると信じています。日立ソリューションズには、スタートアップを含め、世界中に先進的なITを有する仲間がいますし、幅広い業種におけるDXのノウハウが蓄積されています。私たち自身が日々研鑽しながら、国内外の先進技術をとりいれ、ノウハウを活用し、進化を続けていきたいと思います。
以前、別の案件で、若い人を集めるために、タブレットを使っているという現場に行ったことがあります。ここではタブレットを使うことが目的になっていました。それでは本末転倒です。どこまで業務を効率化できるか、働きやすくできるのか、見せかけのポーズではなく中身をともなった改革でなければ意味がありません。現実的なところと将来的なところを見据えた提案を重ねていくつもりです。

齋藤:統計データなどによると、他の業界に比べ、建設業界のIT導入は進んでいないのが実態のようです。しかし、今後はDXが進んでいくでしょう。
日立ソリューションズとしてはお客さまがどのようなIT導入段階であっても、今回の協創で学んだ業務知識と幅広いソリューション群をもとに、適切なご提案をしていくことで信頼を獲得し、建設業界全体として持続可能な社会の実現をめざしていくことに貢献したいと思います。

吉野:私たち建設業の現場では、一つとして同じものをつくるということがありません。橋にしても、まったく同じ橋は存在しないものです。似たように見えても、現場の状況は何かしら違っているからです。建設現場で実際にITを活用するとき、その現場に合わせたカスタマイズも必要になってくるでしょう。施行管理者や現場の作業者が培ってきたノウハウを活かしてカスタマイズを行うことにより、建設現場のDXは進むと思います。
このように、適正な計測が容易に行える各々の建設現場にマッチした環境を整えることがベストだと考えています。また、DXによる業務効率化で、忙しい現場の負担を軽減することが、品質トラブルや事故を防ぎ、工事全体のレベルアップにもなります。
人々が安全に、安心して働ける建設業界を日立ソリューションズとの協創で作っていきたいと考えています。

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デプスカメラ(対象物までの距離情報を取得できる画像用カメラ)搭載のタブレットを使って計測するようす。鉄筋本数とその間隔を瞬時に計測。

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壁面を撮影するだけでロックボルトの配置間隔の計測を可能に。高所作業や煩雑な業務から解放し、安全性と省力化を飛躍的に向上させた。

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