
2026.09.24
世界有数の農業機械メーカーとして、農家に寄り添い続けながら、現場のニーズに即した製品やソリューションを手がけてきた株式会社クボタ(以下、クボタ)さま。日本の農業が大きな構造転換のときを迎えるなか、同社は営農支援システム「KSAS」(ケーサス)(※1)を通じて、作業管理の効率化や高品質な農作物の安定生産を支えています。日立ソリューションズとの協創で見据えるのは、データやAIを活用しながら農業経営の負荷を軽減し、「再現性」の高い農業を推進していくこと。農業の未来をともに描く挑戦がはじまっています。


小田 達也
株式会社クボタ
農業機械事業部 農業ソリューション本部 農業ソリューション推進ユニット
農業ソリューションデジタルプラットフォーム企画推進部
国内企画推進室 営業企画課 担当課長
前職ではIT系企業にて、開発・運用保守・営業を経験。2021年にクボタへ入社後、KSASに関わる事業企画・開発推進業務に従事。現在は、他企業・自治体等との連携、生成AIを活用した機能企画などを通じて、KSASの価値向上に取り組んでいる。

山本 康政
株式会社クボタ
農業機械事業部 農業ソリューション本部 農業ソリューション推進ユニット
農業ソリューションデジタルプラットフォーム企画推進部
開発推進課
前職ではメーカーにて、生産管理・製造実行システムの企画開発や現場改善の推進を経験。2019年にクボタへ入社後、アフターサービス領域やMY農機のシステム企画開発業務に従事。2022年よりKSAS営農領域の企画開発を担当。現在は衛星リモートセンシングの事業推進やKSASを次世代農業プラットフォームに進化させるための再構築に取り組んでいる。

網代 昌洋
株式会社日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部 ライフイノベーション本部
ビリングサービス部 担当部長
通信業界向け基幹システム開発で培った業務知識を活かし、BSSsymphonyの製品開発および導入プロジェクトを担当。課金・請求領域を中心に、様々な業界のお客さまに対し、製品企画から提案、導入、運用定着まで幅広く支援している。

山本 瑠星
株式会社日立ソリューションズ
営業統括本部 関西営業本部 第2営業部
入社2年間は、東京のインサイドセールス部隊にて、顧客からのお問い合わせ対応を主とした業務に従事。弊社が取り扱う商材知識を身に付け、その後、関西の営業部隊にて、大手製造・化学業様を担当顧客として、営業活動に従事。
山本(クボタ):日本の農業はいま、大きな構造転換のときを迎えています。たとえば、農業経営体数が減少するなか、「担い手」と呼ばれる農業法人や大規模農家への農地集約化が進んでいます。彼らの負担をいかに軽減していくかが、業界全体の大きな課題と言えるでしょう。
一方で、収益性の面でも課題は少なくありません。資材価格が高騰し、販売価格が伸び悩むなかで、さらなる省力化とコストカットが求められています。
生産性のばらつきも、無視できない課題です。これまで農家の多くは、経験と勘で圃場を管理してきました。しかし、同じ圃場内でも土壌の状態や生育状況にはばらつきがあるため、それだけでは生産性を十分に把握、制御することは困難です。データを活用した再現性のある農業への移行が急がれています。
小田:こうした課題を解決するために、私たちはハードとソフトの両面から農業を支えてきました。なかでもソフト面での支援を代表するのが、さまざまな農作業データをクラウドに蓄積し、それを活用することで作業管理の効率化や高品質な農作物の安定生産をサポートするクボタ営農支援システム「KSAS(ケーサス)」です。
KSASの機能は多岐にわたりますが、わかりやすいのが圃場管理機能です。数百枚という圃場を抱える大規模な生産者にとって、そのすべてを紙だけで管理することは大きな負担でした。KSASならば、圃場の住所や面積、所有者などの情報をインターネットで一元管理でき、農作業機械とのデータ連携ができるため「農業の可視化」が行えます。おかげさまで、多くの方から「これがなかったら、もう農業は難しい」と言っていただけるようなサービスに成長してきました。日立ソリューションズには、その契約課金管理システムを支えていただいています。

山本(日立ソリューションズ):クボタさまが、KSASの契約課金管理プラットフォームの見直しを検討されるなかで、当社にお問い合わせをいただいたことがきっかけでした。
過去に用いられていたシステムの大きな課題は、KSASとの連携が十分ではないことでした。利用者さまから受け付ける申し込みデータを、手作業で入力し直す必要があり、それが日々の業務のなかで大きな負担になっていたと伺っています。
さらにクボタさまは、サブスクリプション型サービスの立ち上げなども見据えて、契約課金管理システムの全社標準化も希望されていました。ただ、ゼロからシステムを構築するとなると、それだけで膨大な時間がかかってしまいます。そこでご提供させていただいたのが、当社の顧客管理・課金・請求ソリューション「BSSsymphony」です。
網代:開発にあたっては、スピード感もさることながら、クボタさまからのセキュリティ要件を満たす必要がありました。そのご期待に応えるために、ISOをはじめとする国際規格を取得し、当社のセキュリティ部門とも連携しながら、要件をひとつずつクリアしていきました。
小田:当社は農家のみなさまに寄り添い、現場のニーズに応えることを大切にしてきました。例をあげると、農業作業者の負担軽減に向けて、KSASを通じ、衛星リモートセンシング技術を活用したサービスを提供しています。これにより、圃場に足を運ばなくても作物の生育状況を把握することが可能となっています。このような「農業を支える人たちを支える」という姿勢はこれからも変わりませんが、今後は行政やJA、流通事業者など、生産者の周辺にいる関係者へもサービスを提供し地域・産地全体でスマート農業の普及による生産性の向上・栽培技術の高度化を実現しなければならないと考えています。
一方で、足元の課題になっているのが、データ登録の省力化です。農業機械と連携することで、ある程度自動でデータを集めることもできますが、KSASの利用にあたっては、ユーザー自身の手によるデータ登録も必要になります。
さらに難しいのが、農業の現場においては、「紙」の資料の重要性が高いということです。たとえば、その年にどこに何を作付けするのかといった情報を行政に届け出る「営農計画書」は、いまだに紙の書類で提出しなければならない地域が多くあります。結果的に、紙の書類で記載したのと同じ情報をKSASにも入力することになり、二度手間になってしまう。このあたりの負担を、なんとかIT技術で解決できないかと感じています。
山本(日):OCR技術を活用すれば、お手持ちのスマホなどで紙の書類を読みとって、それをKSASに反映させることは十分に可能だと思います。ただ、それでもITに不慣れな方には、まだハードルが高いかもしれません。「これまでのやり方」を変えること自体に抵抗感がある方もいるでしょう。ユーザーの心理的な障壁をいかに下げるのか、といった観点からも私たちの知見を生かせる部分があるのではないかと感じました。
網代:ユーザーインターフェースの改善も重要ですが、それだけでは限界があります。農作業者の負担を軽減するためには、農業機械や圃場に設置されたセンサーが取得したデータを、人の手を介さずに自動でシステムへ取り込む仕組みの構築が不可欠です。さらに、AIを活用すれば、紙の書類作成の段階から支援できる可能性もあります。例えば、いくつかの項目を選択するだけで「営農計画書」を自動生成し、その内容をそのままKSASに反映できれば、データ登録の負荷を大幅に軽減できると考えられます。

山本(ク):さまざまな期待がありますが、KSASを軸とした営農支援システムのさらなる高度化のために、AIは欠かせない技術となるはずです。たとえば、過去の生育情報やリアルタイムの気象情報、刈取時の収量や品質データから、圃場内のどの作物の生育状態が良いか悪いか、どこにどれくらいの施肥が必要なのかなどをAIが提案してくれる、といった機能を実現できないかと構想しています。
網代:まさに日進月歩で進化を続けている領域ですね。AIはかつてない速度で進化し続けていますが、その価値を十分に引き出すためには、学習データ自体の精度が非常に重要となります。いかにリアルタイムかつ正確に、それぞれ異なるデータを整合性がとれるかたちでつなぎあわせていくのか。もちろん、農業ならではの難しさもあると思いますが、私たちのデータを統合する、解析するなどのノウハウが生かせる部分だと感じています。
小田:社会全体の人口が減少していくなかで、持続可能なかたちで生産者を支えていくことが、私たちの変わらぬ使命です。できるだけ負担が少なく、勘や経験に頼らずとも、しっかりと儲けることができる。そんな未来を実現するためにも、AIの活用をはじめ、日本の農業全体のデジタル化を進めていければと感じています。
山本(ク):一方で近年は、異常気象の影響により、従来の予測技術では対応しきれず、これまで有効だった手法が通用しにくくなるケースが増えています。農業という産業の「再現性」が脅かされているといってもいいでしょう。だからこそ、データやAIを活用した予測の高度化が求められてくるはずです。
そのためには技術力はもちろんですが、むしろ鍵を握っているのは「納得感」だと考えています。単に予測が正確なだけではなく、「なぜそうなるのか」を説明できなければ、生産者は安心してそのシステムを導入できません。生産者だけではなく、自治体やJA、地域のみなさまと一緒になって納得感のあるソリューションをつくっていきたいと考えています。

網代:「納得感」はシステムにとっても非常に重要です。継続的に使ってもらえる仕組みをつくれれば、精度の高いデータも自然と蓄積されていきます。農業は外的要因の多い領域だからこそ、実際にユーザーに使い続けてもらいながら予測モデルの精度を高めていく、というアプローチは理にかなっていると感じました。私たちも、ぜひそうした仕組みづくりからご一緒できれば幸いです。
山本(ク):個人的な想いでもあるのですが、やはり地に足をつけて、しっかりと農業を理解してくれる方と、協創できたら嬉しいですね。
小田:私も同じ想いです。たとえば、「なぜペーパーレス化できないのか」という点だけをとっても、先ほどもお伝えしたような農業ならではの事情や理由があります。そういう現場の肌感覚を理解してくれる方となら、きっと一緒にいいものがつくれるのではないでしょうか。
山本(日):恥ずかしながら私自身も、「なぜ紙をなくせないのだろう?」と感じていた部分があります。けれど、こうやってお話を伺うことで、その理由がよくわかりました。クボタさまはもちろん、その先にいらっしゃる生産者のみなさまの業務の流れもしっかりと理解した上で、より良いシステムを提案していきたいと、あらためて感じました。

網代:お客さまの現場に入り込むことは、日立ソリューションズが最も大切にしてきたことでもあります。まずは私たち自身が、きちんと真面目にお客さまと向き合わなければ、いいものはつくれない。それだけは、どんなにAIが進化しても変わらないと思います。また、ぜひ農業の現場の話を聞かせてください。
