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2026.09.25

座談会【住友商事×日立ソリューションズ】
誰もが安心して働ける現場へ。データとAIで進化する労働安全のSX

21回表示しました

日本を代表する総合商社として、世界各地でさまざまなビジネスを展開する住友商事株式会社(以下、住友商事)さま。「人権の尊重」をマテリアリティに掲げる同社では、「従業員の安全」をグループ全体の経営課題と位置づけています。その取り組みの中核を担うのが、日立ソリューションズとの協創で構築した労働災害管理システム「GENSAI」です。「活文Managed Information Exchange」(以下、「活文MIE」)を基盤システムとして活用し、グローバルで発生する労働災害情報を全社統一フォーマットで蓄積・共有する仕組みを構築しています。さらに、AI活用にも取り組み、蓄積した労働災害情報と同社が有するノウハウを組み合わせることで、グループ全体の労働安全性向上を実現しています。こうしたデータとAIの活用を通じて、従業員の安全確保と持続可能な社会の実現をめざすSXの取り組みが、いま大きく前進しようとしています。

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    横田 雅彦

    住友商事株式会社
    災害・安全対策推進部
    労働安全チーム長

    自動車メーカーや住宅メーカー向け鋼材の国内営業に従事。その後、金属部門のIT部門在籍時にECサイト運営会社の設立に携わり、出向先でシステム開発・運営を経験する。中国のグループ会社で副社長を4年半務めた後、2018年から2021年まで鉄鋼グループの国内外の33社の製造拠点の安全管理統括職を経て、2022年より現職。現在は住友商事グループ全体の労働安全の推進・統括を担っている。

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    水上 友宏

    株式会社日立ソリューションズ
    スマートライフソリューション事業部
    スマートワークソリューション本部
    インフォメーションシェアリングソリューション部 
    グループマネージャ

    ビジネスコラボレーション事業に従事し、企業の情報共有や業務改革を支援。現在は、労働安全衛生関連ソリューションをはじめとする自社・他社製品を活用したソリューションビジネスの企画・推進・取り纏めを担当。

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    五輪 美保

    株式会社日立ソリューションズ
    スマートライフソリューション事業部
    スマートワークソリューション本部
    インフォメーションシェアリングソリューション部
    技師

    ビジネスコラボレーション事業に従事し、企業の情報共有・コミュニケーション基盤の提案および導入支援を担当。現在は、労働安全衛生関連ソリューションの拡販活動に従事。

「労働安全にDXを活用する」というテーマに総合商社として取り組んだ理由

総合商社である住友商事さまが、「従業員の安全」という経営課題に対し、労働安全の向上に注力するようになった背景を教えてください。

横田:「なぜ総合商社が労働安全に注力するのか?」といった疑問を抱かれることは少なくありません。かつての総合商社はトレードビジネスが主体でしたが、ビジネスを取り巻く環境の変化に対応していった結果、現在では事業投資がビジネスの中核を担っています。当社の営業グループのなかには、鉄鋼、自動車、輸送機・建機、食品などの製造事業、都市交通、エネルギー、資源、通信&デジタル、不動産などのインフラ関連事業と、リテイル事業やその他の専門サービスを行う事業など、国内外に多種多様な「現場」があります。従って、当社として安定した持続可能なビジネスを行うためにも、さまざまな「現場」に応じた労働安全の取り組みが必要になったとことが背景です。

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事業領域が多岐にわたる、住友商事さまならではの課題ですね。

横田:そうした状況を踏まえて、「さまざまな現場に求められる労働安全をどう強化し維持していくのか」の課題に対応するため、2022年、コーポレートガバナンス機能を担いながら各営業グループを支援する組織として、災害・安全対策推進部内に労働安全チームが設立されました。私がリーダーを務めるこのチームは、全社の労働安全活動の推進を担っています。私自身は長らく鉄鋼グループで金属加工事業に従事し、実際にグループ会社にも派遣された経験がありましたが、当社グループの全体の労働安全を強化するためにまずやるべき課題と認識したのが、「世界各国のグループから報告を受けた労働災害の中にある重要なデータを如何に活用して次の労働災害の予防に繋げるか」でした。しかしながら、既に構築された労働災害の報告システムには、①情報の粒度が揃っていない、②情報をストレージするためのツールに使い難い、③専門的な知識がないと情報の整理ができない、などとさまざまな課題がありました。
そこで考えたのが、「労働災害情報の粒度を全社統一化し、専門的な知識を持たない人でも労働災害のデータを記録、閲覧できる全社の共用プラットフォームとしてシステムを構築すれば、記録した情報をベストプラクティスとして活用して次の事故を予防することに繋げることができるはず。」という答えでした。しかし、実際に探してみると労働安全管理システムという既存のパッケージソフトやそれに近いサブスクリプションサービスが意外にも存在しないことが分かり、過去、プログラムの開発およびインターネットビジネスを行うグループ会社に出向した経験を踏まえ「世の中に無いなら、自分でゼロから労働安全のDXを作ろう」と決断しました。開発パートナーとなるSI会社はどこがいいかとインターネットで調べたりする中で、たまたま日立ソリューションズのWebに掲載されている事例を見つけました。そこに掲載されていたシステムが活用できる可能性があり、「いま世の中に無いシステムを共にゼロから開発してくれるのでは?」と考え、お声がけしました。

ビジョンを共有することから始まった「協創」

具体的にはどのように協創がはじまったのでしょうか?

水上:本来なら私たちがお話を伺いに赴くべきところなのですが、横田さま自らが当社のオフィスにいらしてくださいました。実は最初は、労働安全衛生マネジメントを支援するクラウドサービスを提案するつもりで臨んだのですが、その場ですぐに「まずは、私の話を聞いてください!」と制されまして、なぜ自分たちが労働安全に取り組みのか、そのためにどんなシステムを構築したいのか、「キーワードは小さく生んで、後から大きく育てる開発コンセプト」といった横田さまのビジョンをプレゼンしていただきました。その内容から「労働災害をなくしたい。」という強い想いが伝わり、そこにしっかり応えたいと思いました。

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横田:冒頭から日立ソリューションズのプレゼンテーションを伺わずに話を進めることとなり、恐縮ではありましたが、過去にシステム開発に携わった経験から、まずはビジョンを共有しないことには、いいものはつくれないという確信があったのです。だからこそ、何に困っていて、何を実現したいのかを、最初に洗いざらいお話しさせていただきました。

五輪:そのお話が、とにかく具体的でした。おかげで、私たちに求められていることが、イメージできました。また、「事故状況などを共有し、ノウハウとして蓄積していく仕組み」をつくるためには、当社が企業間の情報共有基盤として開発した「活文MIE」が生かせるように思いました。横田さまが帰られたあと直ぐに水上さんと提案内容を具体的に詰めたことを覚えています。

「活文MIE」を基盤に、小さくはじめ、大きく育てていった

新たなシステムの開発にあたって、意識していたことはありますか?

横田:まずお伝えしたのは、「小さく生んで、大きく育てましょう」ということです。最初から「あれもしたい、これもしたい」と要件を詰め込みすぎると、システム開発はたいてい迷走してしまいます。半年くらいのサイクルでPDCAを回しながら、トライ&エラーで開発していきましょう、と。実は、これができるSIerは必ずしも多くはないと感じています。

五輪:私たちにとっても、願ってもみない申し出でした。「活文MIE」の強みのひとつは、お客さまのフィードバックを受けながら、柔軟に機能を拡張していける点にあります。まずは必要最小限の構成で素早く実装し、使いながら機能を充実させていくという開発方針と、非常に相性のいいソリューションです。
横田さまは「ONE TEAMでやっていきましょう」ということも、よく仰っていましたよね。

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横田:システム開発にしても、ビジネスにしても、結局のところは人と人とのつながりです。日立ソリューションズのみなさんとは、いつも気持ちの良いコミュニケーションができました。いい意味で個性的というか、オープンで、砕けた話もできる人が多い。だからこそ、いつも直球勝負で議論できました。また、さまざまなソリューションやシステム開発の経験、ノウハウを有する「総合力」に優れた会社であり、信頼できるパートナーだと思いました。

水上:プロジェクト開始時から毎週定例会議の場を設けており、そのたびに、さまざまなアイデアが飛び交うのですが、活文MIEはパッケージソフトという制約上、どうしてもできないことがあります。その理由を丁寧に説明すると、横田さまはそこから合理的な判断をしてくださるのです。その姿勢に、私たちはとても助けられました。

そういった建設的な議論を経て生まれたのが、労働災害管理システム「GENSAI」ですね。

横田:プロジェクトの初期フェーズでは、労災事故情報の入力や共有機能を備えたシステムが、2025年5月から稼働を開始しました。続く第2フェーズとして、同年10月には、労災レベル判定機能をカスタマイズ開発したシステムをリリースしています。この機能は、私自身がこれまでに蓄積してきたロジックやノウハウをシステム上で再現したものです。これにより、労災事故情報を同一基準で管理できるようになり、類似事故の再発防止に向けて大きく前進できたと感じています。

AIも活用しながら、誰もが安全に働き続けられる社会を

今後、GENSAIはさらに進化していくのでしょうか?

横田:もちろんです。現在も日立ソリューションズとともに、さらなるアップデートを進めています。第2フェーズの開発を終え、「労働災害情報の粒度を全社統一化し、専門的な知識を持たない人でも労働災害のデータを記録し、閲覧できる全社の共用プラットフォーム」は実現できました。但し、その結果から更に分かったことは労働災害に関する実際の報告内容にはたくさんの情報が含まれていたにもかかわらず、GENSAIに入力された情報を見てみると担当者の経験や知識の差によって、必要な情報が欠けていたり、誤解して入力されていました。このように、GENSAIにおけるユーザーインタフェースの利便性以外の要素があることが判明しました。もともと第3フェーズではAIによる原因分析と再発防止対策を自動生成することをめざしていましたが、前述の結果が原因分析や再発防止対策の立案の精度に大きく影響を与えてしまうという課題に直面し、そこで「如何に質の高い労働災害情報を入力してもらう方が大事」と考え、AIによる入力支援機能を原因分析と再発防止策のアプリの前に先に開発することにしました。たまたま原因分析と再発防止対策を検証するための補助ツール的な意味で、私のお願いをしていなかったAIの情報集約アプリを作っていただいたのですが、「これが課題解決のベストソリューションじゃないか。」と考え、これと原因分析と再発防止対策のAIアプリを連携させると、最強のツールに覚醒すると閃き、日立ソリューションズのSEの皆さまにも「その手があったか。」と即決で賛同を得ることができました。

五輪:活文MIEとAIとの連携は、当社としてもはじめての試みでした。この機能によって、現場からメールで送られてくる事故報告を読み込ませるだけで、GENSAIの入力フォーマットにあわせたテキストを、AIが自動で生成してくれるようになりました。不足している情報があれば、そこもAIが指摘してくれます。

横田:おかげで誰もが、本社に過不足なく情報を整理して報告できるようになりました。GENSAIも大きく進化すると感じています。今後も、さらにAIの活用を進めていく予定です。

GENSAIをはじめとする労働安全向上のための取り組みは、社会のSXにどのようにつながっていくとお考えですか?

横田:当社グループのメンバーが安全に働き、さまざまなステークホルダーのニーズに答えた持続可能なビジネスを行っていくことは、、当社としての最優先の課題だと考えています。万が一労働災害が起きれば、人が傷つき、時にかけがいのない命が失われることもある。そうすれば、事業を継続していくことも困難になってしまいます。労働安全を向上させていくことは、事業の持続可能性を高めることに直結しているといっていいでしょう。こうした取り組みが当社グループの枠を超えて、社会全体へと広がっていけば、こんなに嬉しいことはありません。

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五輪:そうした取り組みに、ぜひ私たちも伴走していければと思います。GENSAIも、さらに進化させていきたいですね。今後も、さまざまな技術を柔軟に組み合わせることで、横田さまの「労働災害をなくしたい」という想いに応えていければと感じています。

水上:労働安全という分野は、AXの土台となるDXについても、まだほとんど進んでいないのが実情だと思います。その重要性は理解しながらも、何から手をつければいいのかわからない、という企業も少なくないはずです。だからこそ、世界各地でさまざまなビジネスを展開する住友商事さまが、これだけ踏み込んだ取り組みを実現したことの意義は大きいと感じています。この協創が、より多くの人と企業が労働安全に目を向けるきっかけになれば幸いです。

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