2025.10.03
「もっと、心に響かせよう。もっと、暮らしを支えよう。明日を、未来を、拓いていこう」。地域に根ざした放送通信事業者として、そんな理念を胸に、さまざまな事業を展開されてきたJCOM株式会社(以下、J:COM)さま。日立ソリューションズとの協創で挑んだのは、新たなオンライン診療サービスの立ち上げでした。テクノロジーの力で新しい価値を創造しながら、すべての人へ。地域社会の未来を見据えて、放送通信領域にとどまらない挑戦がはじまっています。
井上 宗治
JCOM株式会社
IT企画推進本部 IT企画部
マネージャー
入社後、新規システム導入やDevOpsチームの立ち上げに携わり、スクラムマスターとしてスーパーアプリ「MY J:COM」の開発を主導。現在は複数のスクラムチームを統括し、迅速なシステム提供とCX向上を両立しつつ、新規サービスのシステム化を担っている。
瀬塚 武土
JCOM株式会社
ビジネスデザイン本部 ビジネス開発部
マネージャー
入社後15年間にわたり、デジタル領域のプロモーションや広報業務などに従事。
2024年より、ヘルスケア関連の新規事業やオンライン診療サービスを推進。あたらしいテクノロジーを、だれでも、簡単に、あたりまえに、利用できるサービスの創出・社会の実現に挑んでいる。
秋元 麻那美
株式会社日立ソリューションズ
営業統括本部
通信・社会営業本部 第2営業部 部長代理
入社以来、通信・放送業界を対象としたアカウント営業に従事。顧客の課題を的確に捉え、最適なソリューションを提供することで、持続可能な社会の実現に向けた価値創出をめざしている。
岩男 洋平
株式会社日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部
ライフイノベーション本部
ビリングサービス部 主任技師
通信業界において、携帯電話をはじめとする各種システムの開発・提案・拡販に長年従事。入社以来、お客さまのサービス基盤を支える会員管理や課金・請求などの基幹システムを幅広く担当し、業務効率化とサービス品質向上に貢献。培った技術力と業務知識を活かし、顧客ニーズに即したソリューションの提供を通じて、お客さまの価値創造に貢献することをめざしている。
瀬塚: 2018年に社内ベンチャー制度「J:COMイノベーションプログラム」がスタートしました。そこに参加したひとりの社員が掲げたのが「医療過疎のない社会」というビジョンです。慢性的な医師・看護師不足に悩む地域のために、私たちだからこそできることはないか――。オンライン診療サービスは、そんな思いから生まれた事業です。
井上:事業化にあたってまず直面したのが、課金モデルの設計でした。ケーブルテレビから事業をスタートした当社では、従来すべてのサービスが「世帯契約」を基本として設計されていましたが、オンライン診療はパーソナルなサービスです。望ましいのは個人での課金・利用ができるモデルだと考えました。
一方で、サブスクリプション型のサービスが急速に普及する中で、「個人契約」を基本とした課金モデルへの対応は避けては通れない課題であり、既に当社ではこうした個人課金モデルへの対応を可能とする基盤の構築を日立ソリューションズと共に進めていました。
まさに今回のオンライン診療は個人課金モデルを実現するための基盤を活用できるサービスであり、当社の経営戦略においても大きな意味があったと思います。
井上:私たちが求めていたのは、オンライン診療サービスにとどまらず、将来展開されるさまざまな個人課金型サービスを、一元管理できる基盤システムでした。そうした重要なシステムの構築を任せられるパートナーは、決して多くはありません。そんな中でサブスクリプションサービス提供の実績を有し、これまでも長きにわたり当社の業務システムを支えてきてくれた日立ソリューションズを協創パートナーとして選び、ともに新サービスを構築していくことにしました。
秋元:ご相談をいただいたのは、まさに新型コロナウイルスの感染拡大の真っ只中だったことをよく覚えています。だからこそ「クリニックでの二次感染を恐れている方々のためにも、少しでもリリースを急ぎたい」という思いが、ひしひしと伝わってきました。
岩男:具体的にご提案したのは、サブスクリプションビジネスのサービス管理や顧客・契約管理、入金管理などをワンストップで担える「BSSsymphony」という当社のソリューションでした。導入実績が豊富でノウハウも蓄積されていますし、短期間での導入や柔軟なカスタマイズに対応できる点が大きな強みです。
瀬塚:実証実験を経て、一部エリアにおけるトライアル提供を開始したのは2021年7月です。社会的ニーズが高まる中、スピーディーにサービス提供を実現できたのも、日立ソリューションズの技術力があってこそだと感じています。
瀬塚:一般的なオンライン診療サービスがスマートフォンで提供されている中、自宅のテレビを通して診療を受けられる仕組みがJ:COMならではの特徴となります。大画面のテレビを介してやりとりすると、患者さまと医師が互いの様子を把握しやすくなるため、コミュニケーションも自然とスムーズになります。
井上:使い慣れたテレビのリモコンで気軽に操作できることも、特にスマートフォンに不慣れなご高齢者の方にとっては、大きなメリットです。
利用開始までのハードルをさらに下げるために、J:COMのほかのサービスと同様に、ご自宅までサポートに伺う体制も整えています。ご希望があれば、診察当日にスタッフが立ち会うことも可能です。こうしたきめ細やかなフォローこそが、お客さまとの関係を大切にしてきた、私たちらしいサービスのあり方だと感じています。
瀬塚:2023年1月には、さらにシームレスな医療体験を提供するために、「おくすり受け取りサービス」という新機能を実装しています。これによって診療に加えて、オンラインでの服薬指導から、お薬の配送、決済までを、自宅で完結できるようになりました。仕事などでなかなかクリニックに行く時間がとれない方や、定期的な通院が必要な方などを中心に、多くのお客さまからご好評をいただいています。
瀬塚:オンライン診療は、まだまだ発展の余地があります。たとえば医療機関の導入率も、15%程度(※1)という調査結果もあります。その反面、私たちが実施したアンケートでは、一度ご利用いただいたお客さまの約8割が、「今後も継続して利用したい」と回答してくださいました。
このギャップをどう埋めていくかが、今後の課題です。積極的な情報発信を通じて、サービスの利用を促進していきたいと思っています。
井上:当社では、私たちが提供するさまざまなサービスをひとつのアプリに統合し、お客さまがアプリを切り替えずに複数のサービスが利用できる「スーパーアプリ」の構想を以前から進めてきました。それを具現化したのが「MY J:COM」アプリです。
そして2023年11月には、「MY J:COM」アプリからも、オンライン診療サービスを利用できるようになりました。スマートフォンやタブレットといったマルチデバイスに対応したことで、外出先からでも診療が受けられるなど、使い方の自由度は大きく向上したと感じています。
ちなみに、このアップデートをきっかけに、オンライン診療サービスの登録者数はもちろん、「MY J:COM」アプリの登録者数自体も、増加しました。スーパーアプリ構想を実現する上での、重要なタッチポイントにもなりつつあると実感しています。
秋元:そのようなJ:COMさまの事業展望については、私たちも理解して取り組んでいます。だからこそ、今回ご提供したシステムも、今後さまざまなサービスの基盤となることを見据えて、拡張性を重視した提案をしていきました。これからもオンライン診療サービスのアップデートはもちろん、新サービスのスムーズな提供をご支援していきたいと思います。
岩男:スーパーアプリ構想を進める一方で、地域に根ざした姿勢を決して忘れないことに、J:COMさまの企業としての責任感が表れているように思います。私たちも、その強みを損なうことがないよう、拠点ごとのデータの管理や統合のしやすさなどに配慮しながら、システムの設計・構築を進めていきました。
井上:改めて感じたのは、日立ソリューションズの高い技術力です。現在もオンライン診療を支える顧客管理・課金基盤の保守管理をお任せしていますが、今後もさまざまなソリューションをご提供いただきながら、新たな価値の創造をご一緒していければと感じています。
そのためにも、これから重要になってくるのが、データの収集とその分析です。当社ではデータドリブン経営を実践するために、既に日立ソリューションズの支援のもとで、TableauというBIツールを導入していますが、このあたりも引き続きご協力いただけると心強いです。
秋元:データ分析は、まさに私たちの強みのひとつです。J:COMの社員のみなさまが、地域のみなさまの声をデータとして吸い上げ、それを新たなアイデアや事業の実現につなげているよう、私たちもAIなどの技術を活用しながら、サポートを続けていければと思っています。
瀬塚:私たちはサステナビリティ経営方針の中で、「安心安全で持続的な地域社会の実現」を重要課題のひとつとして掲げています。この課題解決に向けて、地域とそこで暮らすみなさまのニーズに応えるさまざまなサービスが必要不可欠であり、BtoBやBtoGの取り組みを通じた包括的な地域社会に貢献していきたいとも考えています。日立ソリューションズもスマートシティの取り組みに注力されていると伺っていますので、ぜひそうした知見もお借りしながら、今後も協創を進めていければと考えています。
岩男:私たちもJ:COMさまとともに新たなビジネスの創出に取り組むことを通じて、その先にいらっしゃる地域のみなさまの暮らしを、より豊かなものにするお手伝いができれば幸いです。そのために、これからも積極的に当社の製品やソリューションをご提案させていただければと思います。
井上:まずは何よりも、お客さまの利便性を追求していくことが、すべての出発点だと感じています。たとえ制度改正がなくとも、社会の変化に先回りするくらいの気持ちで、お客さまに寄りそったサービスとして進化していければと考えています。それが結果的に、誰もが心地よく過ごせる、やさしい地域社会の実現につながっていくのではないでしょうか。
瀬塚:みなさまも実感されていると思いますが、AIをはじめとするテクノロジーの進歩は、本当に目覚ましいものがあります。けれど、それがすぐさま社会課題の解決に直結するかというと、そうではありません。そもそも、新しい技術を誰もが使いこなせるようになるまでには、どうしてもタイムラグも生じます。
だからこそ、そうした新しいテクノロジーやサービスを、いかに使いやすいかたちで日々の生活の中に落とし込んでいくのか。それが「あたらしいを、あたりまえに。」をブランドメッセージとして掲げる、私たちの役割だと考えています。
秋元:J:COMさまのブランドメッセージは、「グローバル化・デジタル化がもたらす新しい景色を、すべての人へ。」という日立ソリューションズの経営ビジョンにも重なるものだと感じています。こうした共通の価値観を土台にしながら、より包括的で、よりしなやかな技術活用のあり方を、模索し続けていければと思います。
岩男:テクノロジーを活用して、地域社会の持続性に貢献していくことは、今やすべての企業に求められる責任です。地域に根ざしながら、その課題と真摯に向き合ってきたJ:COMさまとともに歩むパートナーとして、これからも新たな価値をすべての人へと届けるための基盤づくりに取り組んでまいります。