2024.03.26
日立ソリューションズは横浜におけるイノベーション創出のための産学公民連携推進機関「横浜未来機構」の正会員メンバーです。2023年秋、横浜未来機構が開催する「YOXO事業アイデア創出ワークショップ」の一環として、日立ソリューションズは、新規事業アイデア創出のためのオンライン・ワークショップの運営に携わりました。そして2024年2月、本ワークショップで選出された3つの事業アイデアを横浜市で開催された「YOXO FESTIVAL 2024」(よくぞフェスティバル)でお披露目しました。ユーザーの声を直接聞きながら、事業化への道を探るプロセスをレポートします。
横浜未来機構と横浜市は、2024年2月3~4日に「YOXO FESTIVAL 2024」を共同で開催しました。企業・官庁・学校・団体・個人がイノベーターやクリエーターとなって未来に向けた新しいアイデアや技術を持ち寄り、領域を越えて交流することで、新たなひらめきを得たり、ワクワク感を共有したりする市民参加型のイベントです。「横浜でみらい体験」をコンセプトとした新技術・新サービスが、ランドマークプラザやグランモール公園など市内10エリアで展開され、横浜の未来を考える30ものトークイベントや、未来を体験・体感する130以上のブース展示、ワークショップが開催されました。2日間の来場者数はおよそ55,000人(2日間10会場延べ人数)となり、横浜の街がアイデアであふれた週末となりました。
日立ソリューションズがブースを出展したのは、横浜ハンマーヘッドCIQホール。みなとみらい地区に向かう自動運転カーのスタート地点になったり、技術者としてのアイデアやテクニックを競い合う人気のテレビ番組に参戦したエンジニアたちの展示コーナーがあったりと、一日中、賑やかな雰囲気でした。
「ガジェットと魔改造とスタートアップエリア」と称された出展会場は、多くの来場者で賑わいました
出展数は55あり、複合現実と自律型AIを用いたマルチエージェントシステムや、画像認識AIとAR技術を組み合わせた映像体験など、最先端技術を紹介するブースがあるかと思えば、レーザーカッターや3Dプリンターで作った自作工作物や、子供が触れて楽しさを体感できる電子ガジェットを展示するグループもあります。テクノロジーの種類は多様で、企業のエンジニアや学生に交じって、子ども連れのファミリーも数多く来場していました。
その一角で、日立ソリューションズは「ちょっと未来の横浜に『あったらいいな』アイデア投票」というブースを出展しました。昨秋2カ月にわたって実施した「横浜市をITの力で、世界中の人々で賑わう都市にする」ワークショップで生まれたアイデアを披露し、ユーザーの反応を伺う試みです。来場者はアイデアのQRコードを読み込み、「いいな」と思う案に投票できます。
足を止めてくれた来場者に声を掛ける
日立ソリューションズ ITプラットフォーム事業部 プラットフォームソリューション本部
ITエンジニアリング部の市川慧大氏
展示で紹介したアイデアの一つは、「ファッションコーディネートサービス」。昨秋のワークショップにおいて、参加者同士で互いに評価し合った際、高得点を獲得したアイデアで、横浜で訪れたい観光地を設定すると、その地域に合わせた服装やレジャー小物が提案されるサービスです。提案された服装は現地に配送され、提携する着替えスポットで気軽に着用でき、手ぶらで多彩な観光を楽しめます。
このサービスがもたらす嬉しさ(ワークショップでアイデアを評価した際に指標とした「そのアイデアによる問題解決の影響範囲が広い」ことと「解決されたときの価値の大きさ」)や使い方の例をモニターで説明すると共に、スマートフォンで動くWebアプリの簡単なモックアップを来場者に触っていただきます。「初期アイデアでは、髪型と服のコーディネートに主眼が置かれていましたが、その内容では既に競合サービスが存在します。そこで、横浜の地域特性を活かしたサービスに転換することを考えました。横浜には街中や郊外、山や海といった多彩な観光スポットがあります。そういったお出かけ先の『地域特性』にあわせてコーディネートをカスタムする、ということを方針転換の起点としました。最終的には、メンバーとのディスカッションを経て『手ぶらで観光地を訪れ、その場で手軽に衣装替えできる!』ことをサービスコンセプトとして、『服やレジャー小物のシェアリングサービス』という形で提案をしています 」(西氏)
「来場者の反応を知ることで、プランが磨かれていきます」と語る
日立ソリューションズ 事業戦略本部 DX協創戦略部の西泰彦氏
ワークショップの最終日からフェスティバル開催までは、年末年始を挟んで1カ月足らず。限られた時間のなかで ビジネスモデルの詳細検討や、モックアップ、展示コンテンツづくりには 苦労があったようです。
2つめのアイデアは「YOKOHA-Maps」。ゲーミフィケーションで横浜の知られざる魅力を幅広い層に発信しようというのがコンセプトです。今回のモックアップに盛り込めなかったアイデアもあり、今後は各地区を周遊すればボーナスポイントがもらえたり、有名な観光拠点だけでなく周辺のマニアックな スポットも紹介したりすることで、新しい発見を誘発するようなしかけをめざしています。
「『市民も参加するワークショップから生まれたアイデアです』と説明すると、来場者の反応がよかったですね。このアイデアは、商業施設や観光事業者が利用者のニーズを発見したり、自治体が将来の都市計画を進める上で多くの住民の要望を吸い上げたりと、大きく発展させられる可能性を秘めています。今後も市民の皆さんの声を聞きながら、横浜の魅力を世界に発信できるサービスに育て上げていきたいと思います」と佐藤氏は語ります。
「『今年はYOXOフェスに出展する』という目標は達成しました。ここで得たものを次につなげていきます」
とほほ笑む日立ソリューションズITプラットフォーム事業部 プラットフォームソリューション本部
主任技師の佐藤千文氏
日立ソリューションズのブースを訪れた来場者は、市内の企業に勤務するエンジニア、知人が出展しているのを見に来たついでに立ち寄ったという医療従事者、イベントをまったく知らずに赤レンガ倉庫の観光に訪れたところ、フェスティバルの案内が目に入って興味が湧いたという人などさまざま。そのうちのひとりは、ブースで紹介された3つめのアイデア「起業マッチングサービス」に興味を持ちました。このプランは、市内で起業を志す人と、行政からのさまざまな支援策、インキュベーション施設や投資家などをつなぐ機能を持っています。「起業だけでなく、副業を探すときにも使えるようなサービスに発展していけば面白いですね」と感想を語ってくれました。
来場者との会話が弾む、
日立ソリューションズ ITプラットフォーム事業部 プラットフォームソリューション本部
ソフトウェア開発サービス部の堀口雅行氏
日立ソリューションズが横浜未来機構にメンバー企業として参加し、YOXO事業アイデア創出ワークショップの運営を始めてから2年目となった今年。「昨年はアイデアを出しただけで終わった感覚があります。今年はもう一歩進んで、実際に市民の皆さんの声を聞き、事業化への道をさらに前進させていこうと、最初からフェスティバル出展を目標にしました。アイデアをITの力で形にするだけでなく、その価値を市民にどう伝えるかはまだまだ難しい課題ではありますが、やりがいはあります。大企業、スタートアップ、学生、市民等幅広い立場の方々が出展する今回のフェスティバルは、他の出展者と交流するよい機会にもなりました。どんな事業も1社だけでやりきるのは難しい。こうした場でつながりをつくり、コラボレーションを進めていけたらと思います」と佐藤氏は語ります。
日立ソリューションズ ITプラットフォーム事業部 プラットフォームソリューション本部
ITエンジニアリング部 小林千恕氏の説明を、来場者は熱心に聞いてくださいました
西氏も、「通常、展示会ではリリース済みのソリューションを出展します。ですので、今回のようなサービスコンセプトレベルの柔らかい提案というのは、珍しい試みでした。また、企業の方だけでなく、広く市民の皆さんに対してアイデアを提案するというのも初めての経験で、普段の出展とは異なる観点のフィードバックを得られたと感じています。展示や説明に関してはまだまだ工夫の余地はあるものの、小さなモックアップを何度も作り、ユーザーヒアリングを重ね、素早く改善して事業可能性を探るという新規事業創出のサイクルを実現できましたので、昨年度の取り組みからは一歩前進ですね」と語ります。
横浜各所の魅力を伝えることができる「YOKOHA-Maps」について来場者に説明すると、
ゲーム性の高さに対して良好な反応を得られました
ブースで行ったアイデア投票は5段階評価とし、評点の平均が最も高かったのは「YOKOHA-Maps」でした。昨秋のワークショップでは参加者による相互採点 だったので、今回の展示でユーザーにより近い人が採点した結果、高得点を獲得したという評価は重要です。その結果を社内に持ち帰って議論を重ね、さらに事業化への道を検討していくことになります。
来場者に積極的に話しかけ、奮闘した日立ソリューションズのメンバー