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2023.08.22

【基調講演・対談】DXラボのオンラインイベントを開催しました
イノベーションを生み出すかけ算のチカラ 第2回
~コミュニティの未来と新たなつながりの作り方を考える~

1315回表示しました

2023年7月6日(木)、日立ソリューションズは、オープンイノベーションとコミュニティに興味がある方を対象に、オンラインセミナー「イノベーションを生み出すかけ算のチカラ第2回 ~コミュニティの未来と新たなつながりの作り方を考える~」を開催しました。

2023年3月1日に行われた第1回が大好評となったため、今回も前回に引き続き、Zアカデミア学長の伊藤 羊一氏  をお呼びし、さらに深掘りした第 2弾として実施しました。
本記事では、伊藤氏とのディスカッションの様子を中心に、コミュニティに入る際の選び方のポイントや、複数のコミュニティとどう付き合っていくべきか、未来のコミュニティとの関わり合い方などを紹介します。

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    伊藤 羊一 氏  (パネラー)

    Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長

    61万部のベストセラー『1分で話せ』(SBクリエイティブ)や近著『「僕たちのチーム」のつくりかた メンバーの強みを活かしきるリーダーシップ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も好評。Yahoo! JAPANやLINE等を展開するZホールディングスグループの中で次世代リーダーを育成するための社内学校「Zアカデミア」の学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部学部長を務める。

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    西 泰彦  (コメンテーター)

    株式会社日立ソリューションズ 事業戦略本部

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    油比 孝文  (ファシリテーター)

    株式会社日立ソリューションズ 経営企画本部

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    石橋 奈津  (司会)

    株式会社日立ソリューションズ 経営企画本部

イノベーションのきっかけはコミュニティ

オープニングセッションでは、まず「ご家庭や会社以外で何かコミュニティに入っているか」というアンケートをリアルタイムで実施。65%の方が「入っている」と回答しました。司会進行を務めた日立ソリューションズ 経営企画本部 石橋 奈津は、「新しい繋がりを持つことはとても重要であり、ビジネスの世界においても、偶然の出会いから刺激を受けることがイノベーションに繋がる。その刺激を受けられる機会がコミュニティによって作られると思っている」と説明。また、世の中では課題解決に向けたさまざまなコミュニティ活動が起こっており、その中ではいろんな人やアイディアが結びつき、協創によるイノベーションの種が見出されていると話しました。

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そして、日立ソリューションズの「協創」への取り組みとしてDXラボの活動について紹介。DXラボは、当社と社外の皆様の知見やリソースを組み合わせ、新しいサービスやビジネスを作るためのオンライン空間で、ここでは専任のコンサルタントがアイディア創出、仮説構築、価値検証、ビジネスモデル構築の4つのステップを伴走して支援しています。  さらに、約600名もの有志のメンバーが集い、ディスカッションをするコミュニティができているということも説明しました。

続いて基調講演として伊藤 羊一氏が第1回目に続き再び登場。「想いをカタチにしていこう」というテーマでお話しいただきました。

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伊藤氏は、「想いをカタチにするため一歩踏み出すには2つの準備が必要。それは"スキル"と"軸"である」と説明。"スキル"とは考える力。それは「これはこうである。なぜならこうだからだ」という結論と根拠のピラミッドを常日頃から考えることで鍛えられる。具体的には、情報をインプットし、こうなるのではないかという結論を妄想する、そして知識をミキサーにかけてその結論を導き出す根拠を構築するというトレーニングをすることが有効とお話しされました。

一方、"軸"とは判断基準。それはこれまでの経験からくるものであるため、過去を振り返ってみることが大事だと解説されました。想いをカタチにする近道は、そのようにスキルと軸を準備した上で、同じテーマに興味を持った人が集まり、お互いに気づきを与え合いながら、小さく、みんなで踏み出すこと。そこでコミュニティが役に立つとお話しされました。

続いて、「コミュニティの未来と新たなつながりの作り方を考える」というタイトルで、伊藤 羊一氏、DXラボの運営に携わっている日立ソリューションズ 事業戦略本部の西 泰彦による座談会が行われました。モデレーターは日立ソリューションズ 経営企画本部の油比 孝文が務めました。ダイジェストで紹介します。

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コミュニティはどう選べばいいのか

―セミナーの参加者の方に、「どれくらいの数のコミュニティに参加されていますか」というアンケートを取った結果、2つ以上参加しているという方が58%と皆さん活発に活動されているようです。伊藤さんのおすすめのコミュニティの入り方はどのようなものですか。

伊藤:圧倒的に大事なことは、「友達がいる」ということ。次に大事なことは、少しでも知見があるということです。新しいコミュニティに入るのだから初心者であるのは当然なのですが、全くやったこともなく知識もないということだと、何を喋っていいのかわからなくてドキドキしてしまいますからね。

西:本日は私のDXラボおよび社内横断コミュニティ運営経験を通じてお話しさせていただきます。
まず、コミュニティに安心して入れるかはすごく重要だと思います。私個人は、コミュニティの活動実績や発信している内容を見て、自分が思い描く活動に近いか、安心して参加できそうかを想像して、参加するかを考えることが多いです。

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―興味があってもなかなかコミュニティに入る一歩が踏み出せないという人にアドバイスをいただけますか。

伊藤:自分で「これがしたい」という明確なものがあるとコミュニティに参加しやすいですよね。新しいことは一人ではなかなかできないですが、同じことがしたい人、先にしている人と一緒にやれば大抵のことはできるので。それに「この人とは同じ想いを共有できている」とわかると、グッとコミュニケーションがしやすくなります。そういう関係性で繋がっているのがコミュニティなので、一歩踏み出せばすごく楽ですよね。

コミュニティは「新結合」が生まれやすい

―参加者の方から、「今所属している部署はイノベーションには関わっていませんが、イノベーションに興味があり、異動することも考えています。どうしたらいいですか」という質問をいただいています。

伊藤:イノベーションはよく、「新結合」と言われます。それは既存の何かと何かがくっつけば新しいものが生まれるということです。その「結合するもの」は、今、その人がやっている仕事の中に必ずあるわけです。ですからコミュニティで別の何かを持った人とお互いの事業の話で盛り上がってくると、「これとこれを組み合わせると新しいよね」といった話が結構出てくる。つまり新結合って自分たちで作れるんです。ですから、部署異動までいかなくても、まずはコミュニティに入っていろんな話をしてみるということもおすすめです。

―今、「新規の方が入りやすくするために工夫していることを教えてください」という質問が来ていますが、伊藤さんいかがですか。

伊藤:今年(2023年)の6月、私が代表となって東京の三鷹に「Musashino Valley」というスタートアップスタジオがオープンしました。これは個人またはチームのためのコワーキングオフィスでありながら、事業創造と成長支援のためのイノベーションスクールを受講できたり、スキル勉強会やワークショップに参加できる、ビジネスの立ち上げと成長をみんなで目指すスタジオです。いわばスタートアップのための場所のあるオンラインコミュニティなんですね。ここに知り合いが一人もいないのに入ってきてくれる人たちがいます。

ただ、そういう人たちがコミュニティの中で関係性を構築するまでには時間がかかるので、まず私が1 on 1で対話をすることにしています。「まず私と友達になろう」というノリですね。それでその人が興味のあることをはじめいろいろな話を聞いて、その上でその人に合いそうな他の人を私が紹介します。また、コミュニティに新しく入ってくる人は自分を異邦人だと感じてしまいがちなため、それを無くすためにも自己紹介カードのようなものを作成する工夫もしています。

西:私が携わっている社内コミュニティでも、新規の人が入りやすくなるために、メンバーの得意領域や知りたいことを見える化するツールとしてスキルマップを作っています。それがコミュニケーションのきっかけになったりします。

FREE、FLAT、 FUNな雰囲気がベスト

―「コミュニティの活動って色々あるけど例えばどんな活動があるんだろう」という質問がきていますが、いかがでしょうか。

伊藤:コミュニティの中で何をするかは自由でいいと思うんです。ただ、私は「FREE、 FLAT、 FUN」であることは必要だと思っています。自主的に参加するコミュニティなのだから、メンバーの人たちが自分から主体的に「これをやってみない?」って言い出すことを目指したい。でも、「FREE、 FLAT、 FUN」になっていないと、積極性がうまれず、発言するにしてもおずおずという姿勢になってしまう。だから、メンバーをエンカレッジする(励ます)ために私はただそこにいて、誰かが「これをやりたい」と言った時に、「いいじゃん!やろうよ!」とブーストする役割をすることが多いですね。

西:当社には、  社内横断コミュニティがあります。このコミュニティの活動では、チャットで最近のニュースやビジネストレンドを共有するというものがあります。ここでは、異なる専門性を持った600名くらいのメンバーが自由に意見を言い合うのですが、同じニュースに対しても全く異なるコメントがついたりします。一つの出来事に対して多様な見方があるというのは、新規事業など新しいものを生み出そうとするうえで大きな気づきになります。これは、コミュニティとして非常にいい傾向かなと思っています。

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複数のコミュニティと上手に付き合うべき

―「コミュニティ活動は色々と取り組んでいると息切れしてしまう時もあるのではないか」という質問が来ています。

伊藤:無理して活動に参加している状態は良くないですね。コミュニティに限らず、自分のあらゆる行動は目的が明確になっているということが重要です。それがはっきりしていれば無理をしていても楽しいし、逆にやめるという選択をしてもいいと思います。私は目的への最短距離が見えていないものに対しては、バサッとやめることがあります。やはり時間的にも気持ち的にも余白があることはすごく大事なんですよ。余白がないと新しいことは考えられない気がします。

―続いて、「未来のコミュニティはどうなるんだろう」というテーマでお話を聞きたいです。既に実感しているコミュニティの変化などもあれば教えてください。

伊藤:コロナ禍の3年間、世の中のコミュニケーションが、人と直接には接しないオンラインに一気に向かって、その後、またオフラインが復活してきました。そういう経験を経たことで、人と会うということに対する世の中の感度がすごく高まった気がします。私もそういった経験を通じて、人と人とが交わるコミュニティの重要性を実感しました。やはり未来を作っていくためにはイノベーションが必要だし、イノベーションは人と人とが交わらないと起きないわけですから。

西:今、オンライン形式のコミュニティが増え、運用ツールなどもいろいろあり、コミュニティの在り方も多様化しています。今後は個人が複数のコミュニティに   同時に属しつつ、それぞれの役割を変えて動いていくことが増えてくるのではないかと思います。 情報や世の中の流れも非常に早いので、個人がやりたいこともその時々で変わっていくのではないかと思います。そうした変化に合わせて、繋がる先を柔軟に変えながら、いろいろなコミュニティに向き合っていくということが、今後求められるんじゃないかなと感じます。

― 追加の質問があり「一人で問いを生み出すために伊藤さんが意識されていることがあればお伺いしたい」とのことですが、いかがですか。

伊藤:まず、「それはなぜ?」と一度立ち止まることを意識しています。それと同時に、「そもそも、それでいいのか。課題の捉え方自体が間違っていないか」など、「そもそも」を問うことをすごく大事にしています。さて、今  、チャットで「コミュニティが大事と考える理由は何か」と質問が来ているのでお答えします。
新しいチャレンジをしていると本当に考えなければいけないことがたくさんある。そういう状況に直面すると、自分の力だけで解決できないことを痛感して、他の人の力も借りるためにいろいろな人と話します。当初の目的は、他の人の知識を借りよう、足りないピースを埋めようというものだったのですが、実はそういったメリットだけでなく、他の人と話すことには自分の頭の中が整理され、理解がどんどん進んでいく効能があると気づきました。そうやって人と話すことが、成長に繋がっていくんだということを実感したのです。

―最後に今回のまとめをお願いします。

伊藤:新しいものを生み出そうとするうえでも、コミュニティに参加し活動するうえでも、大事なのはやはり自分の軸です。自分の軸は何なのかを考え続ける、問い続ける、そして見つかった軸を鍛え続けるということが必要で、それを実行するためには考える力を身に付けることです。
そしてそこから先に進むのに、ひとりで行くのか、みんなと行くのか。「早く行くなら一人で行け、遠くに行くならみんなで行け」というアフリカのことわざがあるように、より理解を深めてより遠くに行きたいなら、対話するのが大切。そのためにはコミュニティが重要な役割を果たすと思います。

西:私自身、新規事業の創生をやっていても、対話によって自分の考えが整理されていくことが頻繁にあります。今、世の中にさまざまなコミュニティがありますので、対話を生み出すためにまずは、気軽にお近くのコミュニティに参加してみるといいのではないでしょうか。そこで最初は小さなアクションをして反応をもらい、自信をつけて大きなアクションを取っていく。そういったステップを踏んで、どんどん活動を広げていっていただけたら良いと思います。その中で、もしご縁があれば我々DXラボにお声掛けいただきましたら幸いです。  

イベントを終えて


〜イノベーションが起きるコミュニティを作るために〜

本日の座談会を終えて、イノベーションを起こすためには多様な人材がコミュニティの中で対話することが重要だということが再確認できました。アンケートでも「フラットなやり取りが大事だ」や、「社内外のコミュニティ参加も重要そうだ」との気づきのコメントもいただきました。ただしその前段階として、コミュニティに参加するメンバーは、それぞれのスキルと軸をきちんと持った上で参加することが大事だという伊藤さんのご意見はとても参考になりました。    
また、コミュニティに新しく参加したメンバーができるだけ早く馴染み、「FREE、FLAT、 FUN」なコミュニティを作るために、運営側がまず1 on 1で参加者と対話する有用性を知ることができました。日頃よりDXラボやコミュニティの活性化に工夫をしていますが、今回のイベントで参加者の方々からいただいた様々なご意見を今後の運営にも取り入れてまいります。
日立ソリューションズでは今後、さまざまな社会課題について考え、解決に導くために、社外の方にも参加していただけるコミュニティ活動なども企画してまいります。みなさまとの協創活動の幅を広げることで、イノベーションを一緒に生み出していきたいと考えております。

 日立ソリューションズ DXラボ 

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