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2024.05.15

座談会【奥村組×日立ソリューションズ】
現場の声に耳を傾け、検証を重ねて作り上げたAIモデル
建設業界全体として、安全かつ魅力ある労働環境の実現へ

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労働者の安全・安心な労働環境を促進する責任のあるゼネコンとして、建設現場での墜落・転落事故をなくしたいと考えていた株式会社奥村組(以下、奥村組)は、日立ソリューションズとの協創により、墜落制止用器具フックの不使用者をAIで自動検知するサービスを開発しました。自社だけでなく、建設業界全体でこのソリューションを活用し、事故をなくしていくことで、安全安心で魅力のある建設現場を実現し、建設業のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を進めていくことを目標としています。

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    稲垣 考一

    株式会社奥村組
    ICT統括センター
    イノベーション部長

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    宮田 岩往

    株式会社奥村組
    ICT統括センター イノベーション部
    DX推進課長

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    廣瀬 年彦

    株式会社奥村組
    ICT統括センター イノベーション部
    DX推進課 課長代理

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    相輪 衛

    株式会社日立ソリューションズ
    営業統括本部 関西営業本部 第2営業部 第3グループ
    主任

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    梅村 隆

    株式会社日立ソリューションズ
    サステナブルシティビジネス事業部 新事業推進部 マーケティンググループ
    技師

死亡事故ゼロをめざす奥村組の挑戦

さまざまな業界でデジタル化やDX推進の必要性が叫ばれている中、建設業界ではどのような取り組みが行われていますか。

稲垣:2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されたため、建設業界全体で生産性向上のために具体的な取り組みを行うことが必要となっています。我々は2020年にICT統括センターを設立し、ITやAIを活用して生産性を上げ、従業員の負担を軽減する取り組みを推進してきました。

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日立ソリューションズは、建設業界に向けてどのような取り組みを行っているのでしょうか。

相輪:我々は2020年8月より、スマートデバイスやIoTを活用したフィールド業務支援の経験やノウハウをベースとした「建設業向けソリューション」を、建設業のお客さまに紹介してきました。稲垣さんがおっしゃるように、2024年4月より、建設業界においては、残業規制の強化で効率化をめざさなければならないという背景があり、ITでご支援できるソリューションをお客さまへ提供することに注力してきました。安全衛生管理に対しても、たとえば位置情報を活用して重機との接触事故を防いだり、バイタルセンサーを活用して建設現場の作業者の体調を管理したりするなど、さまざまな取り組みを行っています。

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安全衛生管理の面で、AIを活用した安全帯不使用者検知システムを開発した背景について教えてください。

廣瀬:安全管理の分野で最も懸念されていたのは、建設業で発生した死亡災害のうち、墜落・転落災害が約4割を占めていることです。また、墜落・転落災害の中で死亡事故となった原因のほとんどが安全帯に関するもので、建設業界各社はさまざまなルール作りや取り組みが行われています。しかし、事故が一向に減らないというのが大きな課題であり、監視体制の強化などの効果的な対策が求められていました。

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稲垣:「労働者の安全・安心な労働環境を促進する」という社会的責任を果たすためにも事故を減らすのは非常に重要なことです。企業や業界の魅力・価値を向上させるためにも、死亡事故を減らす必要性を認識しており、ICT統括センターとしても、ITでこの課題を解決しなければならないと考えていました。

宮田:かねてからAIを活用して安全帯不使用者を検知するという構想はあり、さまざまな会社にお声がけをし、ディスカッションしていく中で、日立ソリューションズと協創していくことになりました。

現場の情報を共有して、先端技術を本当に使えるものにする

ソリューション提供ではなく協創することになった経緯を教えてください。

稲垣:建設業は、独特のルールや重層的な施工体制など、他の業界の人からはわかりづらいことが多い業界です。そのため、AIやITを活用した出来合いのソリューションなどが出てきても、今一歩我々のニーズに合っていないと感じるものが非常に多いのが実情でした。建設業におけるニーズをきちんと伝えて要件に入れることで、我々はユーザーとして効果的に利用でき、日立ソリューションズは、私たちのニーズにマッチしたソリューションを開発できるという理由から、Win-Winの関係になれると考えました。

梅村:我々は画像認識の技術を使ったさまざまなソリューションを持っています。画像認識を使った安全衛生管理に関するソリューションにも注力していたので、奥村組様から今回のお話をいただいたときには、現場での要求により深く応えられるものを一緒に作っていけるのではないかと考えました。我々が提供者側の視点のみで開発を行うと、カスタマイズが前提となった製品となってしまいがちです。今回の目的は、現場で事故を減らしていくということなので、現場に導入しやすく、製品開発のプロセスを業務に照らし合わせて作っていく必要があると考えました。

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実際にプロジェクトはどのように進んでいったのでしょうか。

廣瀬:しっかりと現場で使えるものにするために、安全帯不使用者の判定精度を90%以上にするという目標を立てていましたが、フックのように小さなものがどのような状態にあるかをカメラ映像だけで判定させることに苦労しました。そういった中、精度を上げるために、安全帯を使用していないケースにはどのようなものがあるかなどを日立ソリューションズと協議して改善していくというやり取りを行えたことが非常に効果的で、目標の精度を達成することができました。

梅村:奥村組様に提供いただいた現場の画像を学習させるだけではなく、安全帯不使用者のフックの位置や監督者がチェックする視点など、現場のリアルな意見を聞きつつ議論を重ね、その結果をもとにプロトタイプを作成して精度検証を行ったことで精度を上げることができました。我々だけで開発したのではなく、奥村組様と協創して作り上げたからこそ、90%以上の精度が出せたのだと思います。

稲垣:ユーザーとしての我々と開発しているエンジニアとの話がうまくかみ合わないことがよくあるのですが、日立ソリューションズが両者の意見やアイデアをすり合わせる調整役としてうまくつないでくれたことも、今回のプロジェクトを成功に導いた要因だと思います。

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建設業界全体で持続可能性を高めていく

今回のソリューションをリリースして、建設業界全体に提供するとお聞きしています。

梅村:今回、奥村組様と協創して作ったソリューションはクラウドサービスとして提供させていただいています。現在は、AI安全帯不使用者検知システム 「KAKERU」として、カメラや通知機器、ルーターなどのハードウェアをセットにして建機のレンタル会社である西尾レントオール株式会社様からレンタルできるようになっています。今回のソリューションは、建設業界のSXにもつながるものだと考えています。

宮田:今回の取り組みは、自社だけでなく他社にも広く使っていただける新たなチャレンジとして、非常によい経験となりました。多くのゼネコンが参画し、建設業界全体の生産性および魅力向上を推進する"建設RXコンソーシアム※"のAIによる安全帯不使用者検知システム分科会でも紹介させていただきました。そこで各社からの要望を聞いて改善していくことで、今後もよりよいシステムにしていこうと考えています。

※:https://rxconso-com.dw365-ssl.jp/report.html
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稲垣:先人達がさまざまな努力をして死亡事故を減らしてきましたが、それでも全産業の中で最も死亡事故が多いのが建設業という事実は変わりません。業界全体として、人が亡くならない産業にしなければ未来はないと考えているので、今回のソリューションが社会に影響を与えられるのであればよいと思います。

梅村:日立ソリューションズは、企業理念を「時代の先を見つめ、変化を先駆ける。確かな技術と先進のソリューションで、地球社会の未来をみんなと切り拓いていく。」と2023年にアップデートしており、「確かな技術と先進のソリューション」という部分はまさに今回作り上げたソリューションだと考えています。建設現場の事故が減っていくことによって、「未来をみんなと切り拓いていく」という理念も実現することにつながると考えています。

今後の建設業界でのIT/AIの活用についての展望を教えてください。

稲垣:安全に関わるシステムで事故を撲滅することに挑戦した結果として、監督業務の削減・省人化にもつなげることができました。建設業は、属人的な仕事が多く効率化が難しい部分もあるのですが、自動化や工場化、スマート施工をめざすことで安全性を高めるために、ITやAIを活用していこうと考えています。ITやAIのプロフェッショナルで頼りになる企業である日立ソリューションズには、今後もいろいろと相談し、協創していきたいと思います。

相輪:今回は、画像判定AIを活用したソリューションを成功させることができました。今後も生成AIなどのさまざまな先端技術を使い、建設業界の方々のニーズを聞きながら現場に適用できるソリューションで支援していきたいと思います。

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