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2026.04.17

【5ステップで成長を加速する】
ABM(アカウントベースドマーケティング)導入ガイド

22回表示しました

多くの企業が、マーケティングオートメーション(MA)を導入し、リード獲得の効率化を進めてきました。しかし、「リードは増えたが、商談につながらない」「受注率が上がらない」といった課題に直面している担当者も少なくありません。

その解決策として、営業とマーケティングが連携し、優良顧客となり得る特定の企業にリソースを集中させるABM(アカウントベースドマーケティング)が注目されています。

本記事では、ABMの基礎概念から、従来のマーケティングとの違い、自社に導入して成果を出すための具体的なステップまでを解説します。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは

ABM(Account Based Marketing)とは、自社にとって価値の高い特定の企業(アカウント)をターゲットとして選定し、その企業に合わせた最適なアプローチを行うBtoBマーケティングの手法です。

従来のマーケティングが「広く網を投げて、多くの魚(リード)を捕る」漁法だとすれば、ABMは「狙った大物を一本釣りする」漁法にたとえられます。限られたリソースを、成果につながりやすい企業へと集中させる点が特徴です。

従来のマーケティングとABMの違い

ABMと従来のリードベースマーケティングを比べた場合、最大の違いはアプローチの「方向」と「対象」にあります。以下の表に主な違いをまとめました。

従来型とABMの違いまとめ
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従来のマーケティングでは、興味関心を示した「個人」のリードを育成し、確度が高まった段階で営業に引き渡します。一方、ABMでは最初からターゲットとする「企業」を定め、その企業内の複数のキーパーソンに対して、組織的かつ継続的なアプローチを行います。

ABMの3つのタイプ

ABMはターゲットとする企業の数と、アプローチの深さ(カスタマイズ度)によって以下の3つのタイプに分類されます。

ABMの3タイプ
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3タイプの詳細まとめ
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自社のリソースや狙いたい顧客層に合わせて、最適なタイプを選ぶことが重要です。

ABM導入のメリットとビジネスへの影響

ABMを導入する最大のメリットは、「成約確度の高いターゲット企業」にリソースを集中させ、営業効率の向上が期待できる点にあります。

従来のリードベースでは、確度の低い大量のリードにリソースを分散させてしまいがちでしたが、ABMでは「獲得すべき顧客」を絞り込むことで、コストを抑えつつ、一社あたりの受注単価を向上させることが可能です。

主要なKPIと測定方法

ABMの効果測定は「リード獲得数」中心の評価から、「ターゲット企業(アカウント)単位で進捗を追う」設計に切り替えることが基本です。たとえば、同じ確度の高いリードでも、ターゲット外の増加は成果に直結しないため、KPIは「どの企業と、どのレベルまで関係が進んでいるか」が把握できるものを軸にします。

ABMの測定基準まとめ
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ABM推進においては、これらのKPIをデータドリブンに可視化・分析する取り組みが欠かせません。

※1 「DMU」は「Decision Making Unit」の略。主にB2B(企業間取引)において、製品やサービスの導入を決定するプロセスに関与する「意思決定に関わる人や部署の集まり」を指す

ABMの効果

ABMを適切に実践することで、以下のような具体的な効果が期待できます。

ABMの効果とビジネスインパクトまとめ
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実際に、海外のある調査ではABM導入企業の99%が「従来施策より高いROI」を実感していると報告されています。(※2)

※2 ABM Won, But It's Not Done Changing The Game|Forrester

ABM実践のための5ステップ

ABM実践の5ステップ
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ABMを成功させるための具体的な5つのステップを解説します。

ステップ1:ターゲットアカウント(重点顧客)の特定と選定

ABMの第一歩であり、最も重要な工程が、自社にとって最も価値のある企業を見極める「ICP(Ideal Customer Profile:理想の顧客像)」の策定です。

「潜在的な取引規模(LTVの見込み)」や「自社の強みとの合致度」などの基準を設け、リソースを集中投下すべき企業を選定します。具体的には、過去の受注傾向や既存の優良顧客の共通点を分析し、以下のような指標でスコアリング(定量評価)を行います。

●企業属性:業種、従業員数、年商、拠点数など
●状況・ニーズ:導入済みの関連システム、中期経営計画での注力分野、直近の資金調達など

ここで重要なのは、アルゴリズムの完璧さを追求することではなく、「なぜこの企業をターゲットとするのか」について営業部門とマーケティング部門で合意形成を得ることです。社内で説明可能で、双方が納得できるルールで運用することが、その後の施策の推進力を左右します。

ステップ2:アカウントインサイトの収集と分析

ターゲットとして選定した企業に対し、表面的な属性だけでなく、経営課題や事業戦略に深く踏み込んだインサイトを収集します。

収集すべき情報は、大きく以下の3つの視点で整理します。

●企業・事業理解:IR情報、中期経営計画、有価証券報告書から、その企業が「今、どこに投資しようとしているか」を読み解く
●接点履歴の棚卸し:過去の商談履歴や名刺交換の有無、Webサイトへの来訪履歴を確認し、自社との「距離感」を把握する
●キーパーソンの特定:SNSでの発信やインタビュー記事などを通じ、決裁権を持つエグゼクティブだけでなく、実務の推進者(チャンピオン)や反対勢力など、DMU(意思決定ユニット)を組織図レベルで可視化する

ステップ3:パーソナライズドコンテンツの開発

ステップ2で得たインサイトに基づき、ターゲット企業の課題や業界動向に最適化されたコンテンツを作成します。ABMにおけるコンテンツは、単なる「製品紹介」ではなく、「その企業が抱える課題に対する解決策」である必要があります。

具体的には、以下のようにターゲットの深さに応じてカスタマイズのレベルを調整します。

●1:1(ワン・トゥ・ワン):特定企業専用の「個別診断レポート」や、その企業の役員のみを招いた「エグゼクティブ・セミナー」など、完全オーダーメイドの施策

●1:Few(ワン・トゥ・フュー):「〇〇業界向け生産性向上事例」や「××法改正への対応ガイド」など、ターゲット業界・共通課題に即したコンテンツ

また、同じ企業内でも、経営層には「ROIや経営インパクト」、現場担当者には「業務効率化や使い勝手」といった、役職(ペルソナ)ごとの関心事に合わせたメッセージの使い分けも有効です。企業の検討段階に合わせた複数のパターンを用意し、最適なタイミングで提供できる柔軟な体制を整えましょう。

ステップ4:マルチチャネルでのエンゲージメント戦略

ターゲット企業に対し、デジタルとアナログを組み合わせた複数のチャネルを連動させる「オーケストレーション(統合的な施策運用)」を行います。

ABMでは、特定のチャネルに依存せず、ターゲットの関心度に合わせて以下のような複合的なアプローチを展開します。

●デジタル施策:特定企業のIPアドレスを狙ったターゲティング広告、SNS等での役職者向け広告、パーソナライズされたメール配信
●アナログ施策:ターゲット企業の経営層へ向けた個別手紙(DM)、業界特化型セミナーへの招待、インサイドセールスによる戦略的なアウトバウンドコール

重要なのは、これらのチャネルを単発で運用せず、「同一アカウント(企業)を軸にデータを一元管理する」ことです。

自社サイトへの来訪履歴や広告への反応、セミナーでの発言内容などをMAやCRM(顧客管理システム)で統合し、「ターゲット企業の誰が、今どのフェーズにいるか」をリアルタイムで把握します。これにより、顧客体験を分断させることなく、最も熱量が高まった瞬間に最適なメッセージを届けることが可能になります。

ステップ5:測定と最適化

ステップ5では、KPIを定期的にモニタリングして施策の効果を検証します。アカウント単位で「どのコンテンツに反応したか」「どのチャネルが商談に寄与したか」を可視化し、成功パターンを特定します。

うまくいった施策は他のターゲット企業にも横展開し、効果が低かった施策は改善や見直しの判断をしましょう。ただし、多くの企業がこのステップでつまずきやすいのも事実です。

データは蓄積されるものの、「何をどう見ればよいのか」「どの数値が改善のサインなのか」が不明確なまま、十分活用されずに終わるケースも少なくありません。日立ソリューションズでは、こうしたデータ活用の課題に対し、KPIの設計から可視化、改善アクションの立案まで、一貫した伴走型支援を提供しています。

ABM実践に役立つテクノロジーとツール

ABMは個々の営業担当の経験や勘に依存するのではなく、組織横断でデータを活用しながら実行するマーケティング手法です。以下に紹介するような適切なテクノロジーの活用が成功の鍵を握ります。

MAとの連携

既存のMAツールはABMの実行基盤となりますが、従来の「リード(個人)管理」から「アカウント(企業)単位の管理」への抜本的な視点転換が必要です。

具体的には、以下の3つの機能的側面を重視します。

●L2A(Lead to Account)機能
散在する個人リードを、ドメインや社名をもとに自動で企業単位に紐付けるプロセスです。これにより、企業全体のエンゲージメントを可視化できます

●アカウントスコアリング
特定個人の行動だけでなく、「その企業から何人が、どの程度関心を示しているか」という組織全体の熱量を数値化します

●CRM(顧客関係管理システム)との連携
CRMとリアルタイムに同期し、営業とマーケティングが「ターゲットリストの進捗」を共通言語で議論できる環境を構築します

注意点として、汎用的なMAツールの中には、アカウント単位の管理機能が限定的なものも存在します。導入・運用にあたっては、自社のアカウント定義に合わせたスコアリングの柔軟性や、CRMとの双方向のデータ連携がスムーズか、といった「ABM要件」を事前に精査することが重要です。

データ活用とインテリジェンスツール

ABMの精度を飛躍的に高めるのが、MAツールに蓄積された自社データと、外部の「インテリジェンスツール」の組み合わせです。

●企業データベース(属性情報)の活用
企業情報プラットフォームを活用することで、自社リストにはないターゲット企業の詳細な属性(業種、売上、従業員数、さらには使用しているITツールなど)を補完できます。これにより、精度の高いターゲット選定(ICP策定)や、確度の高いアカウントスコアリングが可能になります

●インテントデータ(購買意欲を示す行動データ)の活用
サードパーティのインテントデータプロバイダーから提供される「購買予兆データ」を活用すれば、ターゲット企業が自社サイト外でどのようなキーワードを検索し、どの競合比較サイトを閲覧しているかを捕捉できます。「今まさに解決策を探している企業」をリアルタイムで特定できるため、競合他社に先んじた「先手」のアプローチが実現します

重要なのは、これらの膨大な外部データを、自社のCRM(顧客管理システム)とシームレスに紐付けることです。

ツール選定のポイント

ツール選定時には、自社のABMタイプ(1:1、1:Few、1:Many)に合わせた機能の優先順位づけが重要です。少数の企業を深く攻略する1:1型なら手動カスタマイズ性、大規模展開する1:Many型なら自動化機能を重視する、といった形です。

また、既存のMAやCRMとのAPI連携が可能か、導入コストに見合う効果が期待できるかを慎重に検討する必要があります。

なお日立ソリューションズでは、「デジタルマーケティング研究室」というメディアを通じて、「デジタルマーケティング」や「AI」をテーマに、最新トレンドや、各種調査レポート、日立ソリューションズが長年取り組んできたマーケティング支援事業の経験、ノウハウに基づく「デジタルマーケティング」への取組、研究成果など、お届けしています。企業のABM推進のための情報収集にぜひお役立てください。

日本企業におけるABM導入の現状と課題

日本企業、特に歴史ある大企業では、部門ごとの役割が明確な反面、組織が「縦割り」になりがちです。ABMを成功させるためには、高機能なツールの導入以上に、「組織の壁を越えた連携体制の構築」という変革が不可欠となります。

ABM導入に必要な組織変革

マーケティング部門が「リード数」、営業部門が「短期的な目標(個別の案件)」といったように、部門ごとに別々のKPIを追う状態は、ABMが適切に機能しない要因の一つです。ABMに必要な中長期的な関係構築が後回しにされてしまいます。

成功のためには、以下の3つの変革が必要です。

ABM導入に必要な3つの変革まとめ
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これらの変革は現場レベルだけでは実現が難しく、経営層が本気で取り組む姿勢と中長期的な視点が不可欠です。まずは小規模なパイロットプロジェクトから着手し、成果を示しながら段階的に組織全体へ展開していく方法が効果的です。

日本企業の成功事例

国内でも、組織の壁を乗り越えてABMで成果を出す事例が増えています。

たとえば、ある大手IT企業では、ABM戦略の一環として外部ツールを活用して大手企業開拓を強化しました。その結果、年商500億円以上の企業に対する商談設置率が1%向上、他のターゲットでもアポ率2%前後を安定的に維持、イベント誘致も前年比25%増を実現しています。

このように、営業とマーケティングが「同じデータを見て、同じ顧客を追いかける」体制を構築することで、ターゲットアカウントへの効果的なアプローチが可能になります

ABM導入のロードマップと始め方

BMは全社的な取り組みとなるため、段階的にスコープを広げていくことが成功のポイントです。

段階的な導入ステップ

期間を分けて3つのフェーズで段階的にABM導入を進めるとよいでしょう。

ABM導入の3ステップ
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ABM導入の3ステップの詳細まとめ
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各フェーズを次へ進める際は、「定量的指標」だけでなく「定性的合意」も基準にしましょう。例えば、フェーズ1では「ターゲット企業での商談発生」に加え、「営業部門がターゲットリストの質に納得しているか」を確認することが、その後の全社展開における摩擦を減らすポイントとなります。

少予算からのABM実践方法

「ABMには高価なツールが不可欠」と思われがちですが、本質はツールではなく「ターゲットに対する深い理解と最適な提案」にあります。予算が限られている場合は、以下の2つの工夫から着手することをおすすめします。

●ターゲット(ICP)を徹底的に絞り込む
リソースを分散させず、まずは「最重要の10社」だけに集中します。WebでのIR情報や中期経営計画、有価証券報告書を読み込み、「その企業の今の課題に、自社がどう貢献できるか」という仮説を手作業で構築します

●アナログなアプローチを厭わない
デジタル広告に予算を割く代わりに、キーパーソン宛の「直筆の手紙(パーソナライズド・レター)」や、送付後の丁寧なフォローコールなど、アナログだからこそ伝わる「特別な1社」としての敬意を形にします

重要なことはツールを入れること自体ではなく、「ターゲット企業を深く理解し、その企業のためだけの提案を行う」というABMの思想を実践することです。

まとめ:ABMで実現するマーケティングの未来

ABMは、単なるマーケティング手法の置き換えではなく、「営業とマーケティングが一体となって特定の顧客と中長期的な関係を築いていく」ための組織変革です。

従来の「数」を追うアプローチから、「質」と「関係性」を重視するアプローチへの転換は、LTVの向上や営業効率の改善といった本質的なビジネス成果をもたらします。そのためにはツール導入に先立ち、ターゲットアカウントの定義、部門横断でのKPI設計、データを活用した継続的な改善といった基盤づくりが欠かせません。

まずは既存顧客を分析し、自社にとっての「理想の顧客像」を明確にすることから始めてみてはいかがでしょうか。

日立ソリューションズでは、記事内で紹介しているソリューション以外にもさまざまな支援を行っていますので、以下もぜひご活用ください。

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