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持続可能な未来へつなぐ、先進的な取り組み

「ミャク市!」が描く
サーキュラーエコノミーの未来

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大阪・関西万博では、閉幕後に施設や資材や設備をリユースへとつなぐ「ミャク市!」を実施。パビリオンの1つ「クラゲ館」は広島県福山市に移築され、子どもたちの体験・学びの場として生まれ変わります。

※本記事は2026年10月に掲載されたものです。
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    大林 正樹 氏

    公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会 審議役

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    永野 一朗 氏

    大和ハウス工業株式会社
    ビジネス・ソリューション本部

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    手島 智幸 氏

    福山市 未来館設置準備室長

※所属は2026年9月時点の情報です。

「ミャク市!」の構想の背景や経緯を教えてください。

大林:2025年開催の大阪・関西万博では、数多くの施設や設備が建設されました。閉幕後は会場跡地を更地にして返却する取り決めとなっており、施設や設備の速やかな撤去が求められる中、膨大な量の産業廃棄物の発生が懸念されていました。そこで私たちは、閉幕後の施設・設備、什器・備品などを公募形式で出品し、次の担い手へと引き継ぐ仕組み「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」(以下、ミャク市!)の構想に至りました。これは、従来のリニアエコノミーから、廃棄物を極力出さずに資源を循環させるサーキュラーエコノミーへの転換をめざすものであり、万博の掲げる「未来社会の実験場」というコンセプトを体現しています。廃棄物削減の有効なアプローチとして「リユース」に着目し、再利用しやすい施設や設備、再利用を求めている市場等の情報を収集。その需要と供給をマッチングする仕組みの開発を進めました。

永野:大和ハウスグループは、100周年となる2055年に向けたロードマップでサーキュラーエコノミーを設定しており、持続的な資源循環の方法を模索してきました。万博においてもサーキュラーエコノミー実現のため、リユース可能な循環型建築として『いのちの遊び場 クラゲ館』(以下、クラゲ館)を施設提供させていただきました。さらに、この概念を大阪・関西万博の全体に広げ、「大阪・関西万博をサーキュラーエコノミー実現に向けた行動変容のきっかけにする」という構想を描きました。そして、大林さんらと共に協力いただけそうな企業様一社一社にお声がけし、週1回の定例会や勉強会を通じて仲間を増やしていったのです。

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"ミャク市!の成果を、循環型経済に向けた行動変容のきっかけに"
永野 一朗 氏

仕組みづくりからクラゲ館の移築までどう進んだのでしょうか。

大林:最大の課題は国内に施設や設備を扱えるプラットフォームが存在していないことでした。そこで、海外の先進事例を参考に大和ハウス工業と共にゼロから仕組みを構築していきました。「ミャク市!」の業務内容は、需要予測に始まり、解体・運搬・保管時の材料破損リスクの分析、広報活動まで多岐にわたります。それを支えたのが、IT、建設、リース、産業廃棄物処理、物流、印刷など、各業界の協賛企業によるコンソーシアムの組成でした。多様なパートナーとの連携こそが、事業推進の何よりの原動力となりました。リユース材を別の建物の構造材料として再利用するには法的なハードルもありましたが、国へ働きかけて許可を取得するなど、一つひとつの壁を粘り強く乗り越えていきました。

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"ミャク市!は 「建設業における資源循環への挑戦」"
大林 正樹 氏

手島:そうした取り組みがクラゲ館の移築という話につながりました。その前提には、福山市が進めている「(仮称)子ども未来館」事業があります。この事業を進めていく中でパビリオンリユースのことを知り、民間事業者や外部有識者の意見などを踏まえて検討した結果、クラゲ館のリユース公募に参加しました。

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旧福山市体育館跡地及び五本松公園内 施設配置等イメージ図
(提供:福山市)※今後変更の可能性があります

2029年度オープン予定の子ども未来館は、子どもたちが科学や技術に触れて、楽しく学び成長できる施設となります。移築されるクラゲ館の屋根は、子どもたちが自然の中で実験やワークショップを行う子ども未来館の屋外フィールドとして活用する計画です。しかも、福山市のシンボルである福山城には約400年前に京都の伏見城から移築された「伏見櫓」および「筋鉄御門」(いずれも重要文化財)が現存しています。福山市民には建造物の移築は歴史的にも親しみがある文化です。クラゲ館の移築も同様に愛着を持ってもらえると思っています。

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"クラゲ館での出会いが未来で活躍する子どもたちの礎になれば"
手島 智幸 氏

ミャク市!の意義と未来に向けた展望をお聞かせください。

手島:子ども未来館を訪れる子どもたちには、体験と学び、多様な人との交流を通じて、社会に関する疑問や課題を発見し、解決する力を育み、持続可能な未来社会の担い手として成長してほしいと願っています。循環型経済を地域社会に根づかせていくためには、私たち行政だけでなく、企業、教育機関、市民団体、地域住民の皆様などが、それぞれの強みを持ち寄りながら協創していくことが大切であると考えています。技術やノウハウの提供にとどまらず、子どもたちが実際に体験し学べる場づくりなど広い分野で積極的に参加してほしいと思います。

永野:ミャク市!の取り組みには、「大阪・関西万博レガシーの継承」と「循環型建築の成果を広く社会に発信すること」という2つの意義があります。特に後者は、事業主、設計者、施工者、メーカー、エンドユーザーなど建設に関わる多様なステークホルダーの意識と行動変容の促進につながることを期待しています。また、製品の持続可能性情報をデジタルで記録するデジタルマテリアルパスポート(DMP)と呼ばれるシステムを試験的に導入するなど、建設業の今後につながる試みも多数盛り込まれています。しかし、サーキュラーエコノミーは一朝一夕には実現し得ません。私たち企業も長期的視野を持って、事業としての社会実装をめざす姿勢が必要であると考えています。

大林:2024年8月にオープンしたミャク市!は徐々に注目度を高め、結果として多くの大阪・関西万博レガシーをリユース品として市中に還元することができ、廃棄物削減量で約6200トンに及びます。記録の詳細は、協会公式WEBサイトに「大阪・関西万博 サステナビリティレポート」を公表していますので、今後の類似事業の参考としてお役立ていただければ幸いです。

また、今回福山市に移築されるクラゲ館は施設規模も大きく、ミャク市!における象徴的な取り組みの1つといえます。福山市の子どもたちが大阪・関西万博レガシーに触れることで、この場所を起点に資源循環の輪が脈々と未来へと根づいていくことを心より願っています。

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背景の大きな木のあたりに、クラゲ館を移築予定

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エフピコアリーナふくやま(福山市総合体育館)にて撮影

▼大阪・関西万博サステナビリティレポートはこちら

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会期中のクラゲ館の全容
ⒸKURAGE Project & steAm, Inc.

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解体工事中のクラゲ館

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リユースのため解体される資材

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写真提供:公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会

編集部から

日立ソリューションズはパートナーとしてクラゲ館に協賛し大阪・関西万博に関わる中で、ミャク市!が掲げる価値の循環と継承の考え方に着目し、その理念に共感しました。大阪・関西万博で生まれた価値の継承はこれからが本番です。
ミャク市!やクラゲ館の移築は、サステナビリティを理念にとどめず、社会の仕組みとして実装する挑戦といえるでしょう。「つくって壊す」が当たり前だった建築やイベントのあり方も、「受け継ぎ、活かす」という価値観へ変わり始めています。こうした取り組みを支えるのはデジタル技術だけでなく、多様な企業や自治体、地域の人々による協創の力です。当社もその一員として、人と社会、未来をつなぐ価値創造に貢献していきます。

情報誌「プロワイズ」について

本記事は情報誌「プロワイズ」で掲載した記事の転載です。
日立ソリューションズでは、毎号さまざまな特集を組み、各界の第一線で活躍するゲストの提言や当社の取り組みなどを掲載する情報誌「プロワイズ」を、年4回発刊しています。旬なキーワードをテーマに、ビジネスに活かせる有用な情報から一息つけるコンテンツまで、幅広く無償でお届けしてまいります。
バックナンバーをデジタルブック形式、PDF形式でも公開しておりますので、ぜひご覧ください。
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