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「非財務」をいかに「財務」に結びつけていくか

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企業活動における「非財務」の重要性が年々高まっている。サステナビリティや、人的資本に代表される非財務領域に企業が取り組む意義について、サステナビリティ経営の専門家である中久保菜穂氏と日立ソリューションズCFOの秋山岳志が語り合った。

※本記事は2026年10月に掲載されたものです。
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    中久保 菜穂

    シェルパ・アンド・カンパニー 
    取締役・最高サステナビリティ責任者(CSuO)

    なかくぼ・なほ
    企業のサステナビリティ活動の高度化をテクノロジーで支援する「シェルパ・アンド・カンパニー」の取締役・最高サステナビリティ責任者(CSuO)。京都大学卒業。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学修士を取得。2024年11月より現職。

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    秋山 岳志

    株式会社日立ソリューションズ
    CFO

    あきやま・たけし
    1989年日立製作所入社。以来、一貫して財務領域に従事してきた。2024年より日立ソリューションズのCFOとして財務・調達部門を管掌し、財務戦略立案、コンプライアンス推進、投資案件評価、意思決定支援などを担当する他、アサーティブコミュニケーションの推進活動にも取り組んでいる。

財務と非財務のつながりをどう説明するか

秋山:私は財務関係の仕事を30年ほど続けてきました。ESGやサステナビリティなど、いわゆる非財務領域の取り組みの重要性が、ここ5年くらいの間に格段に増していると感じています。

中久保:これからの時代の投資には、環境(E)、社会(S)、企業統治(G)(※1)の観点が欠かせない。そうした投資に関するあり方が国際的に広がり始めたのは20年ほど前のことでした。それから徐々に企業活動におけるESGやサステナビリティの重要性が世の中に浸透してきました。そして、ここ5年ほどで、それらの取り組みが企業にとって必須であるという考え方が定着したと思います。

※1 ESG:Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取った略称

秋山:環境や社会へのアプローチだけでなく、人的資本なども非財務領域の重要な要素です。企業の非財務的活動が財務面に大きな影響を与えると考えられるようになっているわけですが、その結びつきを分かりやすく説明するのは簡単ではないと感じています。

中久保:重要なのは、財務と非財務の結びつきを「ストーリー」として示すことだと思います。結びつき方は、業種業態や企業ごとに異なります。自社にとってどのような非財務的要素が重要であり、それが企業の成長にどう関連するのか。それを経営陣がストーリーとしてしっかり語れることが大切です。

2027年3月期から、東証プライム市場で時価総額3兆円以上の企業を皮切りに、有価証券報告書でサステナビリティ関連情報の開示が義務化されます。それにより、様々な開示事例が示され、多くの企業がモデルケースとして参照できるようになるのではないでしょうか。

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秋山:社外のステークホルダーに向けたストーリーづくりはとても大切ですよね。もう1つ、私が重要な取り組みと考えているのが、非財務情報を正しく測定することです。財務情報は数値化できる定量情報なので、推移や傾向を可視化することができます。一方、非財務情報の中には、定量的に表せるものと、定性的にしか表現できないものがあります。定量化できる要素はしっかり定量化して、KPIを明確にしていくことが今後求められるようになると思います。KPIツリーをつくって、非財務の取り組みが財務面にどのようにつながっているかを視覚的に明らかにできれば理想的です。

中久保:例えば、CO2などの温室効果ガス(GHG)排出量、顧客満足度、商品やサービスのリピート率、社員のエンゲージメントなどは、非財務領域でも定量化できる項目です。KPIを定めて進捗をトレースすることは、とても大切な取り組みです。

非財務領域の重要性を社員に伝えていくために

秋山:一人ひとりの社員に非財務領域の取り組みの重要性を伝えていくことも大切であると私は考えています。非財務領域の中にはビジネスのパフォーマンスとして明確に表現できない要素も多いので、社員の納得感を醸成する工夫や努力が求められます。私は常々、「三現主義」を大切にしてきました。現場、現物、現実を見てあらゆる判断をしていくということです。非財務の重要性を社員に説明する場合も、働く現場やそれぞれの社員の思いを汲み取った上で、押しつけにならないようなコミュニケーションをしていく必要があると思っています。日立ソリューションズが全社的に進めているアサーティブコミュニケーション、つまり、相手の立場や考え方を尊重しながらメッセージを伝えるコミュニケーション手法も大いに役立つと考えています。

中久保:非財務領域の重要性を社員の皆さんにどう伝えていけばいいのか。その課題に悩まれている企業は少なくありません。意識変革のためのコミュニケーションに注力したり、社員向けのワークショップを実施したりするケースも着実に増えています。

私は社内の意識変革には、大きく2つのポイントがあると考えています。1つは、秋山さんがおっしゃるように現場の視点を大切にしながら、各現場の仕事がサステナビリティをはじめとする非財務領域にどう関連しているかを一つひとつ地道に示していくことです。それを踏まえて、非財務領域における業務ごとのKPIを設定することができれば、社内の意識変革や行動変容は大きく進むと思います。

もう1つは、非財務領域の重要性をパーパスに紐づけて訴求することです。企業のパーパスには多くの場合、非財務的価値が含まれています。そのパーパスとそれぞれの社員の皆さんの仕事や人生のパーパスのつながりが明確になれば、パーパスで言及されている非財務的価値を自分ごと化できるようになるはずです。

秋山:なるほど、パーパスという上位のレイヤーから非財務領域の大切さを説明するということですね。

中久保:そうです。それによって、非財務領域の取り組みが仕事のやりがいや自分の輝きにつながるという納得感が得られるのではないでしょうか。

秋山:私は、「組織文化」も非財務領域の重要な要素の1つであると思います。私が日立製作所から日立ソリューションズに移ったのは5年前でした。この会社に来て思ったのは、素晴らしい組織文化があるということでした。新しいことに着手する時のスピードが非常に速く、社員のチャレンジを応援するマインドがある。マネジメントクラスと現場の社員の双方向の対話が日常的に行われている。何かを進める時には、責任体制や期限をしっかり決めて、PDCAサイクルを回して改善を図る─。そんな組織文化です。日立ソリューションズの非財務領域の強みは何かと尋ねられたら、私はこの組織文化を真っ先に挙げたいと思っています。

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中久保:素晴らしいですね。組織文化も財務と非財務をつなぐストーリーの要素になることは間違いないと思います。もっとも、それを評価指標として可視化する際は、社員エンゲージメントや離職率などの数値として把握できるようにすることが必要です。それによって、測定や進捗の把握も可能になります。

秋山:おっしゃる通りですね。日立グループには社員エンゲージメントの測定ツールがあります。そのようなツールを非財務領域の可視化や定量化にどんどん活用していきたいと思います。

中長期的視点の大切さを広く伝えていきたい

秋山:財務領域と非財務領域を接続することのゴールは、企業価値を高めることです。では企業価値とは何か。その定義も会社によって異なりますよね。

中久保:企業価値を捉える際、時価総額やPBR(※2)などの指標が用いられる場合が多いですが、社会への影響までを含めて企業価値とする例もあります。大切なのは、ステークホルダーが「これがこの会社の価値だ」と納得できることです。

※2 PBR:「Price Book-value Ratio」の略で、日本語では 「株価純資産倍率」を意味する。
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秋山:「財務」と「非財務」と「企業価値」。その3つの要素をしっかり結びつけていくことが大切ですね。最後に、中久保さんがこれから挑戦していきたいことを教えていただけますか。

中久保:「財務と非財務の接続」の重要性を、より多くの企業や投資家に広めていくこと。その活動の継続が私の挑戦です。経済環境の不確実性が高まるほど、短期的な結果を求める傾向が強まりがちです。しかし、企業の持続的成長や価値向上には、中長期的な視点が欠かせません。非財務領域の取り組みの成果はすぐには表れませんが、短期的な財務指標への依存にはリスクがあります。企業が成長を続けるには、非財務領域の取り組みを将来の企業価値を生む「無形資産」の形成につながるものと捉え、財務成果へ接続していく視点が不可欠です。その考え方をもっと広めていきたいですね。

もう1つ、AIをはじめとするテクノロジーを活用したサステナビリティ経営支援にも注力していきます。当社は、企業のESG情報の収集・分析・開示活動の高度化をテクノロジーで支援する「SmartESG」というソリューションを提供しています。私自身も「AI×サステナビリティ」の領域で専門性をさらに高めていきたいと考えています。

秋山:「財務と非財務の接続」の重要性を広めていきたい──。その思いに大いに共感します。繰り返しになりますが、私のCFOとしての役割の1つは、その考え方を社内にしっかり根づかせることです。非財務領域における一人ひとりの日常の取り組みが財務的インパクトにつながる。その認識を多くの社員が持つことができれば、会社は間違いなく成長していくはずです。限られた時間の中で、CFOとしてやるべきことを全うしたい。そして、一人ひとりの社員の挑戦や成長が企業価値の向上につながるという好循環を、次の世代へしっかり引き継いでいきたい。それが私の思いです。

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情報誌「プロワイズ」について

本記事は情報誌「プロワイズ」で掲載した記事の転載です。
日立ソリューションズでは、毎号さまざまな特集を組み、各界の第一線で活躍するゲストの提言や当社の取り組みなどを掲載する情報誌「プロワイズ」を、年4回発刊しています。旬なキーワードをテーマに、ビジネスに活かせる有用な情報から一息つけるコンテンツまで、幅広く無償でお届けしてまいります。
バックナンバーをデジタルブック形式、PDF形式でも公開しておりますので、ぜひご覧ください。
https://future.hitachi-solutions.co.jp/series/about/prowise_digital/

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