18ホールを回り終えた後のスコアカードには、様々な情報が詰まっています。1日を振り返り分析すれば、自分の伸ばすべき長所や修正すべき課題が見えてくるはず。 自分の知識や情報を最大限に駆使するインテリジェンスにあふれたゴルフで、ベストスコア更新をめざすのが新シリーズのテーマ。そのために、まず「自分」を知ることから始めましょう!
白戸 由香
プロゴルファー
青森県南津軽郡出身。
日立ソフトウエア女子ソフトボール部で活躍した後、1993年にプロゴルファーへと転向。2014年のレジェンズツアー「シブヤカップ」で初優勝。17年には「ふくやカップマダムオープン」と「シブヤカップ」を制覇し、レジェンズツアー賞金女王に輝いている。レジェンズツアー6勝。日立ソリューションズ所属。22年に行われた「JLPGAレジェンズチャンピオンシップCHOFUカップ」でも最終日最終組を回り4位に入っている。
山本さん
ゴルフ歴30年(ベストスコア81)
2人の前に置かれたのは、1枚のスコアカード。今回、山本さんには直近のラウンドのスコアカードをお持ちいただきました。このスコアカードには、山本さんの日頃の悩みや思いが詰まっていました。コースへ出る前に、白戸プロにスコアカードの内容を分析していただき、レッスンのテーマを見つけていきます。
山本さん これは5日前にラウンドした時のスコアカードです。前半のアウトは終盤の8番でトリプルボギー、9番でダブルボギーの上がり。後半のインも、最終ホールの18番でダブルボギーをたたいてしまいました。大体、こういう傾向にありますね。
白戸プロ その理由は分かっているのですか?
山本さん はい。やはりスコアに対するこだわりというか、スコアを意識してしまうというのは、あります。
--確かにアウトも7番でバーディーを取られて、ここまで3オーバー。30台も出そうな調子だったのに、8番でトリプルボギー。もったいないですね。8番は何が起きたのですか?
山本さん ドライバーでOB です。スコアを気にし始めるとスコアが乱れるというパターンが多いです。スコアを意識してミスが出て、元に戻そうとして、さらにミスが出るという......。この時も「山ちゃん、調子いいね」と言われて「そういえば、そうだね」と言いながら崩れるパターンでした。
白戸プロ 調子の良かった人が崩れるケースを見ていると、それまで意識していなかったところに意識が行ってしまうことが原因である場合が多いです。例えばラウンド中に「随分トップの形が良くなったね」と褒められたのに、途端に調子が崩れてしまう。これはそれまで意識していなかったところに意識が行ってしまい、それまでの良い精神状態が保てなくなってしまったからです。
--難しいですね。どうしたらいいのでしょうか。
白戸プロ 自分が意識したことを、まず認めることです。「意識したな」と気づいて「OK、今意識したんだ。で、このホールをどうするか」と冷静に対応していくことが大事だと思います。悪くなると守ろうとする人が多いのですが、ゴルフは守りに入って、守れるものはほとんどないんです。守ろうとしてもっと悪くなる。
山本さん その結果、同じようなスコアになってしまうことは多いです。
白戸プロ それはプロでも同じで、例えばスタートから3連続バーディーで出たりすると、いつもと違う分、なんとなく居心地が悪い。その後ボギーが出ると、なんとなく安心したりする。
--結局、いつもよりいいスコアが出ている状態は、いつもいる心地よい場所ではないんですね。
結局スコアを伸ばしきれず、いつもの場所に戻ってしまう。でも本当は、いつもと違うところに行きたいんですよね。そのままいつもよりいいスコアを維持できれば、ベストスコアが出るわけですから。攻めることを恐れずにチャレンジすれば、成功することもあります。その積み重ねで、次の段階に進める。いいスコアを出したいという欲が出てミスが出ることもありますが、欲がなければうまくならないのも事実です。
【ドライバー】
ゴルフ仲間によれば、山本さんのドライバーは安定度抜群だとか。大きなミスは7番でのOB1発のみ。
【FW&UT】
3W・4W ・UT(23度)を使用。「パー5ではすべて使用して、11番でドライバーをチョロした時に1度」で計5回。
【ミドルアイアン】
この日はブルーティーから回ったので、ミドル(ホール)は400ヤード近かった」ため、ミドルアイアンの出番も多く6回。
【ショートアイアン&ウェッジ】
8番アイアンを135ヤードから125ヤードで使用する山本さん。これより短いクラブ(パターを除く)の使用頻度が31回と、全体の3割を超えることが明らかに。
【パター】
18ホールすべて2パットで収まれば36 パット。山本さんは3パットが一度もなく30パットと安定した数字でした。
【白戸プロの目】
山本さんのショットで、最も気になったのは、リリースが早すぎること。そのため球筋が不安定になっていました。その原因となっていたのが、アドレス。(写真1)では右肩が前に出て、ややクラブファーストになっていて、重心もかかと寄りになっていました。左足寄りだったボールの位置を中に入れハンドファースト気味にして、重心も土踏まず方向に移動したことで、スイングも安定しました(写真2)
【白戸プロの目】
山本さんのスイングは、リリースが速いためクラブが最下点を迎える前にボールとコンタクトしていました。スイング中にはフライングエルボー気味にもなり、(写真3)のように右脇が開いていました。
手首が早くほどけてしまうことを予防する対策としては、切り返してきてから右肘を右腰に近づけるように下ろしてくるドリルが有効です(写真4)。そうすると軌道から外れずにインパクトを迎えることができます。
【白戸プロの目】
山本さんのアドレスで気になるのは重心がかかと寄りにあり、猫背のようなアドレスになっていること(写真5)。 矯正の方法はまず真っすぐに立ち、両足の付け根を折って前傾。倒れそうになるところで膝を軽く曲げます(写真6)。こうすれば重心もかかとから前方に移動し、安定したアドレスが出来上がります。
【山本さんのお悩み】
100ヤード以内のショットで95ヤード残った時には多分PWを持ってコントロールする方がいいのでしょうが、52度のフルショットを選択して失敗することが多いんです。自分では100ヤード、十分いくと思っているのですが、キッチリ当たっていないのだと思います。
【白戸プロのまとめ】
52度のフルショットでミスする原因がアドレスにあったことは、練習場でのレッスンでお分かりいただけたと思います。山本さんの場合はボールの位置が左足寄りにあり、重心がかかと寄り。さらに右脇が開いて下りてくるため、スイングの最下点が来る前にボールとコンタクトしてしまい、不安定なショットの原因となっていました。
ボールを少し中に入れ、かかとから前方寄りに重心も移動。切り返し後に右腰と右ひじを近づける動きを心がけることにより、スイングが軌道から外れることのないように修正しました。
しっかりとボールを捉えることができれば3本のウェッジすべてに確実性が増します。有効に活用できれば、100ヤード以内のスコアは確実に良くなるはずです。
より良い社会、より良い未来を創ることをめざしたSDGsの17の目標と169のターゲットに、ゴルフ界が取り組める課題はいくつもあります。それはゴルフとSDGsの相性がいいことの証明。その理由を、今回から掘り下げていきます。第1回は山梨県北杜市と兵庫県川西市で始まった、ゴルフで健康長寿を実現する試みをお届けします。
「IKIGAI」のある日本人は、健康長寿。海外から注目を集めている日本発のデータを、逆輸入する形で健康長寿社会をつくる取り組みが山梨県北杜市でスタートしています。
名つけて「IKIGAIプロジェクト」。仲間とゴルフで競い合い、ゴルフを続けたいから健康維持に取り組む。その先に見えてくるのが、超高齢社会・ニッポンのめざす理想の形。その旗振り役の育成をめざす「IKIGAI CUP」が、2022年9月14・15日に小淵沢カントリークラブで開催されました。
かつて東北大学が出した『生きがいを持つ人が、健康長寿になる』というデータ。これを米ハーバード大学をはじめ、多くの機関が取り上げ、海外で大きな注目を集めたといいます。
これに着目したのが、大会を主催するシミックホールディングスの中村和男CEO。「その生きがいの要素ですが、1番に挙げられるのが社会との関わり。2番目が自分の好きなこと。それから3番目は得意なことで対価が得られること。ゴルフが持つ要素にぴったり当てはまります。人と関わりつつ、自分の好きなゴルフを通して勝負も楽しめる。人はそのために健康長寿になろうとして、様々な努力をします。ゴルフは健康長寿社会の実現に貢献できるのです」。
これはSDGsの「目標3 すべての人に健康と福祉を」にも当てはまります。
そこで最初の試みとなるゴルフイベントが、9月14日に開催されました。女子プロゴルファーをめざす39人の選手が参加。18ホールでは決着せず6ホールに及ぶプレーオフの末、飛田愛理選手が優勝しました。「たとえプロになれなくても、ゴルフの素晴らしさを伝える伝道師になってほしい」と中村CEOは話していました。
優勝した飛田選手は、馬車に乗り周囲の祝福に応えながら表彰会場に向かった
39人の選手たち。ゴルフの伝道師の役割も期待されている(前列中央が中村CEO)
団塊の世代が後期高齢者となる2025年が近づく中、盛んに語られるようになってきたのが「フレイル・サイクル」という言葉です。これは加齢とともに外出機会が減り筋肉量などが低下し、運動不足となることで食欲の低下を呼び、栄養不足などにより要介護状態へと移行する悪循環のこと。これを防ぐには悪循環を早期に断ち切ることが重要になります。
この問題に積極的な取り組みを見せているのが兵庫県川西市の複合スポーツレジャー施設「多田ハイグリーン」。SDGsの「目標3 すべての人に健康と福祉を」の実現に向け、運動不足・コミュニケーション不足に陥りがちな高齢者に、外出機会を生み相互扶助を促進する新たな健康福祉サービス「NAGOMIイベント×サークル」をスタートさせました。
「走るデパ地下!」の移動販売や「ストレス発散!おとなの発声講座」「パソコン講座(年賀状を作ろう!)」などのイベントや、ウクレレ、ゴルフ、囲碁、将棋などのサークルで、交流し活動することが可能になりました。
ゴルフ場や練習場もまた、地域住民との密接な関係を構築していくことが重要。ゴルフの魅力は、フレイル・サイクルを予防する大きな武器となりそうです。
楽しいイベントやサークルが行われる「NAGOMI」。高齢者には健康習慣と相互扶助体制が提供される魅力的な場所となりそう