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【対談】競争力の源泉としてのサステナビリティ

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幼少期に米国生活を体験し、現在は経済キャスターやモデレーターとして活躍している瀧口友里奈氏と、昨年までHitachi Solutions Americaの取締役会長、CEOを務めた森田英嗣。「情報」「コミュニケーション」「サステナビリティ」「AI」などのテーマを巡って2人が語り合った。

※本記事は2023年7月に掲載されたものです。
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    瀧口 友里奈

    経済キャスター/東京大学工学部アドバイザリーボード/新生銀行 社外取締役

    たきぐち・ゆりな/1987年神奈川県生まれ。
    東京大学文学部卒。大学在学中にセント・フォースに所属。以来、経済分野を中心にキャスターとして活躍し、"難しいテーマだいたい司会する人"と言われる。
    SBI新生銀行社外取締役。グローブエイト代表取締役。東京大学工学部 アドバイザリーボードメンバー。東京大学公共政策大学院在学中。

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    森田 英嗣

    日立ソリューションズ
    取締役 専務執行役員

    もりた・ひでじ/1962年兵庫県生まれ。
    85年日立製作所入社。情報・通信システムグループの事業部長などを経て2016年、日立ソリューションズ執行役員に就任。19年よりHitachi Solutions America取締役会長兼CEO。23年より日立ソリューションズ取締役専務執行役員。

情報によって多くの人をエンパワーしたい

森田:私は入社してから、2回ほど海外での勤務を経験しました。ここ最近も、4年間ほど米国現地法人で働いていました。瀧口さんも米国で過ごされていた時期があるそうですね。

瀧口:小学2年生から4年生までの3年間、米国の学校に通いました。海外でいろいろな情報に触れた経験が、今の自分に大きな影響を与えていると思います。キャスターという仕事を通じて私がめざしているのは、情報によって個をエンパワーし、社会全体のイノベーションを加速する活力を生み出す助けとなることです。例えば、日頃の生活の中でつらいことや悲しいことがあっても、幅広い情報に触れることができれば、自分が生きている場所だけが世界のすべてではないと思えることもあるのではないでしょうか。まさに私の人生がそうでした。情報には人や社会を変える力があります。その力を多くの人に届けていきたいという思いが私の一番のモチベーションになっています。

森田:キャスターやモデレーターのお仕事の中で、特に大切にされているのはどのようなことですか。

瀧口:私自身が知りたいことよりも、テレビを見ている方々や、その場にいらっしゃるオーディエンスの皆さんが何を知りたいと思っているかを重視することです。

森田:情報を伝える相手のことをしっかり意識するということですね。とても共感できる考え方です。私たちの場合、例えばお客様に向けて提案書を書く際には、それをご覧になる方はどのような立場で、どのような専門性をお持ちかということを常に考慮しなければなりません。技術系の会社は、どうしてもテクノロジーやプロダクトを中心にものごとを考えがちになりますが、それ以前に、その価値を誰に届けようとしているのかを意識すること、それが何より大事だと思っています。

「新しい答え」を見いだすための議論を

森田:瀧口さんは、現在も海外の方々とお仕事をする機会が多いと思います。そこで学ばれることもいろいろあるのではないでしょうか。

瀧口:よく感じるのは、特に欧米の人たちはルールメイキングが巧みだということです。国際会議でテーブルごとに自由に議論をする際、欧米の方々がいち早く議論のフレームワークを提示してその場の"ルール"をつくり、議論をリードしていった姿が印象的でした。日本人は和を重んじて、場の雰囲気を見ながら徐々に意見をまとめていく傾向がありますよね。それも一つの美徳だとは思うのですが、スピードという点ではどうしても欧米の人たちに後れをとってしまうことがあるのではないでしょうか。

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森田:欧米企業では、決めごとをする場合、議題の項目やテーマごとの決裁者を明確にするケースがよく見られます。「オーソリティマトリクス」と呼ばれる考え方です。いわば議論のインフラができているので、話し合いとその後の意思決定がとても早いわけです。

瀧口:その考え方は議論がスピードアップしそうですね。激変している社会環境に対応していくには、新しいルールを迅速につくることが求められます。特にサステナビリティやダイバーシティ&インクルージョンなどの領域では、企業ごとに独自のルールを整備していかなければならなくなっています。これまでは、どこかにすでに答えがあって、それを見つけていくというのが一般的な発想でした。しかし、これからの時代には、いろいろなステークホルダーと話し合いながら、新しい答えをスピーディーに見つけていくことが大切になると思います。

森田:その点でも、議論と意思決定の重要性がますます高まっていきそうですよね。

瀧口:本当にそう思います。企業によってパーパスやミッションは異なるので、必要とされる答えは企業ごとに異なります。これは個人や国全体にも言えると思うんです。サステナビリティを実現するために国としてどうしていくべきか。企業はどう動くべきか。個人は何を大切にするべきか―。そのそれぞれの答えを見つけていく議論や考察が求められているのだと思います。

先端技術をウェルビーイングにつなげる道筋をつくる

森田:私たちがサステナビリティ経営を推進するに当たって重視しているのは、多様なステークホルダーの理解と共感を獲得し、協創をベースにした事業活動を行っていくことです。また、企業活動の持続可能性という観点から見れば、社員がいきいきと働くことができたり、自分の仕事に誇りを持ったりできる社内環境をつくることもとても大切であると考えています。

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瀧口:ESGのS、つまりソーシャルに当たる部分ですよね。私も、社員の皆さんのモチベーションはサステナビリティに大いに関係してくると思います。「個」が強くなっている現代では、「その企業を通じてどうやって社会に貢献できるか」という視点で働く会社を選ぶ人も増えています。個人と社会の間に企業があるというイメージです。社会に貢献したいという社員のモチベーションと企業のパーパスやミッションがうまく合致して、一人ひとりの社員の皆さんが誇りを持って働くことができれば、その企業の持続可能性は確実に高まるはずです。

森田:「人」を軸としたサステナビリティの取り組みが持続可能性を高め、企業の競争力の源泉になるということなのでしょうね。例えば私たちは、社内で起業人財を育成する取り組みをはじめています。専門知識を身につけてもらい、スタートアップの立ち上げを支援し、起業後もセーフティネットを提供する。そんな取り組みです。また、早稲田大学と協定を結び、大学に講座を設けてセキュリティ人財を育成する活動も行っています。企業によってサステナビリティの取り組みの在り方は異なりますが、私たちは私たちならではのやり方でサステナビリティを推進していこうと思っています。

瀧口:自分たちの得意な分野でサステナビリティに取り組むということすよね。そうやって独自の活動をして、それを社会にアピールしていくことによって優秀な人財が集まり、社会における企業価値を高めることにもつながると思います。

森田:瀧口さんはキャスターの他に、企業の社外取締役や、ご自身の会社の経営、大学院での研究など多彩に活躍されています。これからはどのようなことに注力していきたいとお考えですか。

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瀧口:経済キャスターとして、一見難しく感じられるような情報を分かりやすく多くの方々に伝えていくこと。この軸をこれからも大切にしていきたいです。この仕事を通じて、世の中のイノベーションをいっそう後押ししていけたらと思っています。メディアにはアジェンダセッティング、つまり今何が社会の課題となっていて注目すべきかを明確にして発信していくという重要な役割がありますが、私もメディアの人間の端くれとしてそのような役割を少しでも担えたらと思っています。今興味があるのは、話題を集めている生成AIです。この技術はものすごいスピードで進化していますが、これをどう活用していくべきかという点で、まだ社会的な合意は形成されていません。

森田:AIをはじめとする先端テクノロジー活用の社会的ルール整備は、まさに喫緊の課題になっています。瀧口さんのようなアカデミアに関わっていらっしゃる方々が方向性を示すことはもちろん重要ですし、一方でそれぞれの企業がルールをつくっていくことも大切です。日立製作所はAI倫理原則をつくっています※が、このような動きは今後どんどん広がっていくと思います。

※2021年に日立製作所が社会イノベーション事業における「AI倫理原則」を策定

瀧口:個人の視点に立ってみると、AIによって自分のキャリアがおびやかされるのではないかと考えている人も増えています。人間のキャリアやウェルビーイングに反するような形ではないAIの使い方を社会全体で考えていく必要がありますよね。

森田:AIによって効率化を進め、仕事の生産性を上げることが、個人のウェルビーイングにつながるー。そのような道筋をつくっていくことが、まさしく技術系企業である私たちの使命だと思います。

瀧口:AIと共存しながらよりよい社会をつくっていくこともまた、社会のサステナビリティにつながる視点といえると思います。欧米に学ぶ点も多々ありますが、和を貴ぶ日本人だからこそ見いだせる答えもあるはずです。私自身、「こんな社会にしていきたいね」ということを活発に議論し合える場を、様々な活動を通じてつくっていけたらなと思っています。

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