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【対談】よりよい未来に向かうための挑戦

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2023年にNHKを離れ、現在は民放の朝の情報番組で活躍している武田真一氏。50代半ばで第2の人生に乗り出した武田氏と、60代で日立ソリューションズの社長に就任した山本二雄が考える「挑戦」の意義とは。

※本記事は2024年4月に掲載されたものです。
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    武田 真一

    フリーアナウンサー

    たけた・しんいち/
    1990年にNHKに入社し、『NHKニュース7』などのメインキャスターを務める。2023年2月に独立してフリーに。現在は『DayDay.』(日本テレビ系)に司会として出演中。

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    山本 二雄

    株式会社日立ソリューションズ
    代表取締役 取締役社長

    やまもと・つぎお/
    1978年に日立製作所入社。金融システム事業部長、執行役常務金融ビジネスユニットCEOなどを経て、2021年4月に日立ソリューションズの代表取締役取締役社長に就任。

山本:武田さんがNHKを辞めてフリーになられたのは、2023年の2月だそうですね。働き方はずいぶん変わりましたか。

武田:現在は民放の帯番組の司会をやらせていただいていますが、「テレビ番組をつくる」という点では大きな違いはありません。とはいえ、勉強しなければならないことが多いのも確かです。タレントの皆さんとアドリブで会話をする場面や、気の利いたコメントを言わなければならない場面がよくあって、そのたびにどうすればいいか考えています。「この年齢になってこんなに成長を求められるんだ」という驚きがありましたね。

山本:独立された時はおいくつだったのですか。

武田:55歳です。

山本:私がこの会社の社長になったのは61歳の時でした。武田さんのようにそれまで働いていた会社を飛び出したわけではありませんが、私にとっても社長就任は大きなチャレンジでした。日立ソリューションズに来て私が強く感じたのは、この会社にはまさしく「挑戦する文化」があるということです。その文化に感化されて、私も今まで以上にいろいろなことに挑戦しなければならないと思いました。武田さんが50代半ばでフリーに挑戦しようと考えた理由は何だったのですか。

武田:一般企業の定年は60歳です。そこまで残り数年となった時に、ふと「旅がこのまま終わってしまうのは寂しい」という気持ちになりました。アナウンサーとして放送の現場に30年以上携わってきたことは、僕にとって一つの長い旅でした。その終わりが見えてきたわけです。でも、僕は旅を終わらせたくないと思いました。いつまで続く旅かも、目的地がどこかも分からないけれど、この旅をもっと続けたい。そう考えたことが独立を決めた一番の理由です。晴れ晴れした気持ちで、楽しく仕事をさせていただいています。

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「想い」と「ビジョン」をいかに融合させるか

山本:社長に就任してめざしたのは、日立ソリューションズを社会や地球の未来を創っていく会社にすることでした。そのためには社員一人ひとりが未来に向かって挑戦するマインドを磨いていくこと、そして未来に向かう想いを共有していくことが必要だと考えました。社員が想いを一つにするためには、コミュニケーションをフラットにしていかなければなりません。経営幹部と社員が顔を合わす機会があまりなく、それぞれの距離感が遠い会社であってはいけない。マネジメントを担う人たちと現場で働く人たちが日常的に対話をし、それぞれの意見を交換し合うことで、想いは一つになっていく。そう私は考えました。まだまだ道半ばですが、想いの共有は着実に進んでいるという実感があります。

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武田:テレビ番組づくりでも、全く同じことが言えます。番組はたくさんのスタッフが力を合わせてつくるものです。すべてのスタッフの想いが一つになった時に、本当にいい番組ができると僕は思っています。報道であれば、現場に一番近いところにいる記者やディレクター、映像を撮影したカメラマン、映像の編集者、台本の執筆者、そしてニュースを伝えるアナウンサー──。そのそれぞれがフラットに対話をして、互いの感動や熱量を共有できた時に、つくり手の想いは確実に視聴者の皆さんに伝わるはずです。その一方で、放送局や番組には大きなビジョンがあります。何のために番組をつくるのか。この番組で何を訴えたいのか。そんなビジョンです。スタッフ一人ひとりの想いと、局や番組のビジョン。その両方がうまく融合することによって、放送は成功すると僕は思うんです。

山本:「想いとビジョンの融合」というのは非常に重要な視点だと思います。私たちは23年、「ミッション・ビジョン・バリュー」を含むコーポレートフィロソフィーを刷新しました。これは、22年からスタートしたSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)プロジェクトの一環の取り組みです。このプロジェクトでは、若手社員が中心となって、新しい企業理念、経営ビジョン、大切にする価値などを考えてもらいました。未来を背負っていく若い人たちの想いから生まれるアイデアこそが大切であると考えたからです。

武田:NHKにいた頃、仕事にあまり充実感を感じられないといった若手職員の声を何度か耳にしました。話を聞いてみると、僕たちが若かった頃に比べて、先行きに不安を感じて仕事に集中できない人が少なくないことが分かりました。組織や地球環境のサステナビリティ、経済、子育て、社会保障――。そういったことに多くの若者が不安を感じているわけです。若い人たちにそのような不安を背負わせてしまったのは、上の世代の責任でもあると思うんです。だから上の世代に属する僕たちは、積極的に若い世代の皆さんと対話をして、社会をより良くしていく道筋をともにつくっていかなければならないと強く感じました。日立ソリューションズが取り組んできたプロジェクトは、まさしく若い世代の皆さんと一緒に未来への道筋をつくっていくための挑戦なのだと思います。

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対話の楽しさを大切にしたい

山本:私を含め、年配者には成功体験があります。しかしその体験に基づいた決定はしばしば誤ることもあります。なぜなら、私たちが成功体験をした時代とは環境が大きく変わっているからです。だからこそ、経営者やリーダーは、いろいろな人と対話をし、多様な意見を聞きながら、今の時代に合った意思決定をしていく必要があるのだと思います。

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武田:おっしゃる通りですね。僕が番組づくりでずっと心がけてきたのは、現場に近い人たちの言葉に耳を傾けて、この企画のどこに面白さを感じているのか、どうしてこの企画をやりたいと思ったかということをしっかり受け止めることでした。そのような対話があるのとないのとでは、情報の伝え方が大きく変わるからです。僕は、立場の異なる人同士の対話は基本的に楽しいものだと思うんです。意見の違いがあったとしても、それを受け止めて、自分の意見も丁寧に伝えていく。その結果、お互いに新たな発見が得られる。そんなやりとりの楽しさを大事にしたいといつも思っています。もっとも、最近は仕事の効率性が重視されるあまり、コミュニケーションの時間が減る傾向にあります。そういう時に力を発揮するのがITだと思います。テクノロジーを上手に使って仕事の効率を上げ、そこで生まれた時間でいろいろな人と対話をしていく。それが理想的な在り方ではないでしょうか。

山本:これからどんな仕事をやっていきたいとお考えですか。

武田:まずは、現在出演している情報番組に全力を傾けたいと思っています。その上で余力があったら、フリーの立場を活かして、できるだけ自由な発想で動いてみたいですね。僕は以前、災害報道に携わってきましたが、現在の立場ならば、番組の取材ということではなくても、地震などの被災地に足を運んで、現地の方々のご支援をしたり、お話をしたりすることができるはずです。フリーならではのフットワークの軽さを大切にしていきたいですね。

山本:「旅を続けたい」というお話がありました。武田さんの旅はどこに向かっているのでしょうか。

武田:見通しは全くありません。それがいいと思っています。フリーになって良かったことの一つは、これからどうなるか分からないので、先々のことを考えても仕方がないと思えるようになったことです。旅は続けるけれど、どこに向かうかは分からない。ただあてのない旅を続けていきたい。それが僕の今の率直な心境です。その旅の中で、これまでお会いできなかったような方々とお会いして、いろいろなつながりをつくっていければと思っています。

山本:今日の私と武田さんの出会いも、まさに一つのつながりですよね。私たちが手がけているITは、人と人、人とモノをつなげる技術です。技術の力でいろいろなものをつなげていくことが大切です。しかし、技術だけで本当のつながりをつくることはできません。大切なのは「お節介」の気持ちだと私は考えています。相手の迷惑にならない程度のちょっとしたお節介は、人と人をつなげる力になります。お節介とはすなわち「利他」ということです。利他の気持ちや行動と、それを支えるテクノロジー。その両方があって初めて本当のつながりが生まれるのだと思います。そんなつながりをつくっていくことが、これからの私の挑戦になりそうです。

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