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2023.09.15

座談会【メドトロニック×日立ソリューションズ】
独創の視点で拓いた、
ヘルスケアテクノロジーの新しい可能性

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日本メドトロニック株式会社(以下、メドトロニック)は、1975年、米国メドトロニックの日本法人の一つとして設立されました。米国メドトロニックは、1957年に世界初の電池式ペースメーカーを開発し、その後も多数のイノベーティブな医療機器を生み出してきました。世界150カ国で事業を展開する、ヘルスケアテクノロジーのグローバルリーディングカンパニーです。近年、日本では地域医療を支える医師や看護師の業務量の増加が深刻化する中、新しい医療機器の使用方法などの学習をもっと効率的に行いたいというニーズが高まっています。解決の突破口を拓いたのは、現場を知り尽くしたスペシャリストの独創的な発想でした。株式会社日立ソリューションズ(以下、日立ソリューションズ)との協創から生まれた「HoloMe(呼称:ホロミー)」は、熟練看護師の目線の動きをMixed Reality(複合現実、以下MR)技術により可視化できるようにしたトレーニングツールです。最新のテクノロジーを活用したソリューションのその先に、医療現場が求める新たな地平が見えてきました。

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    三浦 里美

    メドトロニックソファモアダネック株式会社
    東京支店 SPINE事業部 東日本営業部
    シニアクリニカルスペシャリスト/看護師

    脊椎手術領域の機器を扱う部門に所属。主に営業戦略サポートや顧客イベントの企画・実施する業務に従事。

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    長谷川 佳苗

    日本メドトロニック株式会社
    CST Training & Education Sr Training/Education Specialist

    脊椎手術領域の機器を扱う部門に所属。医師の製品の安全使用を目的としたトレーニングを開発・提供する業務に従事。

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    八巻 美紀代

    株式会社日立ソリューションズ
    産業イノベーション事業部 グローバル本部 グローバル推進センタ
    技師/ 経済産業省認定 ITストラテジスト

    マイクロソフトのMR技術を含む Dynamics 365 を中心としたDX推進の提案およびプロモーション活動に従事。

グローバルで、ヘルスケアテクノロジーのイノベーションを牽引

ーメドトロニックさまの事業に対する姿勢についてお聞かせください。

長谷川: 私たちのミッションは、「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し生命を延ばすこと」です。9万5千人を超える世界150ヵ国のメドトロニックの社員は、60年以上にわたって、このミッションの遂行をめざし、思いを一つに業務にあたってきました。
私たちは、治療後の患者さんのアウトカムを向上させ、QOL(Quality of life)の改善につながるイノベーションに取り組むことで、人類の福祉に貢献できると信じています。現在、年間で世界中の7,600万人以上の患者さんの健康回復に寄与していますが、この影響力をもっと大きなものにしたいと思っています。
そのためには、当社のタグライン(※1)である「Engineering the extraordinary」が示すように、「エンジニアのマインドを持って想像を超えるものを創り出す」ことが大切です。
1957年、創業者であるアール・バッケンが、世界で初めて電池式のペースメーカーを開発したのは、要請を受けてからわずか4週間後のことでした。メドトロニックはこのときのように、社員の誰もが職種や肩書に関わらず、スピーディーにイノベーションを起し、世の中の健康に関連する課題解決へと取り組むことで、メドテック(※2)のリーディングカンパニーとして人々の生活の改善に貢献していくことをめざしています。こうした決意が込められた「Engineering the extraordinary」は、ミッションと同様、私たちの重要な指針になっています。

※1:価値や思いを表したメッセージ
※2:メディカル(medical)とテクノロジー(technology)を組み合わせた言葉
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手術室における熟練看護師の目線をアイトラッキングで学ぶという発想

ー今回のトレーニングツールの開発に至った経緯はどのようなものだったのでしょうか?

三浦:私たちは日々新しい医療機器を開発していますが、それらを医療従事者に安全に、かつ適正に使っていただくためのトレーニングにも注力しています。
医療現場に伺うたびに、医師や看護師の労働量の増加や、患者さん一人にかけられるリソース不足といった現状を目の当たりにし、日本の地域医療が抱える課題の深刻さを痛感していました。 
一方で、医療技術の高度化は進んでいます。医療従事者は多忙な日常業務の合間に、新しい機器の使い方を習得しなくてはなりません。従来、直接サポートしてきたのですが、この数年間は新型コロナウイルス感染症の拡大により、そうした機会も失われてしまいました。
今までとは根本的に違った形で、効率的にトレーニングをサポートするツールの開発は急務だったのです。

長谷川:最前線のニーズを敏感にとらえるためには、医療現場に精通したスタッフの視点は欠かせません。三浦には、手術室看護師としての実務経験があります。その実体験にもとづく、当事者目線での「気づき」があったことが、今回のソリューション「HoloMe」開発が成功した要因の一つだと思っています。

三浦:熟練看護師が非熟練看護師を指導し、独り立ちさせるまでには膨大な時間が必要です。
特に、的確で素早い組み立てや操作が求められる手術室での「器械出し業務」(※3)には、機器の使用方法を熟知した高度な技術が求められます。
熟練看護師の"目線"と手元に注目したのは、かつて自分が手術室看護師として働いていたときの経験からです。目線をトレーニングに活かすことができれば、効率的な学習につながるのではないかと考えました。
そこで参考にしたのが趣味でよくみるゲームの実況動画です。手元をワイプで表示するなど、上級者の目線を伝える手段としてアイトラッキングが使われていることにヒントを得て、「これだ!」と思いました。

※3:手術がスムーズに進行するように器材等の準備や適切な手渡しと受け取りなどを行い、術者を介助する業務
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何度も現場に足を運び、ホログラムを使った看護師のトレーニングツールを開発

ー日立ソリューションズを協創のパートナーに選んだ決め手をお聞かせください。

長谷川:今までは、医療従事者が抱える課題に寄り添う形で、医療機器やソリューションを提供してきました。最近では、患者さんのアウトカム向上をめざし、より積極的にイノベーションにつなげる取り組みを進めています。そのためには、私たち単独では限界があります。思いを共有できるパートナーとの協創を常に模索するようになりました。
今回の協創は、日立ソリューションズがアイトラッキングの優れた技術を持っている点に注目したことからはじまりました。
実際に協創を進めていく中で、医療に向き合う謙虚な姿勢に接し、安心してお任せすることができました。
医療は、思い込みや知ったつもりが取り返しのつかないミスにつながる世界です。その点、日立ソリューションズは、蓄積された知識や経験だけで判断せず、何度も現場に足を運びながら確認をしてくれました。こうした仕事への真摯な取り組みが信頼を深める結果につながりました。

ー医療現場用の教材にMR技術を導入することで特に留意した点、苦労したことはありますか?

長谷川:私たちメドトロニックにとっては、今回が、MR技術を取り入れる初めてのチャレンジになりました。
看護師とのラウンドテーブルの場を何度も持ち、MRグラスを実際に装着してもらって話を聞きました。医療現場で使う際にはどんな工夫が必要か、見え方や機能はどうすれば使いやすくなるかといった点についてです。
最初は、ホログラムが見えることにカルチャーショック的なものを感じた方もいたようですが、わずかな時間で空中での操作が一人でできるようになりました。異なる幅広い年代の看護師が、意外なほど容易に使いこなしているようすをみて汎用性の高さを実感しました。

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八巻:見えないものを可視化したり、その空間には実際にないものを表示したりするといった本来のMR技術面での苦労は特にありませんでした。
アイデアは常にお客さまのニーズの中から生まれるものです。今回は、ユニークなアイデアにめぐりあえたことで、医療現場への貢献につながる斬新なツールの開発に携われたことをうれしく思っています。

長谷川:開発にあたっては、日立ソリューションズにさまざまなリクエストをさせていただきました。
まず一つ目は、オフラインで利用できるという点です。全国どこでも、ネットワーク環境に左右されない使用を可能にするためです。
二つ目は、実際のアプリの見え方の部分です。医療機器そのものが複雑化・高度化している中で、それをサポートするためのツールの操作が難しいものであってはなりません。ここを触ったら次に進むというのが誰にでも直感的にわかるシンプルな操作性を求めました。
三つ目は、色です。手術室や会議室など、使う場所に応じて「マーク」などの色が変えられるようにお願いしました。

八巻:今回の「HoloMe」に採用したマイクロソフト社の「HoloLens 2」には、CPUなどが内蔵されているためオフラインでの使用が可能です。
また、これは一般的なMRの特徴ですが、MRアプリケーションを操作するためのボタンやパネルの操作感は、使い慣れているキーボードやマウスとはまったく異なるものです。そこで、ボタンにタッチすると音がする、色が変わるといったユーザーインタフェースの改良をこれまでにも重ねていました。
色味については、手術室や会議室など、実際に使う場所に映像を重ねてみて、"目線"を示す「マーク」の視認性を高める工夫をしました。通常は赤を使うことが多いのですが、今回は、より視認性が高いグリーンを使いました。このように、医療現場で使う人たちにとって使いやすいように改良を行いました。

協創によりふくらんだ未来へのビジョン

ー今回の協創を通じて、医療現場をどのように変えていきたいと思いますか。ITへの期待とビジョンをお聞かせください。

長谷川:2022年11月に行ったプレスリリースへの反響も大きく、全国各地から数多くの問い合わせをいただいています。性能の特徴であるオフラインは、場所を選ばず、安全に医療機器が使用できるというメリットがあり、活用のすそ野が広がることに期待と手応えを感じています。

八巻:ドキュメントの複雑な文章を読み解きながら目線を手元に移し、医療機器を組み立てていくのは困難です。「HoloMe」なら、直感的な方法で学んでいくことができます。安全で正確な組み立てや利用が何よりも優先される医療現場にあって、MRを使用したトレーニングはこれまでにない優れた面を強調できるものだと確信しています。

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長谷川:今回の協創は、これで完成ではなく、これをスタート地点としてさらに進化させていきたいと願っています。
看護師のトレーニング以外でも、医療現場はさまざまな課題を抱えています。例えば、病院には、文字や画像による患者さんの情報や医療従事者の顔といった個人情報があふれているため、それらを匿名化する機能を「HoloMe」へ搭載することができれば、トレーニングの汎用性はますます高まると思います。
このように、医療現場の課題を解決することにより、私たちのミッションである「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し生命を延ばすこと」の実現をめざします。

八巻:今回のMRのほかにも、技術革新が進んでいるものがたくさんあります。例えばメタバースもその一つです。なにもないところにあたかも手術室があり、医療機器があり、そこで自分が練習できるような空間を出現させることができます。こうした仮想空間でのトレーニングが実現する未来は、もうすぐ近くまで来ています。
新しい技術を通じ、メドトロニックさまの機器を、より確実に正確に、そして安全に組み立てるためのお手伝いをすることで、医療の継続的な発展に貢献したいと思います。

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