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2022.12.08

対談【電通デジタル×日立ソリューションズ】
お客さまの幸せと事業の成功を実現するカスタマーサクセス

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「サブスクリプションビジネスの普及」や「モノ消費からコト消費」など、購買体験の変化や新しい価値観が生まれている現代。サービス提供者がお客さまと長期にわたって良好な関係を築いていくための「カスタマーサクセス」が注目されるようになってきた。今回は、カスタマーサクセスの領域でビジネス変革に挑戦している電通デジタル 阿部氏と、カスタマーサクセス業務のソリューション立ち上げに携わってきた日立ソリューションズ 宮下氏の対談を実施。協創にかける想いや、カスタマーサクセスの先にある「人々の幸せ」について語ってもらった。

  • 阿部智史 / Abe Satoshi

    株式会社電通デジタル ビジネストランスフォーメーション部門
    カスタマーサクセス第一事業部GM

    電通デジタルにて、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する組織で、CRM領域のビジネス変革やマーケティング分野でのDX業務に従事。現在はカスタマーサクセスをテーマに、「売るためのマーケティング」から脱却し、お客さまとの関係性の構築による長期でのビジネス成長を実現すべく、コンサルティングやソリューションの開発を推進。

  • 宮下 大司 / Miyashita Daishi

    株式会社日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部
    通信サービス本部 第3部 第1グループ

    コンシューマ向けWebサイトの開発やアプリケーションのパフォーマンス監視製品の拡販および顧客の製品利活用支援業務を経験した後、カスタマーサクセスの支援事業立上げに参画。現在は「サブスクリプション支援ソリューション」のカスタマーサクセス領域を担当し、電通デジタルさまとの協創におけるスキームの検討をはじめ、ITツールを駆使した支援業務に幅広く携わる。

「所有しない」時代。企業が選ばれ続けるためにすべきこと。

ー近年のDXの動向やデジタル技術の発展で、どのような変化を感じていますか。

宮下:まず、人々の消費行動は大きく変わりましたよね。「所有」から「シェア・共有」へと発想が変化し、サブスクリプションビジネスが普及していることは、多くの方が感じるところだと思います。その変化とあわせて実感しているのは、お客さまにとって「選択肢が増えたこと」と「切り替えが簡単になったこと」です。これらはお客さま視点で見ると大きなメリットですが、事業者視点で見ると「選ばれる理由」をきちんと持てるようにしていかなければならない、という切実な課題となりました。

阿部:私も消費行動の変化は強く感じています。「良いものを作れば売れる」という考え方だけでなく、データやITテクノロジーを駆使して顧客と長期にわたる関係性を構築する「カスタマーサクセス」が重視されるようになりました。それと同時に、企業の評価のされ方も変わってきたように感じています。「どれだけ売上や利益が出せたか」といった財務指標的な観点も重要ですが、「その会社が何のために存在しているか」「社会や人々にどのような価値を提供しているのか」というパーパスの観点も、重要になってきたのではないでしょうか。日本だけでなく世界的にも、目先の売上だけではない評価軸や価値観を持つ企業になろうとする機運が高まっていますよね。

ー担当されているビジネスや事業においては、どのような課題がありますか。

宮下:先ほどお話しした「お客さまがサービスを切り替えやすくなった」ことを受けて、我々はより能動的な支援が必要になっていると感じています。お客さまはサービスに不満を感じたら、すぐ別のサービスに切り替えてしまいますからね。サービスやプロダクトのクオリティを常に高めながら、お客さまが求めていることを先回りして提供していく必要があると思っています。しかしこういった活動は属人的になりがちです。「選ばれ続ける」ために、一人ひとりがとっている適切なアクションを、組織的にいかに標準化できるかが課題だと考えています。

阿部:私たちの方でもいくつか課題があり、まず1つ目は先ほどお伝えしたような「売って終わりのビジネスからの脱却」です。2つ目は「ビジネスモデルを変えていくための、人材や組織の意識改革」が挙げられます。特に大企業は、事業の大きさや幅広さがネックとなり、縦割りの組織体制ゆえの弊害があると言わざるを得ません。各部署がそれぞれ別のKPIを追っているような状況では、やがて限界がきてしまいます。大企業にありがちなのは、部署ごとの個別最適に特化してしまい、企業としての全体最適ができていないという問題ですね。その解決のためには、縦割りの組織ごとにお客さまに接するのではなく、全員が同じ指標を見ながら、組織として横断的にお客さまに価値を提供できるような、カスタマーサクセスのプラットフォームが重要になってくると思っています。

ITによるビジネス変革を通じて、カスタマーサクセスを実現。

ー協創の背景や経緯、さらに両社が担う領域や強みについて教えてください。

宮下:もともと日立ソリューションズでは、「BSSsymphony」という、顧客管理や課金、請求などの業務を支援するソリューションを提供していました。しかし、近年注目されているサブスクリプション事業の運営を支援するためには、事業の立上げからサービス運営、カスタマーサクセスまで、全体をカバーできるソリューションが必要となります。また、「獲得したユーザーに対して、ITをどのように活用すれば良いのかわからない」といった悩みを持たれているお客さまも多く、当社の知見だけでは不十分に感じました。そこで、業務設計の支援に多くの実績を持つ電通デジタルさまにお声がけしました。

阿部:そうですね。業務に関するコンサルティングを私たちが担当し、日立ソリューションズにはIT活用の面で支援していただくという、得意領域の掛け合わせによるシナジーでの協創ができたと思っています。電通デジタルとしては、B to Bに限らずB to CやB to B to Cのさまざまな企業の支援をしてきた実績があり、事業変革に向けて課題の顕在化から戦略立案までトータルで支援できることが強みです。いわゆるビジネスの上流工程におけるマーケティング領域というか、課題の本質に迫りながら実行まで寄り添っていく方針が、ほかのコンサルティングファームや広告エージェンシーにはない特徴ですね。それに加えて、電通グループとして保有しているさまざまなアセット・ノウハウ・ネットワークを活用し、総合力や柔軟性を発揮できる点も強みだと思っています。

ー今回の協創による気付きや学び、得られたものは何ですか。

阿部:「カスタマーサクセスには、横断的な指標や共通のプラットフォームが必要」というお話をさせていただきましたが、その前段階においても、ある種の投資や改革が必要なんですよね。全社横断的に業務を整理して施策を実行していくためには、役員や経営陣の合意を取っていかなければなりません。カスタマーサクセスに取り組む前の啓発活動というか、業務の目的や意義を一つひとつ伝えていき、マインドを変えていくといった布石も重要だと気付きました。

宮下:たしかに、カスタマーサクセスの意味や目的から理解してもらう必要がありますよね。まずは小規模の取り組みから着手していき、スモールサクセスを積み重ねていくこと。そして、その成果や価値を実感してもらった上で具体的な施策をスケールさせていくことが重要です。また、製品やツールといった手法を限定せず、お客さまの課題やニーズにあわせて提供するサービスも更新していき、小さな成功体験を創りながら段階的にアプローチをしていく重要性を実感しています。

阿部:もう一つは、型を作ることがゴールではないということも感じましたね。お客さまが抱えている課題やビジネスを理解し、最適な解決策やプランを提示しながらともに歩みを進めていく。これが本質的な解決のためのアプローチです。型すなわちパッケージの開発だけでなく、ビジネス変革の結果として、カスタマーサクセスが実現できるものということも改めて学べました。

人々の「成功」や「幸せ」に寄り添える世界を作っていきたい。

ーお客さまとカスタマーサクセスを協創する上で、大切なものは何ですか。

宮下:やはり大切なのは、お客さまとのコミュニケーションです。これまで、私たちはサービス提供者として「売ること」がゴールとなってしまっていましたが、サービスを使うことで得られる喜びやその先の幸せは、提供者側では決められません。つまり、サービスの成功はあくまでもお客さまの中にしかない。そうなると、やはり大切なのはコミュニケーションです。お客さまが何をしたいのか、それに対して、我々サービス提供者は何ができるのか、というお客さま起点の考えでコミュニケーションを行い、サービス提供者はお客さまから学ぶことが重要です。お客さまとともに成長しながらLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めていけると思っています。

阿部:私も同じような考えを持っていて、ビジネスやマーケティングに留まらず、組織全体の支援をすることが、結局はカスタマーサクセスやLTVの最大化につながると考えています。今の社会、カスタマーサクセスの取り組み自体は決して珍しいものではないんですよね。だからこそ、我々にしかできない価値提供や強みなどをもっと尖らせていき、選んでもらえるポジションをめざしていくべきだと思っています。そのためのヒントはパーパスや顧客と従業員の幸せなどさまざまですが、宮下さんもおっしゃる通り「成功の本質」や「本当に求められている価値提供」を追求していきたいですね。

ーカスタマーサクセス支援を通じて、どのような社会をめざしていきたいですか。

阿部:私はカスタマーサクセスを自分の中の大きなテーマとするにあたって、「消費を前提としたビジネスや社会からの脱却」をめざしています。少子高齢化やGDPの低迷、マーケットの縮小化などが見込まれ、消費そのもののあり方を大きく変えていく必要がある中で、お客さま目線での「成功」や「幸せ」に寄り添える世界を作っていきたいと思いました。そういった意味で、カスタマーサクセスは、ビジネス変革を通じて社会を変えていく一助になりうる取り組みなんじゃないかなと信じています。新たな消費社会に向けたパラダイムシフトを起こしていくことにやりがいを感じていますし、カスタマーサクセスを通じて人々の幸せの実現につなげていけたらと思っています。

宮下:私も阿部さんのテーマと同じく、シンプルに言えば、「みんなが幸せになれる世界を作りたい」という想いを持っています。これまでの「物を売る」「囲い込む」という手法も、いままでのビジネスにおいては主流だったかもしれませんが、お客さまが本当に満足されているかは別の問題ですよね。かといって、お客さまのニーズを満たすためだけに、企業や従業員に負担を強いるのも正解とはいえません。つまり、カスタマーサクセスは「企業(提供者)とお客さまが互いに寄り添いながら成功していくための事業の在り方」と捉えています。誰もが幸せになれる世界をめざし、理想論で終わらせるのではなく、形にしていくという使命感を抱き、持続可能な社会の実現に向けて挑戦していきたいですね。

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