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グローバルトレンドレポート

生成AI × メタバースの可能性

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メタバースは仮想空間、AI、IoTの融合から生まれた次世代のインターフェースと捉えられ、生成AIとの親和性は高いといえます。本記事では、メタバースと生成AIという2つの技術領域がどのように融合し、相互に役立つのかという可能性を探求していきます。

※本記事は2024年1月に掲載されたものです。
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    川尻 剛

    Hitachi Solutions America
    Senior Director of Executive Office

    2003年の入社以来、主に先端技術の評価を担当。15年からは米国カリフォルニアとシアトルにそれぞれ2年間駐在して新規ソリューションの立ち上げを支援。帰国後は全社研究の戦略立案を担当し、その一環としてAR/VR技術の業務活用について多くのPoCプロジェクトをリードした。現在は米国拠点にてSenior Directorとしてメタバース技術の価値検証を行っている。JavaやAjax、Ruby関連の書籍を執筆。当時は先端であったこれらの技術も今となっては「ふつう」の技術。メタバースもそうなる日を願っている。

世界がアフターコロナに向けて踏み出し、私たちの生活が戻りつつある中、デジタルの世界でも新たな動きが見受けられます。一世を風靡(ふうび)したメタバースのブームはいつしか静けさを取り戻し、その代わりにChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)が新たな流行の先端を走り始めました。

本技術は、これまで困難であった自然言語によるコンピューターへの指令や画像の生成などを可能にするもので、チャットだけでなく、情報検索、プログラムの生成、アイデア発想など、様々な業務への応用が期待されています。そして長期的に見てみると、メタバースの仮想空間技術と生成AIは必ずしも競合するものではなく、むしろ一方が他方を補完する形で機能する可能性を秘めています。今回は、これらの先端技術の組み合わせの活用方法を紹介します。

それではまず、現行の仮想空間技術のトレンドを深掘りしていきましょう。従来、メタバースは主にアバターを介した仮想空間でのコミュニケーションをめざしていましたが、デバイスの進化により、現実空間を拡張する方向へとシフトしているのが見受けられます。つまり、視界全体をデジタル情報で覆い隠す没入型のアプローチから、現実の映像に2Dウインドーといったデジタル情報を組み合わせるような手法へと変化してきているのです。この動きは、SF映画で見られるような壮麗なバーチャル体験をリモートで実現するという斬新さからは一旦離れる形になりますが、仮想空間技術がデモの枠を超えて実用のステージに進出する1つの兆しとも解釈できるでしょう。これらの現実と仮想の融合を実現するMR(Mixed Reality)デバイスは、今後ディスプレーの薄型化と高解像度化が急速に進んでいくといわれており、日常生活で活用する日もそう遠くないかもしれません。

次に、生成AIの進化を見ていきましょう。大規模言語モデルの進歩により、私たちがコンピューターに伝えられる情報の量が大幅に増大すると予測されています。例えば現行のChatGPTでは、入力可能な文字数に制限があり、ある程度の情報しか渡せないため、関連する情報をデータベースから抽出して問い合わせ内容に適用するような工夫が必要となります。しかし、中規模の図書館に匹敵する情報量をコンピューターに渡すことが可能となる研究が進行中で、将来的には業務全体の情報をAIに渡し、問題解決をAIに任せることが現実的な選択肢となるかもしれません。また、AIへの入力方法も進化しつつあります。現状では主にテキストベースでAIに指示を出していますが、画像や音楽といった非テキストベースの入力が可能になると、その応用範囲は飛躍的に広がります。出力の面では、2次元画像の生成が実用化されてきており、次なるステップとして3Dモデルの生成が期待されています。

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ここまで、MRデバイスが日常生活にどのように溶け込んでいくか、そして生成AI技術がコンピューター の  入力と出力の質と量をどのように変え得るかを探究してきました。これらの技術が結合するとどのような可能性が広がるでしょうか。大規模言語モデルは、問いの背景や状況を具体的に示すことでより優れた回答を返す傾向にあります。現在では人間が必要なコンテキストを入力する必要がありますが、メタバース空間では視線や会話内容、表情といった身体性を活用したAIへの問い合わせが可能になり、AIからの状況に応じた提案も実現できるかもしれません。例えば、料理のメニューをAIに提案してもらう場合、現状では食材の選択や料理の好みを入力する必要があります。しかし、日常生活中の視覚的な情報(例えば冷蔵庫の中身)や家族の会話から情報を自動的に収集して提案することが可能になれば、AIの活用範囲はさらに拡大していくでしょう。

3Dモデル生成技術は、緊急事態のシミュレーションや創造的なアイデア発想の場面での活用が見込まれます。火災など即断が求められる状況では、文章や動画での理解を超えて、現場に近い状況を反復して体験することが効果的だとされています。従来、このような体験は主にVRを通じて提供され、3Dモデルの生成にはコストの問題が伴う課題がありました。しかし、画像や動画から緊急事態の情景を3Dで再現し、それに対する感情反応や行動をさらにコンテンツへフィードバックする能力があれば、仮想空間技術の実用化は一層進展するでしょう。また、インテリアデザインや展示会などの空間デザインの分野におけるアイデアの創出にもこれらの技術が活用できることは想像に難くないといえます。

本記事では、メタバースと生成AIという2つの技術領域がどのように融合し、相互に役立つのかという可能性を探究してきました。メタバースは仮想空間、AI、IoTの融合から生まれた次世代のインターフェースと捉えられ、生成AIとの親和性は高いといえます。そして、今回紹介した事例はこの技術の応用の一例に過ぎず、未知なる可能性がまだ広がっています。メタバースが実際に実用化されるまでには10年以上かかるとされていますが、これはメタバースが次世代のコンピューティングパラダイムとしての位置づけがされているからです。短期的な視点でこれらの進展を評価するのではなく、より広い視野で、長期的な進化を見守ってみるのはいかがでしょう。一緒にこの未踏の領域への探索を続けていきませんか。

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