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2026.10.07

2024年問題とは?その後どうなったのか、
物流・建設・医療への影響と対策を解説

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「2024年問題」という言葉が社会に浸透し、実際に制度の適用が開始されてから一定の期間が経過しました。施行前には「荷物が運べなくなる」「工期が延びる」「医療体制を維持できなくなる」といった懸念も多く聞かれていましたが、現状はどうなっているのでしょうか。

本記事では、2024年問題の定義や背景をおさらいした上で、物流・建設・医療の各業界における施行後の実態、今後持続可能な体制を築くために求められる対策を解説します。

2024年問題とは?

まずは2024年問題の定義と、その背景を整理しておきましょう。

時間外労働の上限規制によって生じる課題のこと

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「2024年問題」とは、働き方改革関連法に基づき、2024年4月から自動車運転・建設・医師といった特定の事業・業務に時間外労働の上限規制が適用されたことで生じると懸念された一連の課題を指す言葉です。

時間外労働が制限されれば、同じ人員体制のままでは、これまでのサービス水準を維持できなくなる恐れがあります。物流・建設・医療はいずれも私たちの生活を支える基盤であるだけに、大きな影響が懸念されてきました。

※2024年3月31日以前は、時間外労働の上限規制の適用が猶予されていました。
※各領域には一部例外・特例があります。詳細は厚生労働省の制度情報をご確認ください。

なぜ2024年問題が注目された?

2024年問題の根底にあるのは、多様な働き方を選べる社会をめざす「働き方改革」です。

物流・建設・医療といった業界では、もともと現場の長時間労働に頼ってサービス水準を維持してきた構造がありました。そのため、働き方改革を進めると、これまでのサービス水準を維持しにくくなるというジレンマを抱えることになります。

こうした背景から、社会インフラをどのように維持するかが大きな課題として意識されるようになったことが、2024年問題が注目された理由といえるでしょう。

「2024年問題」によって懸念されていた影響

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2024年問題によって、それぞれの業界ではどのような影響が懸念されていたのでしょうか。ここでは「制度適用前に懸念されていた影響」を整理します。

物流・運送業界への影響

物流・運送業界では、もともと深刻化していたドライバー不足に2024年問題が重なることで、輸送能力のさらなる低下が懸念されていました。野村総合研究所が2023年に開催したフォーラムでは、対策を講じなかった場合、2030年には全国で約35%の荷物が運べなくなるという試算が示されています。(※1)

※1 株式会社野村総合研究所「第351回NRIメディアフォーラム」(2023年1月19日)「トラックドライバー不足時代における輸配送のあり方~地域別ドライバー不足数の将来推計と共同輸配送の効用~」

また、以下のような影響も予想されていました。

•ドライバー1人当たりの運べる荷物量や走行距離が減ることによる配送遅延
•新たな中継拠点の整備のためのコスト増大
•長距離輸送が難しくなることで、配送が都市部に優先され、地方では配送頻度やサービス水準の低下が発生

建設業界への影響

建設業界では、長時間労働を前提として工期を成立させてきた現場が多く、その前提が崩れることで以下のような影響が出ると懸念されていました。

•同じ工事量に対応するための工期の長期化
•1人当たりの労働時間が減る分を補うための増員と、それに伴う人件費・外注費の上昇
•1つの現場にかける時間が長くなるため、同時に受注できる案件数の減少

多くの人手を要する施工現場では、労働力不足は事業の継続に影響を及ぼしかねない問題といえます。

医療業界への影響

医療業界では、これまでの医療提供体制を維持できなくなることが懸念されていました。

•救急搬送の受け入れ体制や僻地・地方の診療体制の維持が難しくなること
•呼出当番などの不規則な勤務も含めた見直しの必要

高齢化の進行で医療現場の人手不足が加速していることもあり、医師の働き方改革によって、現場の負担が増し、医療提供体制の維持が難しくなるのではないかという声が上がっていました。

2024年問題は結局どうなった?

結論からいえば、物流や医療が全国的に止まるような大混乱は起きていません。一方で、人手不足やコスト増、現場へのしわ寄せは続いており、2024年問題は現在も解決したとはいえない状況です。いくつかの定量的データとともに現状を確認します。

物流業界

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物流業界では、物流が一斉に止まるような大混乱は起きませんでしたが、内情は厳しい状況が続いています。

人手不足・コスト増を背景に倒産件数が39%増

制度施行後、「物流が全国的に止まる」という事態は起きませんでした。しかし、燃料価格の高騰や人件費の増加によるコスト増、深刻な人手不足、荷主との運賃交渉の難しさが重なり、中小の運送事業者を中心に経営は圧迫されています。

帝国データバンクの調査によると、2024年上半期の道路貨物運送業者の倒産件数は186件で、前年同期の133件から39.8%増加。上半期としては2009年に次ぐ高水準となっています。(※2)

※2 株式会社帝国データバンク「『道路貨物運送』倒産動向(2024年上半期)」(2024年7月5日)

少ない便数で効率よく運べる仕組みへ

物流業界では、単純な労働力確保だけではなく、少ない便数で多くの荷物を運べる仕組みへの転換が進められています。トラックを鉄道・船舶に切り替えるモーダルシフトや、複数の荷主・事業者が荷物をまとめて運ぶ共同輸送で積載効率を高める取り組みが進められています。

また、燃料費や労働時間の変化を反映した運賃の見直しや、リードタイムの適正化が求められています。消費者側でも、再配達を減らす置き配や宅配ボックスの活用などが推進され、あらゆる角度から負荷を分散する動きが進んでいます。

建設業界

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物流業界と同様、建設業界でも「工事が一斉に止まる」といった事態には至りませんでしたが、中小・下請け事業者を中心に各種問題が発生しています。

中小・下請けを中心に負担が表面化

建設業界では、工期の遅れ、人件費の増加、価格転嫁の難しさ、人手不足による倒産といった問題が表面化しています。東京商工リサーチによると、2024年の建設業倒産は1,924件で前年比13.6%増、2015年以降の10年間で最多を記録しました。(※3)

ただしこれは2024年問題だけが原因ではなく、もともとの職人不足や高齢化、資材価格の高騰、下請け構造による価格転嫁のしづらさが重なった結果であり、そこに労働時間の制約が追い打ちをかけた形といえます。

※3 株式会社東京商工リサーチ「建設業の倒産 過去10年間で最多 資材高、人手不足に『2024年問題』が追い打ち」

無理な工期・安い請負・現場依存を前提にしない体制へ

建設業界では、工期や発注者、下請け構造、技能者の高齢化などが複雑に絡み合うため、現場の努力だけでは対応しきれません。そのため見直しの対象は、契約や発注方式そのものへと広がっています。

2024年6月に公布された改正建設業法・入契法では、「処遇改善」「資材高騰による労務費へのしわ寄せ防止」「働き方改革と生産性の向上」が柱とされました。具体的には、著しく短い工期での契約締結の禁止、労務費の基準の整備、資材高騰分の価格転嫁を促す仕組みなどが盛り込まれ、従来の構造からの転換が図られています。(※4)

※4 国土交通省「建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について」

医療業界

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医療現場では、医師数を急に増やすことも医療の質を落とすこともできません。現状では、現場の負担に依存する形で医療提供体制が維持されている部分もあることがうかがえます。

救急・夜間診療・地方病院・大学病院からの医師派遣にしわ寄せが発生

勤務医の時間外労働に上限が設けられたことで、これまで長時間労働や宿日直、大学病院からの応援医師の派遣に支えられてきた医療機関ほど、影響を強く受けやすくなりました。

日本医師会が2026年に公表した調査によると、医師の働き方改革によって救急医療体制の縮小・撤退を行っていない機関は88.3%にのぼり、制度の適用によって医療提供体制全体が大きく崩れたわけではないと考えられます。(※5)

ただし、一部の救急医療機関では高齢救急患者の増加などにより、救急医療体制を縮小したくても縮小できないのが実情です。周産期・小児医療でも同様の傾向が見られたり、地域で唯一の医療機関が縮小・撤退せずに体制を維持したりしているケースも報告されています。

※5 日本医師会「『医師の働き方改革と救急医療等の現場に関する調査』結果まとまる」

医師の仕事を分散し、夜間・救急・地域医療を再設計する体制へ

医療は、営業時間の短縮が難しい業界です。そのため見直しは、医師の業務を分散させる方向で進んでいます。

具体的には、看護師や薬剤師、事務職員へのタスクシフト/シェアが挙げられます。また、一つの病院だけで救急や地域医療を抱え込むのではなく、近隣の医療機関同士で連携し、地域全体で診療体制を維持する発想への転換も進んでいます。

各業界が今後求められる対応

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どの業界も、2024年問題が解決したとはいえません。長時間労働に依存して維持してきた体制から、少ない労働力でも持続できる体制への移行は、今もなお道半ばです。

今後各業界に求められるのは、人員確保だけでなく、サービス水準・価格・役割分担・デジタル化をセットで見直し、持続可能な体制へ再構築することだといえるでしょう。

【物流業界】配送網の効率化とデータ活用による輸送力の最適化

物流業界では、限られたドライバー数と労働時間の中で輸送力を維持するために、配送ルートや積載率、荷待ち時間、再配達などの要素をデータで可視化し、継続的に改善していくことが欠かせません。

増員に頼るのではなく、配送計画の最適化や共同配送、中継輸送の活用、倉庫と輸配送のデータ連携などを組み合わせ、物流網全体としての生産性を高めていく発想が求められます。

【建設業界】工程管理の高度化と安全な労働環境の整備

建設業界では、長時間労働に頼らずに工期と品質を両立させることが課題となります。そのためには、経験に基づく工程管理を数値やデータに基づいて高度化し、遅れの兆候を早期に把握できる仕組みが必要です。

併せて、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用して現場業務のデジタル化を進め、限られた人員・時間の中でも安全性と生産性を確保できる労働環境を整えていくことが求められます。

【医療業界】業務分担とIT活用による医療提供体制の維持

医療業界では、医師の労働時間を適正に管理するとともに、地域に必要な医療提供体制を維持していくことが必要です。

そのためには、看護師や薬剤師、事務職員などへ業務を移すタスクシフト/シェアを一段と進める必要があるでしょう。加えて、電子カルテや予約管理システム、オンライン診療、院内の情報共有システムといったIT活用によって、医師以外の職種でも担える業務を整理し、医師の負担を減らしていくことが重要です。

まとめ

現状のところ、2024年問題として懸念されていた物流・建設・医療が全国的に機能不全に陥るような事態には至っていません。ただし、中小事業者や下請け事業者、地域の現場を中心に、倒産増加や人手不足、業務負担の偏りなどの影響が表面化しています。

各業界とも、長時間労働を前提としなくても持続できる体制への移行が続いています。今後は人員確保だけでなく、データ活用やデジタル化、業務分担の見直しを総合的に進められるかが問われるでしょう。

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