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製造業のメタバース最先端をめざして

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技術のトレンドに詳しい方であれば、メタバースという言葉を目にしない日はないのではないでしょうか。関連デバイスが立て続けに発表され、よりいっそうの盛り上がりを見せている本領域について、日立ソリューションズの取り組みの一つを米国シカゴから紹介します。

※本記事は2023年4月に掲載されたものです。
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      川尻 剛

      Hitachi Solutions America
      Senior Director of
      Executive Office

      2003年の入社以来、主に先端技術の評価を担当。2015年からは米国カリフォルニアとシアトルにそれぞれ2年間駐在して新規ソリューションの立ち上げを支援。帰国後は全社研究の戦略立案を担当し、その一環としてAR/VR技術の業務活用について多くのPoCプロジェクトをリードした。現在は米国拠点にてSenior Directorとしてシカゴでメタバース技術の価値検証を行っている。JavaやAjax、Ruby関連の書籍多数。当時は先端であったこれらの技術も今となっては「ふつう」の技術。メタバースもそうなる日を願っている。

メタバースはSF小説から生まれた造語で、高次元を表す「メタ」と、宇宙を表す「ユニバース」を組み合わせた、コンピューターがつくり出す仮想上の宇宙を表す言葉でした。現在はVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)といった複合現実技術を活用した3次元空間や、その空間でのコミュニケーションを指す場面が多くなってきています。

バーチャル会議やバーチャルステージの実現など、主にオフィスやエンターテインメント方面での活用が期待されている本技術領域ですが、最近は製造業や建設業といったものづくりの現場においても注目されており、特にサイバーフィジカルシステムの文脈での応用が期待されてきています。例えば、IoTやカメラデータを使用して工場や製品のデジタルツインを仮想空間に再現し、アバターを用いてリアルタイムに議論を行うといった検証が実際に行われてきています。

なぜ、ものづくりの現場でメタバース技術が注目されてきているのでしょうか。短期的にはハイブリッドワークに代表される働き方の変化や、就業者の減少、それらを補うためのコミュニケーションやプロセスの効率化などが理由として挙げられます。また、LiDAR※などのセンシング技術や、機械学習の発展により仮想空間の構築が以前よりも容易となったことも技術的要因の一つとなるでしょう。かつて専門家のスキルや特別な装置が必要であった3Dモデルの作成が簡単にできるようになってきており、例えばスマートフォンやタブレットで撮影した複数の写真から3Dモデルを生成するといったことが実現できるようになってきました。これらの生成モデルをサイバー空間でも活用していくのは自然な流れといえるかもしれません。

 ※Light Detection And Ranging、Laser Imaging Detection 29 And Ranging の略称

クラウドゲートと呼ばれるシカゴ観光スポットの一つ。米国の旅行先としてはニューヨークやロサンゼルスが人気だが、実はシカゴも建築や芸術が発達しており見どころ多数

5年や10年といった長期的なスパンで見ると、メタバースは現在のスマートフォンやインターネットに置き換わる技術として期待されている面もあります。振り返ってみると、ITや通信ネットワークの歴史はメインフレームからパーソナルコンピューター、スマートフォン、クラウドコンピューティングと、情報の携帯性や使用頻度を上げる進化の歴史でもありました。筆者が学生の頃は週に数回しかアクセスできなかった情報端末も、今となっては一日の大半を触れて過ごすようになり、スマートフォンから送られてくる使用時間レポートの内容に驚かされることも多々あります。情報の携帯性のレベルをより一段階上げようとすると、生活や業務の一部をサイバー空間化させるという選択肢が考えられ、メタバースはそれを実現する第一歩と見なすこともできます。

もしかするとそのようなサイバー空間は必要ない、現状の技術で十分だと思われるかもしれません。例えば信号機がスマートフォン上に表示される世界で積極的に運転したいと思うでしょうか。より良い判断を行うために、情報はあるべきタイミングにあるべき場所で提示された方がよく、現在のスマートフォンやインターネットのような2次元のモニターでは限界があるのです。

このようなメタバースの将来を見据えた価値検証を行うべく、2022年の春から米国イリノイ州のシカゴオフィスに赴任し、現地の顧客と実証実験を開始しました。ビッグテック企業が集まるような、シリコンバレーといった西海岸ではなく、あえてシカゴを選んだ理由としては、米国製造業の中心都市の一つであることが挙げられます。隣接した五大湖が資源に恵まれた地域をつなぐ水路として機能し、鉄鋼や石炭、自動車といった製造業の多くがこの周辺地域で発展してきました。かつてはラストベルトと呼ばれ、斜陽産業を抱える問題地域と見なされていた時代もありましたが、近年のサプライチェーンの国内回帰の動きにより、製造関連施設の需要が高まっています。このような歴史的背景から、シカゴオフィスは製造業関連の顧客が多く、それに伴ってIoTやAIに強い技術者が集まっており、製造業向けのメタバースの技術検証には最適の場所ではないかと考えました。

実際に赴任して一緒に仕事をしてみると、顧客はもちろん、チームの熱量が非常に高く、連日のように提供機能や顧客体験について議論を行っています。新しい技術に対する抵抗は日本に比べて少ないように感じており、自分では想像もつかないような発想に驚かされる毎日です。これらの期待に応えるように毎月のように新しいプロトタイプを作り続けており、製造業のメタバースを切り口に、サイバー空間と現実空間の融合のノウハウを蓄積していきたい、IoTとAIに仮想コミュニケーションという新しい軸を加えたい、そして次世代スマートフォン・インターネットへの準備を進めていきたいと思っています。

オフィス周辺の風景。見上げるような超高層ビル群の中に位置する

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