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激動する社会における企業の役割とは

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世の中の様々な課題解決をめざす一般社団法人リディラバの代表を務める安部敏樹氏と、日立ソリューションズのサステナビリティの活動をけん引する取締役の紅林徹也。世代も立場も異なる2人が社会課題への向きあい方やこれからの企業の在り方について語り合った。

※本記事は2022年8月に掲載されたものです

安部 敏樹(あべ・としき)
安部 敏樹(あべ・としき)
1987年生まれ。一般社団法人リディラバ/株式会社Ridilover 代表。東京大学在学中にボランティア団体としてリディラバを立ち上げ、様々な社会課題に関する取り組みを始め、現在は事業化。コメンテーターとしてメディアでも活躍。
紅林 徹也(くればやし・てつや)
紅林 徹也(くればやし・てつや)
日立ソリューションズ 取締役・専務執行役員。1985年日立製作所入社後、情報・通信グループで公共システム事業などに従事。内閣府への出向を経て、2016年から現職。現在は経営戦略を統括している。
あらゆる社会課題に等しく取り組むことは不可能です。だから、どの領域に最も注力するのが有効かをしっかり考える必要があります。
あらゆる社会課題に等しく取り組むことは不可能です。だから、どの領域に最も注力するのが有効かをしっかり考える必要があります。
多様なステークホルダーと協創しながらサステナビリティの実現に貢献していく。それが私たちのSXの考え方です。
多様なステークホルダーと協創しながらサステナビリティの実現に貢献していく。それが私たちのSXの考え方です。

理想を共有するツールとしてのSDGs

紅林リディラバは「社会課題を、みんなのものに」というビジョンを掲げていますね。世の中には様々な課題があります。その中で優先的に取り組むべき課題をどう見極めているのですか。

安部まず、「課題とは何か」を明らかにしていくステップがあります。課題とは、「現状」と「理想状態」との乖離のことです。現状認識は比較的共有しやすいのですが、理想は人によって、あるいは集団によって異なります。その理想を互いに擦り合わせて合意を作ること、つまり「理想状態の調整」によって集団にとっての現状との乖離が明確になり、課題は可視化されることになります。

次に、そうやって可視化された課題を「社会課題化」していくステップがあります。社会課題化のポイントは、それを解決することでどのくらいのインパクトが生まれ、非当事者も含めどのくらいのレバレッジをかけられるかです。世の中の課題は相互に関わり合っています。一つの課題を解決すると、それが他の課題に影響し、その課題の解決にもなるケースもある。そのような可能性がより高いものをより重要な社会課題として捉え、優先的に取り組んでいくようにしています。

紅林理に適った考え方だと思います。理想状態を共有するツールとしてSDGsを活用するのも一つの方法ですよね。SDGsの17の目標と169のターゲットの中で、自分たちと関係が深いと思われるものを共通の理想とする方法です。

しかし、自らが従事している仕事の範囲だけでSDGsを捉えるようとすると、課題の把握の仕方がどうしても限定的になってしまいます。そこで私たちは、昨年からSDGsへの向き合い方を変えました。自分たちと関わりのある多様なステークホルダーと視点を共有し、SDGsを通じてステークホルダーと協創することによって様々な課題をクリアしていく。それが現在の私たちのスタンスであり、日立ソリューションズにおけるSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)であると考えています。

収益性と社会貢献を一つのものと捉える

紅林徹也

紅林そのSXをITによって推進していくのが私たちのビジョンです。重要なのは、ITを活用すると同時に、課題解決の取り組み自体を持続可能なものにしていくことです。そのためには、収益性が担保されなければなりません。課題に向き合う中で、ビジネス化できる領域を見定め、ステークホルダーとの連携の形を作っていく。そんな取り組みが必要です。

安部課題の優先順位の基準を「実現性」と「継続性」に置くということですよね。

紅林その通りです。つまり、ビジネスの仕組みによって課題解決に貢献していくということですが、貢献には直接的なものと間接的なものがあります。例えば、私たちはサプライチェーン全体のCO2の排出量をシミュレートするサービスを開発しています。そのようなソリューションを提供することが直接的貢献だとすれば、製造業のDX推進を支援することで、その企業がサステナビリティの取り組みに投資する余力を創出するという間接的貢献もあります。

安部どちらもとても大切な活動だと思います。一方で、社員の皆さんが間接的貢献を明確に自覚するのは簡単ではないという気もします。

紅林おっしゃる通りですね。私たちは、事業と社会課題の関係を明らかにするために、事業の構造図を作るようにしています。この仕事はどのような産業領域や社会領域に影響をもたらし、それによってどのような課題を解決できるのか──。それを可視化することによって、直接的貢献と間接的貢献の両方の重要性を社員間で共有することができると考えています。

もちろん、課題解決の取り組みの中には事業のフレームに入らないものもあります。CSR活動や、自社からのCO2や廃棄物を減らすといった自主的活動です。事業、CSR、自社の取り組み。その3つによってSXを推進していきたいと私たちは考えています。

安部僕は、社会課題を解決していくには、経済の仕組みそのものが変わっていく必要があると思うんです。企業活動の目的は利益の創出である。それに異論がある人はいないでしょう。ではなぜ利益を生み出すことが必要なのか。その点については、現在において必ずしも合意があるわけではありません。

戦後の高度成長の時代は、企業が利益を創出することが社会の豊かさに直結していました。企業がお金を儲けることで、人々は幸せになれたわけです。しかし現代は、企業の収益と社会の公益がダイレクトに結びつく時代ではありません。だからこそ、企業は利益創出の活動を通じて社会をより良くしていくという目標をはっきり掲げなければならないし、経済の仕組み全体がその方向に変わっていく必要があるのだと思います。

「問い」を軸とした世代間交流を

安部敏樹氏

紅林ダイバーシティに関する意見もぜひ伺いたいと思います。企業にとってダイバーシティが必要なのは、ダイナミックケイパビリティ、つまり変化への対応力がないとこれからの時代は生き残れないからです。変化対応力を生み出すのは、多様な考え方に基づいた価値判断です。

ダイバーシティというと女性活用や外国人登用が注目されますが、多様な世代が活躍できる組織作りも重要なダイバーシティの取り組みだと私は考えています。しかし、それは簡単なことではありません。安部さんは、組織内の世代間ギャップについてどうお考えですか。

安部企業の理念や文化は時代とともに変わっていかざるを得ないと思います。しかし、それまでの理念や文化を変えることは、それを大切にしてきた年長の社員の皆さんの考え方を部分的に否定してしまうことにつながります。そこに難しさがあるのではないでしょうか。

僕は世代間ギャップを埋める一つの方法として、上位にある方々が若い世代に「問い」を投げかけられるような組織を作っていくのが良いと考えています。現在、世代を超えた課題として「内省が不得意である」ということが挙げられます。多くの人は膨大な情報を処理することに時間がとられ、自己を省みる余裕がないのが現状です。若い世代が内省を深めるために最も有効なのは、良い問いをもらうことです。一方、問いを与える側も、自分が発したその問いによって自分自身を内省することができます。互いの内省をベースとして世代を超えた議論を深めていくこと、年長者が率先して問いかけの主体として役割を変えていくことで、ジェネレーションギャップは解消されていくのではないでしょうか。

紅林「正解」ではなく「問い」を共有するということですよね。今日の正解が明日の不正解になるこの時代にあって、それは大変重要な考え方だと思います。

安部社会の変化が激しくなると、個人と社会のつながり方はいっそう難しくなります。これからの社会でどう生きていくかが不安であるという点では、若い世代も年長の世代も同じだと思います。会社の役割とは、個人と社会の間に入ってその不安を解消すると同時に、個人の力を社会に目に見える形で反響させることなのではないでしょうか。そんな会社に優れた人材が集まる時代になっていく。そう僕は考えています。

紅林企業が個人をバックアップすることで優れた人材が集まり、その結果、企業活動がサステナブルなものになっていく。ぜひそのような未来をめざしていきたいですね。

安部 敏樹氏 紅林 徹也
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