連載最終回の第6回は、気軽に始められるサステナビリティ活動についてご紹介。ふるさと納税やSNSなど、Z世代にとって身近な行為も活動の一つ!?そして、林さんのドラマ出演の裏話も語ります。
林 輝幸
クイズ制作集団「Q星群」代表
富山県出身。2016年、東京大学に現役合格。クイズ研究会(TQC)に所属し、競技クイズを始める。クイズ番組『東大王』(TBS系)に東大王チームとして出演。東京大学文学部卒業後は、クイズプレーヤーとして『Qさま!!』(テレビ朝日系)などクイズ番組を中心にテレビ出演。また、クイズ制作集団「Q星群」を立ち上げ、クイズを軸とした事業やイベントなどを行っている。
今回は、Z世代である僕自身が考えるZ世代ならではの強みや、その強みを活かしたサステナビリティ活動、はじめの一歩の踏み出し方をご紹介します。その前にまずは、前回のクイズの答えを発表します。
答えは①ブラジルです。アサイーボウルは、ハワイのカフェやレストランで提供され、海外セレブが好んで食べたことから有名になった食べ物。そのため、ハワイのイメージが強いですが、アサイー自体がブラジルのアマゾンが原産の植物で、アサイーボウルも元はブラジルで生まれたんです。ちなみに、アサイーボウルは少し前にも日本で流行ったのですが、最近になってまた再ヒット中。2000年前後のファッションの流行を取り入れる「Y2K」というファッションも近年トレンドになりましたが、Z世代(Z世代の定義についてはこの後詳しく解説します)は過去の物事を古臭いと切り捨てずに、自分たちが良いと思えば新旧関わらず「推す」という性質があるように感じます。
今回の連載はZ世代をはじめとする若手の方にも読んでほしくて、さまざまな切り口でサステナビリティを紹介してきました。まずは、Z世代の定義についておさらいしていきましょう。国やメディアによって定義は少し異なりますが、Z世代とは、1990年代半ばから2010年序盤生まれの若者のことだと定義されることが多いです。2024年現在の年齢でいうと11〜28歳くらいの方ですね。この世代の特徴の一つとして、変化が大きく、速い時代で育ってきたということが挙げられます。インターネットやITが急速に発展していくなかで、スマートフォンは一人一台が当たり前、常にオンラインで誰かや何かとつながっていて、SNSではあらゆる情報が目に入ってくる。そんな情報に溢れた社会のなかで、常に最新情報をアップデートして変化に対応していけるのがこの世代の特徴ですね。
一方で、SNSや動画媒体を活用して自分自身の価値を世界に届け、人生を急激に変化させる人も増えていますよね。かくいう僕も大学に入学した時は、普通の学生でした。でも、「何者かになりたい」という想いは強く抱いていて、いつかはテレビに出てみたいという希望を秘めていました。ちょうどいいタイミングで東大のクイズ研究会内で「東大王」へのオーディションの話があり、すぐに応募。合格したその日から僕の人生は180°変化しました。そして、「QuizKnock」に参加しYouTuberとして動画に出演しながらタレントとしても活動。QuizKnock卒業後はQ星群を設立し、クイズ制作や会社経営を行っています。この数年間で劇的な変化の連続でしたが、常に楽しんで波に乗ってきた感覚があります。これからの5年10年、僕の人生はどう進んでいくかわかりませんが、未来を決めるのは今の自分。結局、今を頑張るしかないという思いで毎日生きています。
僕の人生は少しめずらしいかもしれませんが、このように僕たちZ世代は激動の変化に柔軟に適応し、自分自身を変化させています。
さて、ここで変化にまつわるクイズです。僕の大好きな「お酒」に絡めて出題します。
答えは②開くです。ウイスキーといえば、ストレートやハイボールが代表的な飲み方ですが、スポイトやスプーンで水を一滴ずつ垂らして飲む「ワンドロップ」という飲み方があります。この際、水を入れて香りが変化した時に「香りが開く」と表現するのです。ちなみに、ウイスキーに水を入れることで香りが変化する現象は、科学的にも証明されているようです。20歳以上の皆さんは、ぜひ試してみてお酒ライフを変化させてみてください。。
さて、Z世代の僕たちの強みの一つがデジタルネイティブであることですよね。冒頭でも話しましたが、小さな頃からスマートフォンに触れインターネットを使いこなす。これって実は社会に出ると結構有利に働くと思うんです。上の世代の方たちにももちろんITに精通している方はいますが、僕たちほど当たり前の環境では育っていません。だからこそ僕たちは企業に入った後、デジタルネイティブの視点で課題を発見し、スマートに現状を変えていける。そして、たくさんの情報やつながりを活かしながら、異なる人や物をつなげて協創をしていける。これまでの記事でお話ししてきた協創は、情報とつながりで溢れているZ世代が輝くために、とってもいい手法だと思います。
さて、これまでの連載の中でサステナビリティや協創について話してきましたが、第6回まで読んでくださっている方は「じゃあ、サステナブルな活動ってどうやって始めればいいの?」「協創ってどうやるの?」と実際に行動を起こそうにも、その方法がわからないという方もいるかと思います。そんな方のために僕がおすすめする活動についてご紹介していきます。
まず一点目は、消費者としてサステナビリティに貢献することです。これまでの連載でも紹介してきた、地域の活性化や、社会・環境などに配慮した消費行動である「エシカル消費」や、5つの観点で、消費ではなくシェアを行い環境負荷を減らす「シェアリングエコノミー」への参加などがこれにあたります。「環境にいいことしなくちゃ!」と無理に気合いを入れず、まずは普段の生活で購入する物を変えてみたり、買って消費するだけだった物をシェアやレンタルという新しい形に使用してみたりなど、身近なことから気軽に始めてみるのがおすすめです。
続いて二点目は、サステナブルな取り組みをする企業や、持続的に発展してほしい自治体を応援してみることです。第5回で「投資は推し活」という話をしましたが、サステナブルな活動も同じだと思います。自分が推せる団体を見つけてお金を払い何かしらの商品を買ったり、共に活動に参加してみたりなど、その方法はさまざま。中でも、ふるさと納税は手軽にできる推し活だと思っています。観光で訪れて好きになった自治体だったり、一度食べてみて美味しかった食材だったり、魅力的な伝統工芸品だったり。それがもっと有名になってほしい、もっと持続的に存続していってほしいという気持ちでふるさと納税をすることで、自治体にも収益が入り、本人も税金がお得になる・モノやサービスを享受できるという面で、とてもいい制度だと思っています。僕も昨年は北海道の鹿肉をふるさと納税で注文しました。初めは単純に鹿肉が食べたいという思いで頼みましたが、とても美味しくファンになりましたね。応援が先か、食べたいかが先かはどちらが先でもいいと思います。自治体にとっても自分にとってもメリットがたくさんありますので、まずは、気軽に注文してみることをおすすめします。
最後は、SNSのハッシュタグでつながってみることです。例えば自分が賛同している取り組みや、応援しているお店のハッシュタグで検索し、同じものを応援している人を見つけます。次は、その人が投稿にどんなハッシュタグをつけているかをチェックして、その取り組みに参加したりお店を訪れてみる。そうやって、ハッシュタグを通して連鎖的に自分の興味を広げていくことも、サステナブルな活動のきっかけにつながると思うんです。僕もお酒が好きなので酒蔵のハッシュタグで検索して、その酒蔵を好きな人とつながり、別の酒蔵のハッシュタグを見つけて購入してみるということを結構やっています。「推し活」の話とも通じますが、「好き」「気になる」という気持ちでどんどん視野を広げ、楽しみながら環境や文化の持続可能性に貢献していけることでしょう。また、この「ハッシュタグ連鎖」は同じ感性を持つ友達や、問題意識を共有できる仲間との出会いの機会にもなりますよね。初めは自分の興味に従って応援できるお店を探していただけだったのが、いつの間にか仲間ができて、地球環境や、応援するお店が属する文化の持続可能性のために行動するようになる。まさにZ世代向けのサステナブルな活動だと言えます。
さて、そんなハッシュタグに関するクイズです。
答えは④Thursdayです。これは、「木曜日に思い出の写真を投稿しよう」という意味のハッシュタグ。なぜ、木曜日?と思いましたよね。諸説ありますが、木曜日は特に予定がなくてSNSの更新が減るから、過去を振り返る日にしようという意味があるそうです。少し強引かもしれませんが、「思い出を振り返る」という行為も、第2回で解説した一種のサーキュラーな体験ですね。
先ほど新たな仲間との出会いの話をしましたが、日立ソリューションズでも同じ課題感を共有する仲間と出会い、解決に向けて共に行動していける「ハロみん」というオープンなコミュニティを運営しているそうです。これは、イベントに参加して気になるサステナビリティテーマについて学ぶ、同じ志を持つ仲間を探す、新しいビジネスを創出するなど「繋がる」「探索する」「深める」「創る」の4つの体験を通して、サステナブルな未来創りに取り組めるコミュニティなんです。(※1)少し大きな話をしているように思うかもしれませんが、まずは「何かに挑戦したい」という気持ちでコミュニティに登録して、自分が気になるテーマのイベントに参加するもよし、公式のチャットルームで先輩たちにアドバイスをもらうもよし、もちろんここから自分発信でイベントを開催するもよしです。
僕自身も最近、新しい出会いによってかなり世界が広がった経験がありました。それは、始めてドラマに出演させていただいたときのことです。僕の出演が決まったのは撮影の2日前。しかも朝6時入りのスケジュールが4日もあるというかなりパワフルな現場で、何度も同じシーンを撮り直すことも多々あり、すごく苦戦していました。そんな時に力になってくれたのが他の出演者の方々です。劇団に所属している方や、俳優として活躍している方など、プロの方々ばかりで「演技の楽しさ」や「芝居への捉え方」「人生のバックボーン」などを話してくださり、僕も演技の面白さを少しずつ感じられるようになっていきました。また、リテイクの度に映像をチェックして「なぜカメラの角度が変わったのだろうか」「身振りの指示が出たのはなぜだろうか」と常に考えて思考を整理することで「こうするとこういう印象を与えられる」「この演出はこのためにある」とロジックを理解することができ、演技を改善していくことができました。新たな出会いによる新たな価値観が生まれたこと、そして挑戦によって理解ができるフィールドが増えたこと。演技という新たな分野に飛び込んだことは僕にとって大きな成長となりましたね。
さて、この6回の連載で「サステナビリティ入門」と題してさまざまなことを紹介してきました。みなさんとサステナビリティの出会いの場として、少しでも興味を持っていただけましたでしょうか?僕から最後に伝えたいのは、「サステナビリティは気軽に取り組める」ということです。授業やビジネスの場で登場することが多い言葉なため、どうしても重く感じ、なんとなく「意識高い系」のように捉えられやすい概念ですが、実はそんなことありません。今回紹介した通り、趣味の延長として気軽に取り組んでもいいですし、関連キーワードを知らなくたって恥ずかしいことではありません。実際僕も経営者として会社を動かしていますが、サステナビリティに関しては知らないことだらけです。でも、地球環境に負荷をかけたくない、人が幸せで平等な社会でありたいという想いは抱いています。きっと、その想いを胸に活動していけばそれはサステナビリティにつながるし、その活動を通して自然と知識が深まっていくかもしれない。身近なことから一歩ずつ、自分たちの生活をもっと心地良くするくらいのつもりで、取り組んでみてください。それでは最後はクイズでお別れしましょう。さようなら!
答えは②のフランス。
※1 日立ソリューションズが運営するオープンなコミュニティ「ハロみん」
https://future.hitachi-solutions.co.jp/community/