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教えて!クイズ王 林輝幸と学ぶサステナビリティ入門

僕がめざすのは、国籍や障がいの有無を超えてクイズを楽しめる未来。|林 輝幸

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サステナブル社会の実現の第一歩は、めざすべき未来像を描くことから。そこで今回は、日立ソリューションズが2030年の未来像を描き、実現のために取り組む事例や、林さんが考える理想の未来についてご紹介します。

※本記事は2024年11月に掲載されたものです。
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    林 輝幸

    クイズ制作集団「Q星群」代表

    富山県出身。2016年、東京大学に現役合格。クイズ研究会(TQC)に所属し、競技クイズを始める。クイズ番組『東大王』(TBS系)に東大王チームとして出演。東京大学文学部卒業後は、クイズプレーヤーとして『Qさま!!』(テレビ朝日系)などクイズ番組を中心にテレビ出演。また、クイズ制作集団「Q星群」を立ち上げ、クイズを軸とした事業やイベントなどを行っている。

東大合格も「バックキャスティング」で叶えた。

今回は、SX(Sustainability Transformation)実現のために有効なバックキャスティングという手法や、僕が考える理想の未来についてご紹介していきます。

その前にまずは、前回のクイズの答えを発表します。

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答えは②マンダラチャートです。全ての野球経験者が憧れる世界最高峰の舞台、メジャーリーグでプレーする大谷翔平選手。2021年はオールスター史上初の投手と野手両方で選出され、リーグでもMVPを獲得。2023年はアジア人初の本塁打王に輝き、2度目のリーグMVPを獲得するなど凄まじい活躍を見せています。

そんな大谷選手は、高校1年生のときから「ドラフトで8球団から1位指名を受ける」という具体的な夢を描いていました。その夢を叶えるために用いたのが「マンダラチャート」です。表の真ん中に具体的な目標を書き、その周囲8マスに目標達成のために必要なことを設定。そこからさらに具体的な必要事項を記入し、そのとおりに実行していくという手法です。大谷選手の場合、「ドラフトで8球団から1位指名を受ける」という夢を真ん中に書き、それを達成するために必要な要素「体づくり」「コントロール」「キレ」「スピード160km/H」「変化球」「運」「人間性」「メンタル」と、それをさらに具体化した項目を記入しました。

結果的に、さまざまな事情からドラフトでは単独指名でしたが、掲げた夢と同等以上の活躍を果たしていますよね。

このように、めざす未来像を描き、そこから逆算して目標や行動を決めていく手法をバックキャスティングといいます。

この手法は、主にエネルギー政策や環境政策などの領域において1970年代から発展してきました。もともと用いられていた、現在の延長線上から未来を予測する「フォアキャスティング」では、これからの数十年間で不連続に起こる環境・技術上の変化を予測できず、課題解決のための斬新なアイデアも発想しづらい。そこで、将来の予測よりも目的の達成に焦点を当て、画期的なアイデアを生み出しながら自ら変化を起こしていく「バックキャスティング」が注目され始めました。(※1)

※1 バックキャスティングとは:パーパス・戦略策定における活用方法|公益財団法人日本生産性本部
https://www.jpc-net.jp/consulting/report/detail/post_11.html

SDGsが発表されて以降、変化が激しく予測が難しい環境問題への親和性の高さから、さらに注目されるようになっていますね。

行政や企業で多く用いられる手法ですが、大谷選手のように個人の夢を叶えるためにも有効です。第一回でも少し触れましたが、僕自身も、東京大学合格のためにバックキャスティング手法を用いました。さて、ここでクイズです。

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答えは①科目ごとの目標点です。当時、東京大学の二次試験は440点中250点くらいが合格のボーダーラインとされていました。そこで、自分の適性や得意科目と照らし合わせながら、まずは250点を取るために各科目で何点ずつ取ればいいのかを算出しました。科目で「ざっくり何点」と決めるのではなく、「設問1と2は絶対に正解する」「設問3は時間がかかる割に難易度が高いから、落としてもいい」など、試験を具体的に想像しながら定めました。

その後、3年間を1年ごとに分割して「1年生でこの科目を極める、次の年はこれ、最終年は残りの科目」と設定。さらに1年間を12ブロックに分け「これくらい時間を使って、この順番で、この数の問題集を解く」と細かく行動を定めていきました。年間で取り組む科目を絞っていたため、全科目の総合点で合格判定が出る模試ではそれほど良い結果が得られませんでしたが、それも自分のプランに忠実に進められている証拠という風に捉え、これまで通りに取り組み続けました。

「この模試で点数が低かったから、この教科に比重を置こう」など、状況に応じて手法をコロコロと変えるのではなく、めざす未来像から逆算した行動に沿って真っ直ぐに勉強ができたからこそ、最後まで焦ることなく受験に臨めたと考えています。

理想の未来は、画期的なアイデアから生まれる。

さて、そんなバックキャスティングの手法ですが、SXの実現をめざす日立ソリューションズでも採用されています。

VUCAと呼ばれる激しい環境変化の時代の中で、いったん立ち止まって自らの過去を振り返るとともに、SXが実現している未来の姿を考える。そんな目的で、2023年に開始されたビジョン・パーパス策定プロジェクトにおいてバックキャスティングの手法が用いられました。

プロジェクトでは、これからの未来を担う若手社員を中心に、政治、経済、社会、技術の視点から、SXが実現している2030年の理想の未来像を思い描き、その未来像から「どこへ向かうべきか」「何をするべきか」を導き出し、ビジョンやパーパスとして落とし込みました。

浮かび上がった未来像は、具体的な文言とイラストに落とし込まれています。

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日立ソリューションズが考える、SXが実現している未来とはどのようなものなのでしょうか?バックキャスティングで考えられたアイデアの面白さを知っていただくため、いくつかご紹介していきます。

僕が気になったのは、「みんなの遊びが環境保全活動になる」です。これは、環境を意識することが当たり前になり、娯楽を含めたあらゆる活動から環境保全に貢献できる状態を表しているとのこと。環境保全活動というと、方針を立てそれに沿って取り組みを行う難しい活動のイメージがありますが、遊びそのものが活動になれば、そのハードルは非常に低くなりますよね。

僕も以前テレビ番組に出演した際に、SUP(海や川、湖の水上でサーフボードの上に立ち、一本のパドルを使って水面を進むアクティビティ)で川を渡りながら水辺のゴミ拾いをするという企画に参加しました。ゴミを意識的に探すことで周囲の自然を眺めるきっかけになりますし、水辺までバランスを保ちながら近づくことも面白いため、「環境を守っているんだ!」と気負わずに、楽しくゴミ拾いができました。正直、普段川岸を歩いている時は、ゴミを探して拾うということまではできていませんが、アクティビティとしてなら楽しんで積極的に取り組めたことを覚えています。

このように、サステナブルな考え方は私たちが普段楽しんでいるレジャーや観光にも浸透してきており、経済を活性化させつつ環境や文化にも配慮する取り組みは「サステナブルツーリズム」と呼ばれています。昨今、世界中の観光地でサステナビリティに配慮したサービスが提供されており、「みんなの遊びが環境保全活動になる」が実現する日も近いかもしれません。

さて、ここでクイズです。

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答えは②箱根町です。主催である、観光の国際認証団体グリーン・デスティネーションズ(本部:オランダ)は、次のようなことを評価しているようです。「山間部に位置し坂や階段が多い土地でありながら、観光と福祉を両立させ、誰もが気兼ねなく楽しめる『やさしい観光地』としてユニバーサルツーリズムを推進していること。」つまり、子どもからお年寄りまで、身体的な特徴にかかわらず、できるだけ多様な人が楽しめる環境を提供しているということですね。日本有数の観光地が国際的な評価を受けているのはすごく嬉しいですし、日本人として、箱根を好きな人が世界中にもっと増えるきっかけになるかもと考えるとワクワクします。(※2)

※2 2023 箱根町|Green Destinations Japan
https://greendestinationsjp.org/top100-2023-hakone-town/

次に紹介するのは、「都市と地方の医療格差がなくなる」です。医療は福祉の一つであるため、均一化されている状態が理想だと僕は思うんです。ところが、今はまだ医療格差が存在しています。解決のために、地方の医師や看護師が都市部の学会や研修に参加して、最新技術を持ち帰るということに取り組んでいますが、距離や時間の制限からなかなか頻繁にいくことができないのが現状です。日立ソリューションズは、その課題を解決して格差のない未来をつくるための一歩目を踏み出しています。それが、医療機器メーカーとともに開発されたMR(Mixed Reality)技術を用いたトレーニングツールです。

MRとは、現実世界と仮想世界を融合させ、ユーザーが現実とデジタルコンテンツを同時に体験できる技術。ユーザーは現実の空間内で仮想オブジェクトを操作したり、情報を表示させたりすることができます。

詳しい説明は省略しますが、このツールはMRレンズを装着することで、熟練の看護師の視線の動きや手の動きをなぞりながら実践的なトレーニングができるというもの。つまり、熟練の看護師に直接習いに行かずとも、普段の職場から本格的なトレーニングを受けられるのです。

この事例の面白いところは、ゲーム実況者が配信画面に視線の動きを表示するために装着する「アイトラッカー」から着想を受けていること。僕も普段ゲーム配信をしていますが、まさかゲーム配信と医療が結びつくとは考えてもいませんでした。

この事例について学んでいるときに思い出したのですが、僕自身も以前思わぬところで点と点がつながった経験があります。それは「超いじわるクイズ王」という本を製作していたときのこと。小学生向けのひっかけクイズをいくつも考案したのですが、「これは子どもには難しすぎるよね」とボツになったものもありました。ところが、後々まったく別の仕事でクイズを考えているときに「あの時ボツになったものが今回はドンピシャかも!」と思い出し活用できたのです。一つの物事に対しても、視点を変えれば新たな活用法が見つかる、という面でMR技術の事例に似ているなと感じました。

詳しくはこちら

ワクワクをサステナブル社会の原動力に。

さぁ、ここまで日立ソリューションズが描く2030年の未来像を紹介してきましたが、サステナブルな社会の実現には個人単位で理想を描くことも重要です。ということで、僕が考える理想の未来像について話していきましょう。

僕の理想は「型にはまらない社会」です。近年、多様性を推進する機運が高まっていますが、まだまだ「こうあるべき」という社会の当たり前みたいなものってあると思うんです。例えば、「就職にはこの分野の勉強が有利だから取り組むべき」「社会人は元気はつらつで明るく元気であるべき」などですね。でも、本当はそんな「あるべきこと」なんてなくて、自分のありたい姿でいることが一番大切で、だからこそ輝くことができると思うんですよね。僕自身、東大に入って、テレビ番組に出て、芸能事務所に所属してという、自分ならではの道を進んできたからこそ、満足感のある人生を送ることができています。僕自身がクイズやタレント活動を通して、型にはまらない姿を見せることで、誰もが自分らしくいられる社会の実現をめざしていきます。

もう一つ、クイズというジャンルにおいてのめざす未来像も考えてみました。クイズは世界中で愛されていますが、全世界の人が同等な条件で遊べるようにはまだなっていません。

例えば、言語が異なると問題を理解できなかったり、身体的な障がいがある方は見えなかったり聞こえなかったりするなどがその例です。生まれ持った特徴や障がいに関わらず、あらゆる人が混ざり合って同じクイズを楽しむことができる。そんな社会が理想ですし、いつかそんなクイズを開発してみたいと考えています。

今回はバックキャスティングや、実際の事例についてご紹介してきましたが、みなさん興味を持っていただけたでしょうか?

バックキャスティングのポイントは、ワクワクしながら取り組むことだと考えています。「どんな未来になったらいいだろう」「自分はどんな社会を生きたいだろう」。そんな風に一人一人が夢を膨らませながら理想の未来を想像して、実行に移していく。ワクワクが、サステナブルな未来の原動力になったらいいですね。みなさんもぜひ未来像を描いてみてください。

次回は、企業のサステナブルな取り組みに対する外部からの評価や、そのためのデータ開示をテーマに話していきます。一見難しそうな内容に思えますが、僕が運営するQ星群の秘密や「投資は推し活」という持論を交えながら話していきますので、ぜひご覧ください。それでは、最後にデータつながりで、IMD世界デジタル競争力ランキングに関するクイズでお別れしたいと思います。IMD世界デジタル競争力ランキングとは、デジタル技術をビジネス、政府、社会における変革の重要な推進力として活用する能力と態勢を、国・地域ごとに測定、比較するものです。クイズの答えは次回の記事で発表します。お楽しみに!

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