対話型AIデバイス「バーディ・トーク」を活用するシリーズ、今回は「様々なライに対応する」です。練習場では常に平らなところから打てますが、コースに行けばほとんどが傾斜地からのショットとなります。そこで武智さんが対話型AIデバイス「バーディ・トーク」に質問し、回答を白戸プロが検証していきます。こうして出たショットごとのデータの蓄積で、AIを武智さんの優秀な専属キャディーに成長させようというのがシリーズを通してのテーマです。その模様を一緒にのぞいてみましょう。
白戸 由香
プロゴルファー
しろと・ゆか／青森県南津軽郡出身。日立ソリューションズ所属プロ。日立ソフトウェアソフトボール部で活躍した後、1993年にプロゴルファーへと転向。2014年のレジェンズツアー「シブヤカップ」で初優勝を飾った。17年には「ふくやカップマダムオープン」と「シブヤカップ」で2勝を挙げ、レジェンズツアーの賞金女王にも輝いている。レジェンズツアー6勝。22年の「JLPGAレジェンズチャンピオンシップCHOFUカップ」でも4位の功績をあげた。
武智さん
ゴルフ歴6年（平均スコア85）
傾斜地からのショットでは、フィニッシュが崩れるようなスイングではダメ。AIが言う通り、コンパクトに振るのが基本です。
左足上がり（アップヒル）のライの場合、厳密にボールの位置を決めたことはないです。あまり左に置きすぎると、ボールが左に行きそうだな、という感じがするので中央に寄せることはしていたように思いますが......。
左足上がりのショットでは、武智さんが感じている通り、アップヒルのライでボールを左足寄りに置くとフックしやすくなります。それを予防するためにはボールを右足寄りにセットし、ターゲットを右にセットすることが肝心です。
まずは傾斜の度合いと残り距離をインプットして、ボールの位置と目標方向を決めてください。
短く握ってコンパクトなトップ①をつくれるからこそ、安定したフィニッシュ②が完成する。傾斜地での大振りは禁物。
アップヒル、すなわち左足上がりのショット以外に、大きく分けると3種類のライが存在します。
左足下がり（ダウンヒル）のライ、さらにはつま先上がりとつま先下がりのライです。それぞれに対応法が違います。一つひとつ、見ていくことにしましょう。
左足下がりのライでは、右膝をより深く曲げ、肩は水平に近い形でアドレスします。
重心配分は左6、右4で構えてください。
インパクトゾーンの手前が高くなっているため、ダフりやすくなっています。
それを避けるためにも、クラブは通常よりも短く握ってください。
左足により多くの重心がかかっているため、インパクト後は体が左に流れます。
無理に踏ん張ったりせず右足を飛球線方向に踏み出してください。
つま先上がりのライでは、体とボールの距離は近くなります。
そのため、アドレス時の前傾角度は浅くなります。膝も伸び、直立姿勢に近づきます。
ボールと体の距離が狭まったことに対する対策は他にもあります。
左足下がりと同様に、グリップエンドを余し、クラブを短く握ってください。
つま先上がりの場合、体に対してボールも高い位置にあるため、スイング軌道は通常よりフラットなものになります。
つま先下がりのライでは体とボールの距離が遠くなるため、クラウチング（前傾姿勢）をより強める必要があります。膝を曲げる角度も深くなります。
9番アイアンの距離でしたが、ライを確認して8番で打ちました。
つま先下がりのライからは、大きめのクラブでコンパクトに打つことを心がけているからです。
つま先下がりからのショットでは、スイングプレーンが通常よりもアップライトになります。
左手の動きも、シャドースイングで確認してください。
【バーディ・トークの機能】
ラウンド中に音声で質問するだけで、AIが音声で回答する小型デバイス。状況に応じた打ち方などのアドバイスから、不調の対策、ルールなど、その場で感じた疑問に対する答えをすぐに聞くことができます。
※一部、競技では使えない機能があるのでご注意ください。
「ゴルフの聖地」をめざす千葉県市原市の取り組みが、注目を集めています。千葉県に在住在勤の女子プロゴルファーたちが、地元の小学生にスナッグゴルフを直接指導しているのです。公園でゴルフを思いっきり楽しみ、教室では給食を一緒に食べながらゴルフの楽しさ、面白さを共有します。市と教育委員会、プロゴルファー、学校が連携した持続的な試みをレポートします。
2024年の晩秋、平日の朝。千葉県市原市のちはら台公園では、「スナッグゴルフ」に興じる小学生の歓声がとびかっていました。
子どもたちの手に握られていたのはプラスチックでできたゴルフの入門用具。これでテニスボールより少し小さいボールを打ち、ターゲットにボールがくっつけばホールアウトというルールです。
女子プロゴルファー（中央）の指導のもと、スナッグゴルフに興じた牧園小の児童たち
（2024年11月27日 千葉・ちはら台公園 写真提供：清流舎）
市原市におけるこうした試みは、令和6年度だけで10回を数えます。それには32クラブ33カ所と日本一ゴルフ場を抱える自治体ならではの事情がありました。
人口約27万人の市原市に、年間約176万人ものゴルファーが来場。この際に支払われたゴルフ場利用税の7割が、市原市に地方交付税として入りました。その額は実に6億8350万円に上ります。
ふるさと納税でもゴルフボールの返礼品やゴルフ場利用券などが人気を博しており、今後も市原市に多くの収入をもたらす見込みです。
8人の女子プロゴルファーたちと対面した牧園小の児童たち。すぐに打ち解け、ゴルフの面白さを堪能した（同）
にもかかわらず、この日の講師役の女子プロゴルファーが投げかけた「ゴルフをしたことがある人〜？」という問いに手を挙げたのは34人中3人。
市原市が憂慮しているのも、ゴルフが身近でない問題。ゴルフ場のコース管理にあたるスタッフの高齢化が急速に進行しており、深刻な人手不足が生じています。
子どもたちにとっても、ゴルフ場はあくまで「行ったことのない未知の場所」。クラブを握ったこともないゴルフというスポーツは、野球やサッカーよりも、はるかに遠い存在であり続けていたわけです。
こんな現状を前にして手をこまねいているわけにもいきません。すでに市内のゴルフ場では、高校生の職場見学バスツアーも実施。就職しているＯＢと交流を深め、仕事の内容など生の情報を提供しています。
小学生の頃からゴルフに接していれば、地元のゴルフ場に通う職住近接の生活を選択する若者も増えていくはず。そうなれば団塊の世代が後期高齢者となり、本格的な超高齢社会となる「2025年問題」も恐るるに足らずです。
小出譲治市長自らが「ゴルフの聖地をめざす」と宣言し、教育委員会も授業の一環として40校全部でゴルフ体験の実施を確約している市原市。
すでに日本プロゴルフ協会、千葉県プロゴルフ会と千葉県女子プロゴルフ会とも連携協定を結んでおり、この日のスナッグ体験にはおなじみの白戸プロも講師として参加していました。市原市のサステナブルな取り組みにより「ゴルフの聖地」としての基盤は着実に固まりつつあります。
教室のモニターには女子プロゴルファーへの感謝のメッセージが
