日立ソリューションズは2016年から、「個人の幸せ」と「企業の成長」の好循環をめざし、全社運動として働き方改革を推進してきました。そのための施策を継続した結果、21年の段階で働きやすく、風通しの良い職場づくりという観点で大きな成果が得られました。22年からは個の自律や働きがい、成長支援などにフォーカスした施策を強化しています。EX施策を実行に移す上での特徴的なアプローチとしては、人事総合ソリューション「リシテア」などを担当する事業部とも連携していること。どのような効果が得られたのでしょうか。
小山 真一
株式会社日立ソリューションズ
人事総務本部
シニアHRテックスペシャリスト
村井 睦子
株式会社日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部 スマートワークソリューション本部 HRソリューション開発部
カスタマーエクスペリエンスグループ
グループマネージャ
―日立ソリューションズが推進するEX(※1)向上への取り組みについて、概要をお尋ねします。
小山:2016年から、「個人の幸せ」と「企業の成長」の好循環をめざし、全社運動として働き方改革を推進してきました。そのための施策として柔軟な働き方を実現する制度や環境整備、生産性向上施策などによる労働時間の短縮、コミュニケーション活性化などがあります。こうした施策を継続した結果、21年の段階で働きやすく、風通しの良い職場づくりという観点で大きな成果が得られました。22年からは個の自律や働きがい、成長支援などにフォーカスした施策を強化しています。日立ソリューションズで働くからこそ得られる価値や体験を、より充実させようということです。
―EX施策を実行に移す上での、特徴的なアプローチはありますか。
小山:私自身は人事部門に所属していますが、人事総合ソリューション「リシテア」などを担当する事業部とも連携しています。新たな施策を実行に移す時には、何らかのシステムが必要となるケースがあります。その場合、リシテアを含め、お客様に提供しているソリューションを社内や人事部門内で利用できるか、または自社向けのシステム開発を事業部に依頼するかどうかも考えます。
村井:自社開発の製品・サービスについては、自社でも活用し、人事部門や従業員からの意見をもとに製品の改善を繰り返しています。ただシステムを提供するだけではなく、私たちが試行錯誤の中で学んだ業務ノウハウも一緒にお客様に提供しています。
―では、具体的なEX施策についてうかがいます。まず、人財マッチングについて教えてください。
小山:当社には本人の希望に基づくマッチング制度として、社内公募や社内FA(※2)、シニア層向けのプロフェッショナルエルダー制度などがあります。22年には、若年層向けのジョブ・マッチング制度もスタートしました。これらの狙いは、本人が自らジョブを選択することで働きがいをより高めてもらうこと。自律的なキャリア形成の環境づくりともいえます。最初に事業部に開発してもらったのは、シニア層向けのマッチングシステムです。当社では20年、雇用延長を機にプロフェッショナルエルダー制度を導入しました。当初、人事部門と各現場とのやり取りは、情報を暗号化しメールベースで行っていました。人事部門が名簿を各部門に送り、各部門から「この社員の詳しい経験やスキルを知りたい」と要望があれば、人事部門は関連情報を集めてメールを送り返します。ですが、この作業はシニア層の人数が増えるにつれて業務負荷は重くなります。業務スピードやマッチング精度の向上、セキュリティリスクの低減を図るためにはシステム化が必須と考え、事業部に開発を依頼し、20年に社内導入しました。
村井:最初はシニア層向けのマッチングシステムでしたが、その後、対象を社内公募制度や若年層ジョブ・マッチング制度にも広げて機能を拡張しました。近年、人的資本経営が盛んに語られるようになり、多くの企業がキャリア自律への関心を高めています。こうした社会的な背景もあり、事業化に際しては様々なマッチング制度、あるいは人事異動に対応する機能を持たせました。こうして、「リシテア/人財マッチング」は23年7月、クラウドサービスとしての提供を開始しました。
―人財マッチング制度、およびそのシステムがもたらす効果はどのようなものでしょうか。
小山:システムは制度の円滑な運用をサポートし、業務効率化に寄与しますが、あくまでも手段です。また、私たちは人財マッチング制度がキャリア自律を後押しすると考えています。例えば、若年層ジョブ・マッチング制度の導入後には若年層の離職率は低下しました。ですが、他の様々な要因も関係しているので、「この制度を導入したから自律度が高まった」とは、まだまだいえないでしょう。
―女性活躍支援の分野でも新サービスが登場しました。まずは背景としての環境変化をお聞きします。
村井:日本の女性就業者数は13年から急増し、近年は3000万人程度で推移しています。当社を含め、多くの企業は女性がこれまで以上にいきいき働けるような職場づくりに取り組んでいます。その際、女性の健康リスクは避けて通れない課題です。18年の経済産業省の調査によると、女性従業員の約5割が、「女性特有の健康問題により職場で困った経験がある」との結果も出ています。企業としては女性の健康リスクを踏まえた上で、各種のEX施策に取り組む必要があります。こうしたニーズが高まると考え、女性の健康相談などにも対応する「リシテア/女性活躍支援サービス」を23年3月にリリースしました。
―開発において工夫した点などをうかがいます。
村井:日本最大規模の周産期医療機関で、中部地方を中心に拠点を展開している医療法人葵鐘会様との協業が大きなポイントです。双方の強みを組み合わせることで、サービスを実現できました。サービス内容では、女性のプライバシーを厳守した上で、気軽に健康相談ができるよう工夫しました。相談内容が会社に伝わることはありません。ユーザーはPCやスマートフォンで、助産師や看護師との相談サービス(30分)を利用できます。スマートフォンから気軽に利用できるように、スマートフォン用アプリも開発しました。
―日立ソリューションズでは導入済みですか。
小山:全社的に導入しました。実は、リリース前には社内でのテストも行っています。女性社員約70人を対象にした、3カ月間の実証実験です。アンケート調査の結果はおおむね良好でした。「相談サービスが常時使えた方がよい」との回答は93%、「業務パフォーマンス向上・労働時間確保につながる」との回答は81%でした。
村井:現在、お客様への提案活動も本格化させており、いくつかの企業では実証実験が進行中です。お客様からはポジティブな声をいただいており、確かな手ごたえを感じています。女性活躍推進は日本の社会課題の1つです。最初の一歩を踏み出したばかりですが、社会課題解決に向けて貢献していきたいと思っています。