Hitachi
EnglishEnglish お問い合わせお問い合わせ
メインビジュアル メインビジュアル
グローバルトレンドレポート

北米カンファレンスから紐解く AIとデータ利活用のトレンド

103回表示しました

AIを企業成長につなげようという取り組みは世界的な潮流です。その前段には、日々の事業活動で生み出されるデータをどう取り扱い、どう格納していくのかという課題があり、データウェアハウス(DWH)やデータレイクといったデータ基盤サービスが注目されています。2012年創業のスノーフレイク社と13年創業のデータブリックス社は、いずれも米国で誕生したデータ基盤構築会社です。両社が24年6月に開催した年次カンファレンスの内容をご紹介しながら、AIおよびデータの利活用に関するトレンドを紐解いてみたいと思います。

※本記事は2024年10月に掲載されたものです。
  • collection35_profile_kawamorita_280_280.jpg

    川守田 慶

    Alliance Manager
    Business Development and Alliance Group
    Hitachi Solutions America, Ltd.

    2009年に現日立ソリューションズに入社後、20年まで統合システム運用管理「JP1」の開発・保守に従事。21年まで自社商材のプロモーション活動を経験した後、24年3月までブロックチェーンの自社サービス事業の立ち上げにおいてプロジェクトマネージャーとして開発に従事。24 年4月からHitachi Solutions Americaに出向。DevSecOps、Data Management、AIにフォーカスし、トレンド調査やスタートアップ発掘を担当。

実際の利活用法を分かりやすく紹介

スノーフレイク社は6月3日から6日に、米国サンフランシスコのモスコーニ・センターで「Data Cloud Summit 2024」を開催しました。同社技術の最新情報やユーザ事例紹介など450以上のセッションが行われ、180社以上のパートナー企業が参加。トレーニングや認定試験も提供されました。来場者数は日本からの参加250人含む約2万人でした。

テーマは「BUILD THE FUTURE TOGETHER WITH AI AND APPS(AIとアプリで未来を共に築く)」。同社CEOのSridhar Ramaswamy 氏は、テクノロジーはシンプルで効率的であるべきであり、Snowflake はすべての機能が1つのプラットフォームに統合された企業向けデータ基盤である点を強調していました。また、キーノートでは、データ基盤の強化、アプリケーション、AIの3つをテーマにSnowflake の機能強化が発表され、Snowflake がDWHやデータレイクといったデータ基盤だけでなく、データを活用したアプリケーションプラットフォームの機能やAIを活用した機能の強化を推進している様子がうかがえました。

Snowflake の機能紹介で印象的だったのが、架空のキッチンカー企業を舞台にしたデモンストレーションです。その架空企業には、SNS上のコメントなど大量の非構造化データを活用できていないこと、冷めた商品を提供したとの悪評がSNSで広がっていること、という2つの課題がありました。そこで、前者については、顧客レビューを分析するアプリなどを開発して顧客体験の向上を図ることとし、後者については、AIを使って商品が冷めていたと投稿した人物と周辺関係者を特定し、全員に無料の商品を提供することで影響を最小限に抑えたという内容でした。

いずれもスノーフレイク社の機能を活用しており、これらの機能を活用し効果的に課題を解決できることが実演形式で分かりやすく示されていました。

collection35_img02_570_380.jpg

「Databricks Data + AI Summit 2024」のキーノート会場の様子。
データとAIの民主化をミッションとして、Mosaic AIの機能強化など、様々な発表があった

データとAIの民主化を実現するために

データブリックス社は翌週6月10日から13日に同じ会場で「Data + AI Summit 2024」を開催しました。最新技術や事例紹介だけでなく、トレーニングや認定試験も提供しており、トレーニングは連日満席でした。イベント来場者数は約1万6000人で、日本からの参加は約280人でした。

今年のテーマは「Data Intelligence for all(データインテリジェンスをあらゆる組織に)」。Databricks はDWHやデータレイクなどデータ利活用に必要なあらゆる機能を備えた統合環境で、同社の言う「Data Intelligence」とは統一基盤のデータレイクと生成AIとを組み合わせて組織全体で共有することを意味します。

キーノートに登壇したCEOのAli Ghodsi 氏は同社ミッション「データとAIの民主化」を実現するための課題として、生成AIの導入、セキュリティとプライバシー、データ資産の断片化という3点を挙げ、「Data Intelligence でこれらの課題に対処する」と述べました。

また、AIシステム構築ツール「Mosaic AI」の機能強化が発表されました。注目すべきは同社CTOのMatei Zaharia 氏らが提唱した複合AIシステムの構築が可能になった点です。複合AIは複数のLLMなどのモデルや検索システムなどのコンポーネントを組み合わせることで、単一のモデルよりも優れた性能が期待できるというもの。企業が事業活動で使用するAIは一般的なデータの学習だけでは不十分で、社内規則や情報資産などを活用する必要があり、今後は複合AIの影響力が高まると思われます。

さらに、ダッシュボードや会話型インターフェースを備えたDatabricks AI/BI などが発表され、Databricks においてもDWH・データレイクの周辺機能の拡張を推進している様子がうかがえました。

collection35_img01_570_380.jpg

カンファレンス最終日の午後に開催された日本パートナー向け振り返りセッション。
カンファレンスの内容の理解を深められるよう、キーノートのポイント解説やグループディスカッションなどが実施された

日米の違いを踏まえつつ日本市場に合った活用方法を模索

もともとスノーフレイク社の製品にはクラウドを活用した導入の容易さと使いやすさがあり、データブリックス社の製品には幅広いニーズに対応可能な柔軟性と拡張性があるなど、それぞれに特徴があります。その傾向に変わりはありませんが、AI機能やDWH・データレイク周辺機能の拡張を推進している点は共通しており、どちらも着実に進化していると感じました。また、両社とも日本からの参加者向けにディナーを提供したり、振り返りセッションを開催したりと、日本市場が重要視されていると感じました。

日本では両社をDWHやデータレイクとして活用し、エンドユーザがBI(ビジネスインテリジェンス)製品を介してアクセスする事例が多いですが、AI機能やDWH・データレイクの周辺機能としての両社の活用は米国に比べて少ない印象があります。

今後、日本市場でもこれらの活用を取り入れていくことで、両社によるデータ利活用の価値が更に広がる可能性を感じました。我々がミッションとしている米国でのスタートアップ発掘やトレンド調査を通じて、日本市場に合ったデータ利活用のツールや活用方法を提案していきたいと考えています。

前の記事
記事一覧
次の記事
twitter facebook
その他のシリーズ
おすすめ・新着記事
PICKUP