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指導者を信頼し、選手に寄り添う──
共に高みをめざすために

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北京パラリンピックで金メダルを獲得し、2022-23年シーズンのワールドカップで総合優勝を果たした川除大輝。その川除を中学時代から指導をしているのがスキー部監督である長濱一年だ。勝ち続けるために、選手と指導者はどういう関係性でいればいいのか。「世界一の選手」になるための努力、指導とはどういうものなのか――。共に高みをめざすために、二人の思いを聞いた。

※本記事は2023年9月に掲載されたものです。
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    川除 大輝

    2001年富山県生まれ。15-16年シーズンのアジアカップで海外大会デビュー。北京パラリンピックで金メダル獲得。22-23年シーズンのワールドカップで総合優勝を果たす。

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    長濱 一年

    1969年青森県生まれ。リレハンメル五輪、長野五輪にクロスカントリースキー選手として出場。オリンピックのナショナルチームコーチを経て、2014年からチームAURORAのスキー部のコーチとなり、18年から監督に就任。

戦う中で実感した自己の成長

クロスカントリースキーには、「クラシカル」と「フリー」の2つの競技スタイルがある。クラシカルは、スキー板を平行に保ち、足を前後に動かして進む走法による競技、フリーは走法に制限のない競技である。

日立ソリューションズのパラスポーツチーム「チーム・アウローラ」スキー部に所属する川除大輝は、2022年の北京パラリンピックの20kmクラシカル立位で金メダルを取り、この競技で世界の頂点に立った。一方で、フリー競技に対しては苦手意識があったという。その意識を抱えながら挑んだ22-23年シーズンのクロスカントリースキーワールドカップ。川除はクラシカルとフリー両競技の累積ポイントでトップとなり、シーズン総合優勝を果たした。

フィンランド、スウェーデン、アメリカと4カ月にわたって転戦する中で、フリーへの苦手意識がどんどん払拭されていったと川除は言う。「戦いながら成長することができた」のだと。

「滑るコツのようなものを確実につかんだ気がしています。それをさらに伸ばしていくことができれば、2年連続優勝も夢ではないと思っています」

北京大会以前の川除からは、恐らく出てこなかった強い言葉だ。パラリンピックに7大会連続出場し、5個のメダルを獲得してきたレジェンドにしてチームの絶対的エース、新田佳浩の背中をずっと追いかけてきた。しかし、北京大会で大きな結果を出してからは、これまでの新田同様、チームを引っ張っていける選手にならなければならないという自覚が芽生えた。今の川除にとって、新田は依然としてめざすべき目標であり、頼もしい先輩である一方で、競技においては倒さなければならないライバルでもある。

世界一の選手になるには世界一の努力が必要

川除が長濱一年監督の指導を受けるようになったのは中学時代だった。現在も合宿や遠征などで年間230日ほどの時間を共に過ごしている。新田、川除というトップアスリートを指導してきた長濱だが、強い選手を育成する方法論があるわけではないと話す。

「選手はみんな個性や持ち味が異なります。選手たちと多くの時間を過ごす中で、一人ひとりに寄り添い、理解して、必要なサポートを提供していくこと。それ以外の指導法はないと思っています」

世界一の選手になるためには、世界一の努力が必要──。川除は、長濱がたびたび口にしてきたその言葉を胸に刻んでいる。

「この言葉はアスリートだけでなく、すべての人に当てはまる言葉だと思います。練習が嫌になった時は、いつもこの言葉を思い出すようにしています」

上をめざすための努力はむろん、指導者にも求められる。長濱がチーム・アウローラの監督に就任して5年。54歳という年齢を迎えて、「いつか、雪の上に立てなくなる日が来る」という気持ちが強くなってきている。

「指導者としての哲学や、勝つための方程式を確立して、次の世代の指導者に伝えていきたい。そう思っています」

チームを強くするために、そして支えてくれている人たちの期待に応えるために──。その思いが現在の2人を支える。川除はこの4月、大学を卒業し、日立ソリューションズに入社した。チーム・アウローラにおいても、ジュニアメンバーから正メンバーとなった。社員になってみて、改めて会社におけるサポート体制のありがたさを感じるようになったと話す。一方の長濱は言う。「選手は強くなればなるほど、感謝の気持ちを忘れないようにならなければならない」のだと。

共に前に進み、共に次の高みをめざすための2人の努力と修練が、これからも続いていく。

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