COVID-19の影響でカンファレンスは軒並み中止になりましたが、徐々にオンラインで再開され、21年後半からはインパーソン(じかに、生で)のカンファレンスも再開、22年はほぼ復活したといってよいでしょう。オンラインカンファレンス・イベントを経て、これらの在り方も変化してきていると感じます。今回はアフターコロナを見据えたカンファレンス・イベントの在り方について考えてみます。
北林 拓丈
Hitachi Solutions America
Vice President of Business Development and Alliance Group
2000年に日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(現・株式会社日立ソリューションズ)にSE職で入社。JavaエンジニアとしてECサイト開発・運用に3年間携わり、その後米国ITベンダーの製品開発研究所にて1年3カ月の海外業務研修。日本帰国後は主に大手通信事業者向けの業務・システム再構築プロジェクトにコンサルタント、ITアーキテクト、プロジェクトマネージャーとしてそれぞれ従事。16年からワークスタイル変革ソリューションの事業企画・開発に従事し、20年1月からシリコンバレーに駐在。スタートアップとのパートナーシップや日系企業間連携による新規事業立ち上げ、事業拡大に従事。
2020年にCOVID-19が世界中に拡散、いわゆるパンデミックとなってから3年がたちました。筆者は、米国シリコンバレーにてスタートアップとのパートナーシップや日系企業間連携による新規事業立ち上げ、事業拡大に従事してきました。また、米国先端トレンド調査というミッションもあり、そのために弊社関連領域の主要カンファレンスに参加し、レポートなどで日本に情報を伝えてきました。
筆者自身が米国に赴任したのは20年1月で、赴任してすぐにこの年に参加するカンファレンス・イベントの計画を立てたのですが、残念なことに、2月後半から3月にかけてCOVID-19の影響でカンファレンスは軒並み中止になり、すでに購入していたチケットはもちろん、フライトやホテルもすべてキャンセルされたことを覚えています。その後、カンファレンスは徐々にオンラインで再開され、21年後半からはインパーソン(じかに、生で)のカンファレンスも再開され22年はほぼ復活したといってよいでしょう。
このオンラインカンファレンス・イベントを経て、これらの在り方も変化してきていると感じます。今回はアフターコロナを見据えたカンファレンス・イベントの在り方について考えてみます。
20年は私のチーム全体で35件のカンファレンスへの参加を予定していましたが、うち10件が中止となり、残りはオンラインでの開催となりました。また、6月ぐらいまでに行われる予定だったもののうち半数は時期が延期されての開催となりました。
21年は中止が2件で、ほとんどがオンラインでの開催でしたが、後半になりインパーソンで開催されたものが4件ありました。
22年は21年末にCOVID-19オミクロン株が流行した影響で、特に年初はインパーソンではあったものの、開催直前で企業の出展の取りやめや参加者のキャンセルが相次ぎ、従来よりも小規模で行われたものが多かった印象です。22年の後半になって、従来インパーソンだったものはほぼすべて再開されました。9月に米国サンフランシスコで行われたセールスフォース(Salesforce)の年次カンファレンス「Dreamforce」は約4万人(※1)が参加し、23年1月に同ラスベガスで行われたCESは約11万5000人(※2)が参加しました。どちらもCOVID-19流行前の参加人数には及びませんが、一定数回復したと言ってよいでしょう。
また22年11月にポルトガルのリスボンで行われた「WebSummit」はCOVID-19流行前を上回る約7万1000人(※3)が参加していました。筆者は3つすべて参加しましたが、それぞれ開催されている街全体がこれらのカンファレンス一色になっていたのが印象的でした。朝ホテルの部屋から出てエレベーターに乗り合わせた人が皆同じバッジをしていて、そこからちょっとした会話が始まるといったことはよくあります。
オンラインとインパーソンのカンファレンスは、それぞれにメリット、デメリットがあります。主要なものを下記の表に記します。
実際オンラインとインパーソンのメリット、デメリットは相反するものが多く最近では双方のメリットを活かすべくハイブリッド形式を取るカンファレンスも多いです。インパーソンを前提にしつつもセッションはオンラインでも視聴可能という形式や、インパーソンの会場には一部の参加者が入場でき、それ以外はオンラインでという形式、インパーソンとオンラインの同時ライブ配信を行いつつ、Q&Aはオンラインからのみ受け付けなど様々です。
22年10月にシアトルで行われたマイクロソフト(Microsoft)のカンファレンス「Ignite」では、現地会場がありながらもキーノートセッションはリモートで行われ、それ以外のセッションもきちんと視聴するというよりはフラッと立ち寄れたり、休憩がてら視聴したりできるような会場のつくりになっていました。マイクロソフトとしてCOVID-19流行以来久しぶりのインパーソンイベントだったのでマイクロソフトの関係者と世界中にいるパートナー・技術者との集いの場として重きが置かれていた印象です。
筆者自身インパーソンで実際にカンファレンスに参加して展示やライブ感を楽しみながら、セッションは後日オンラインでオンデマンド視聴をしてレポートをまとめました。
一方、22年10月に行われたメタ(Meta)社のオンラインカンファレンス「Meta Connect」ではオンラインカンファレンスから進化させ、通常のWEBからの参加に加えて、同社のVRヘッドセット「Meta Quest」を装着してVRでの参加も可能としました。イベント会場を歩き回る楽しさがあったり、他参加者の反応が見えたり、会場で動画だけでなくCEOのマーク・ザッカーバーグ氏がアバターで登場して動き回ったり、3Dコンテンツが展開されセッションごとに会場の雰囲気が変わったりとPC画面で見るだけのオンライン参加との違いがあり、今後の可能性を感じました。
23年1月のCESでは、昨年に比べて日本から参加される方も多く見かけました。読者の皆さんの中には今年開催されるカンファレンスに参加を予定していらっしゃる方もいるでしょう。筆者自身、インパーソンでのカンファレンスに参加してオンラインにはなかった臨場感や一体感を味わい、参加者同士のコミュニケーションの時間も増えました。
一方でオンラインでは視聴しながらその場でレポートを作成していたのがインパーソンでは一旦持ち帰ってからレポートを作成したり、オンラインでは開始時間ギリギリまで別のことをできていたのが、インパーソンでは会場までの移動時間や会場内の移動時間がかかったりして、1つのカンファレンスに対して費やす時間は増え、より多忙な日々を送っています。
今後も、オンライン・インパーソン双方の良さをうまく取り入れていくことでより最適なハイブリッドカンファレンスへ進化していくことを期待しています。