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社会起業家は、ワクワクする未来へみんなを誘う存在|半澤 節

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事業を通じて社会課題解決を図る、社会起業家向けのソーシャルビジネススクールを運営し、約8年で120人超の社会起業家を輩出しているのが、ボーダレスアカデミーだ。今回は運営代表の半澤節氏に、社会起業家を育てることの意義と、その要諦をうかがった。

※本記事は2026年2月に掲載されたものです。
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    半澤 節

    ボーダレスアカデミー代表

    はんざわ・たかし
    大学卒業後、株式会社ボーダレス・ジャパンに入社。ミャンマー農家支援やバングラデシュの児童労働問題を解決するための事業、トルコでのシリア難民雇用創出事業などに携わる。帰国後は社会起業家の事業立ち上げ支援を担当。2020年より同社が運営するソーシャルビジネススクール「ボーダレスアカデミー」事業代表として社会起業家育成に尽力。

多様な課題の解決には多様な社会起業が必要

─ボーダレスアカデミーとは、どのような組織でしょうか。

ソーシャルビジネス(社会課題解決を目的にしたビジネス)を展開するボーダレス・ジャパンが運営するソーシャルビジネススクールです。ボーダレス・ジャパンは、2007年の創業以来、世界14カ国で50以上の事業を立ち上げてきました。その過程で確立したメソッドを社会課題解決のための起業を志す人に伝えるため、2018年にボーダレスアカデミーを設立。これまでに125人の社会起業家が誕生しています。

─受講生はどのような方々ですか。

常時80~100人が受講していますが、ビジネスパーソンだけでなく、個人事業主、教員、学生、育休中の方など幅広い方々が集まっています。

コロナ禍前は海外の貧困問題などへの関心も高かったのですが、コロナ禍後は国内課題への関心が顕著になりました。子育て、教育、障がい者福祉、高齢化、環境問題、技能実習生との共生など、多岐にわたります。

すでにビジネスアイデアを持ち、それを形にする方法を求めて来る方もいれば、社会のために何かしたいとヒントを探しに来る方もいます。自社での新規事業開発に活かしたい人や、自分のスキルをより直接的に社会に役立てたいという個人的な目的で参加する人などもいます。

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─半澤さんはどのような経緯で事業代表になったのですか。

学生時代からビジネスを通して貧困問題を解決したいという思いがあり、新卒でボーダレス・ジャパンに入社しました。東日本大震災で地元の宮城県が甚大な被害に遭って辛い経験をする一方、トルコやヨーロッパで厳しい状況に置かれているシリア難民の状況を他人事と思えず、彼らのための仕事と居場所を作る事業を立ち上げました。この事業は黒字化できず、結果的に撤退しましたが、その過程で私自身、大きな学びを得られました。

この経験は、多くの社会起業志望者がぶつかる壁と同質のものでした。そこで、ボーダレス・ジャパン代表の田口一成が、私の経験を起業志望者へ還元してはどうかと、当時自ら手弁当で運営していたアカデミー事業に誘ってくれたんです。私自身も起業志望者が途中で諦めてしまうのはもったいないと感じていましたし、自分の失敗体験を活かして社会貢献を志す人の背中を押せるなら、これも価値ある社会起業だと考え、アカデミーの事業化と運営を担当することになりました。

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─そもそも、なぜ社会起業家を増やしたいとお考えでしょうか。

社会起業家は、社会問題を解決してネガティブをゼロにするだけでなく、さらにプラスの未来を創造する存在です。例えば貧困問題に取り組む際も、個人の救済にとどまらず、社会全体が豊かに暮らせる仕組みを構築します。彼らの役割は、誰もが希望を持てる社会の未来を提示すること。社会には山積する課題がありますが、より多くの人が社会起業に挑戦することで、皆の力で希望あふれる未来を実現できると信じています。

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「何のために?」を研ぎ澄ます

─先ほど、社会起業に挑む人の多くが直面し、事業撤退を余儀なくされる壁があるとおっしゃいましたね。どんな壁ですか。

自分のやっていることを信じられなくなるという壁です。現状、未解決の社会課題は、経済合理性を見いだしにくい領域がほとんど。収益性が高ければすでに誰かが取り組んでいるからです。そのため、最初からうまくいく事業は多くはありません。ビジネスモデルを再構築する過程で、多くの人が市場ニーズに引っ張られ、本来の志からずれていくのです。自分が本当にやりたかったことと乖離し、「このまま続けていいのか」「本当に助けたい人の状況は改善されるのか」という疑問が壁となり、挫折してしまう人が少なくありません。

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─その壁を乗り越える術について、どのように教えているのですか?

私たちは「本当に解決したいことは何か」を探ることから始めます。通常のビジネスは市場ニーズから出発し、収益性が低ければ継続する理由を失います。対して私たちは、例えばシングルマザーの貧困問題なら、その原因や背景を徹底的に掘り下げ、解像度を上げていきます。そこから「支援が届かない本質的理由」を見いだし、ソリューションの方向性を明確にしていきます。最初のアイデアがうまくいかなくても、根本的なコンセプトが定まっていれば次のビジネスアイデアを考えられるため、納得感と自信を持って突き進んでいけるのです。

課題の本質を徹底追究して2回目に挑戦した起業は成功率が高いことが分かっています。一般的にベンチャーは長期存続が難しいと言われますが、ボーダレス・ジャパン式では半数以上が10年以上続いています。

─本質的な原因を、どのように探っていくのでしょうか。

3カ月間の伴走期間中、第一線で活躍する社会起業家がメンターとなり、受講者の壁打ち相手としてビジネスプランの深掘りを促します。また同期同士でのグループディスカッションも重要な要素です。

─受講生同士で意見交換を積極的に行う、ということですね。

そうです。互いのビジネスプランを聞き、社会課題について話し合う過程で「あなたは本当は何をしたいの?」「その考え方はあなたらしいね」といった質問や助言が生まれます。それによって「自分は誰のためにがんばりたいのか」「自分が情熱を傾けられる課題は何か」を研ぎ澄まし、事業アイデアを磨いていくんです。卒業までに自分の軸をつかめるので、多少の困難があったとしても乗り越えられるようになります。

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現場イズムと長期的視野が大事

─起業家精神を社内に醸成したいと考える経営者は多いものです。互いに課題を掘り下げ合う場を持つことは、企業でも実践できそうです。他に企業でできる育成方法はありますか。

ボーダレス・ジャパンには大手企業からの出向者もいますが、半年間の現場経験を通じて彼らが圧倒的に変化していくのを目の当たりにします。企業研修の場でも感じるのは現場イズムを持つことの重要性です。単なる座学ではなく、現地で汗をかく体験が思考と行動を根本から変えます。

多くの人は現場経験が不足しています。例えば難民問題を解決したいと思っても、難民に会ったことがない。実際に当事者と会い、その現場に向き合うことで初めて「自分事」として捉え、情熱が生まれるんです。データだけでは見えない人間の顔を現場で見る機会、実体験の場を作ることをお勧めします。

また、挑戦する人への寛容度を高めることも非常に重要です。

─挑戦を応援するということですか。

応援も大切ですが、それ以上に失敗をおおらかに受け止め、セカンドチャンスを与えることが重要です。私自身、トルコでの事業失敗後、仲間に合わせる顔がないと思いながら帰国しましたが、皆は「ナイストライ!」と迎えてくれました。この雰囲気があるから軽やかに挑戦でき、失敗を成功に変えられるのです。

繰り返しになりますが、社会課題は経済的リターンが得られにくいからこそ未解決なのです。短期的な収益性だけでなく社会的価値も重視し、こうした困難な分野に挑む人を長期的視点で応援していただきたいと思います。現場での気づきと、挑戦を応援する風土の両輪が、真の変化を生むと考えています。

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取材後記

「人間には、社会の役に立ちたいという気持ちが内在している。社会起業家は、社会課題と解決策を示すことで、その発現の道をつくる存在だと思う」と、取材中に半澤氏が話しました。そうであるなら、社内で社会起業を進めることは、働きがいの創出につながるのかもしれません。たくさんの新しい視点を得た取材でした。

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