
日立ソリューションズ本社では、社員参加型の仕組みづくりによるペットボトルの水平リサイクルに取り組んでいます。キャップ・ラベルを外したり飲み残しゼロを促すことで、水平リサイクルに適したペットボトルの回収率は27%から95%へ大幅改善しました。取り組みの裏側には、どのような工夫や挑戦があったのでしょうか。

下谷 昇平
株式会社日立ソリューションズ
経営戦略統括本部
サステナビリティ推進本部
サステナビリティ経営部
部長代理

平賀 保男
株式会社日立ソリューションズ
経営戦略統括本部
サステナビリティ推進本部
サステナビリティ経営部
マイスター

城之内 水色
株式会社日立ソリューションズ
人事総務本部
総務部
総務グループ
―日立ソリューションズはペットボトルの水平リサイクルに取り組んでいます。まず、水平リサイクルがどういうものか教えてください。
下谷:ペットボトル水平リサイクルは使用済みのペットボトルを新しいペットボトルに再生することで、「ボトルtoボトル」とも呼ばれます。2024年度の日本のペットボトルリサイクル率は85.1%(※1)で、海外に比べて高い水準です。ただ、ペットボトルの多くは繊維など別の製品にリサイクルされ、水平リサイクル比率は37.7%(※1)にとどまっています。水平リサイクルによるCO₂排出量の削減効果は大きく、清涼飲料業界はこの数値を高めようとしています。原油からペットボトルを生産する場合と比べて、水平リサイクルはCO₂排出量を63%(※2)削減することができるといわれています。
―水平リサイクルに取り組んだ理由を教えてください。
下谷:新ビジネスの創出を検討する事業部門が、循環型社会の実現にむけ、資源の有効活用と環境負荷低減のための活動として着目したのがきっかけです。まずは当社の本社ビルでやってみようとなり活動を開始しました。活動では、あまりコストをかけずに品質のよいものを回収できることを目標として、「ナッジ」と言われる人々の自発行動を促す手法を取り入れました。
―活動のポイントをうかがいます。
下谷:水平リサイクルで重要なのは、キャップとラベルを外し、飲み残しのない状態の「きれいなペットボトル」で回収することです。そのためには、一人ひとりが水平リサイクルの意義を理解し、カーボンニュートラルへの小さな貢献としての意識を持つことが重要です。協力を得るため、活動に先立って新ビジネスの創出を検討する事業部門をはじめとした関係部門が集まり、約半年にわたり議論を重ねました。
―一人ひとりの協力を得るための工夫を教えてください。
下谷:例えば、ペットボトルを捨てる場所は単なるゴミ置場ではなく、「リサイクルステーション」と名付けてレイアウトなども変更しました。社員の意識への働きかけも重要です。周知活動としては、ポスターを作成してリサイクルステーションに掲示したり、社員がイントラネットにアクセスする際、自動的に出てくるポップアップ画面でも水平リサイクル活動の情報を表示したりしました。後のアンケート調査で分かったのですが、最も効果的だったのは使用済みペットボトルを回収する中間処理業者を取材した動画です。プロジェクトメンバーが現場で撮影し制作しました。キャップとラベルを外すというひと手間をかける意義が、動画から伝わったのだと思います。
―活動でどのような成果が得られましたか。
平賀:活動前、水平リサイクルに適したきれいな状態のペットボトルは約27%でした。活動後、この数値が約95%に上昇しました。一般に、廃ペットボトルは事業系と自治体系に分かれます。前者はオフィスなどで排出されるペットボトル、後者は家庭で使われたペットボトルを自治体が集めたものです。自治体が集めるものはきれいで、資源ごみとしての品質が高い。一方、事業系は自治体系と比べて、品質は低い。その事業系で約95%を達成し、大きな手応えを得られました。
―水平リサイクルに向けた次のステップについてお聞きします。
平賀:廃ペットボトルは、収集事業者→中間処理事業者→再生処理事業者と流れていきます。この流れを確立しなければ、水平リサイクルはできません。
城之内:お付き合いのある事業者に打診したところ、「対応は難しい」との返答でした。その後、多くの事業者に問い合わせを行いましたが、適切なパートナーを見つけるまでには相当な時間を要しました。
平賀:事業者を訪問した際には、社内での活動ときれいなペットボトルが約95%という結果を説明したのですが、「事業系ペットボトル=きたない」というイメージが先行し、門前払いされるケースが多々ありました。ようやく、「自治体の集めるものと同じくらいの品質ですね」と言ってくれるパートナーが見つかり、協力を得られました。
―水平リサイクルの本格実施の効果と今後の展望を教えてください。
下谷:本格的には25年10月にスタートしたばかりで、まだ結果は出ていません。ただ、24年度に本社ビルで排出されたペットボトル総量から推計すると、原油からペットボトルを生産する場合と比べて年間約6トンのCO₂削減効果が期待できます。ペットボトル水平リサイクルは、環境負荷を低減し資源循環を実現するものです。これは当社の推進するSXに沿った取り組みですし、今回の経験をもとに事業化に向けた検討も進むと思います。
平賀:政府の規制などを含め、日本社会では廃プラスチックをできるだけ出さない、あるいはリサイクルする方向で様々な取り組みが進められています。プロジェクトを通じて接した事業者の方々からは、「ボトルtoボトルにもっと取り組みたいのだが」という話をよく聞きました。廃ペットボトルの品質がネックになって、やりたくてもできない現状があるということ。こうした課題の解消に向けて、意味のある一歩を踏み出せたと思っています。
城之内:消費者の立場だと、生活の中で「環境」を意識して行動するのは難しい。ただ、リサイクルステーションで実施したような工夫で、行動が変わることもあります。今回、生活の中で自分事としてサステナビリティを捉える重要性を学びましたし、こうした取り組みが広がっていけばうれしいですね。個々人が自分事として考える上でも、有意義な取り組みだと思います。