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日米のリサイクル文化の違いと取り組み

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前回は「米国の返品事情とその物流システム」として日米の返品に対する事情の違いや返品物流の各プロセスにおける取り組み、返品に関わるスタートアップを紹介しました。今回は物流とは異なりますが、前回の最後と繋がるリサイクルについて焦点を当ててみます。

※本記事は2023年2月に掲載されたものです。

北林拓丈(きたばやし・ひろたけ)
北林拓丈
(きたばやし・ひろたけ)
2000年に日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(現・株式会社日立ソリューションズ)にSE職で入社。JavaエンジニアとしてECサイト開発・運用に3年間携わり、その後米国ITベンダーの製品開発研究所にて1年3カ月の海外業務研修。日本帰国後は主に大手通信事業者向けの業務・システム再構築プロジェクトにコンサルタント、ITアーキテクト、プロジェクトマネージャーとしてそれぞれ従事。2016年からワークスタイル変革ソリューションの事業企画・開発に従事し、2020年1月からシリコンバレーに駐在。スタートアップとのパートナーシップや日系企業間連携による新規事業立ち上げ、事業拡大に従事。

日本と米国のゴミ排出量の比較

最初にまず日本と米国とでどれだけゴミの排出量が違うのかを見てみましょう。環境省の発表(※1)によれば、日本における2020年度のゴミ総排出量は年間4,617万トンで前年から約2.5%減、東京ドーム約112杯分に相当します。これに対して米国では2018年のデータですが(※2)、ゴミ総排出量は2億9,200万トンで日本の約6.3倍の総排出量。しかも年々増加傾向にあります。もちろん国土や人口が違いますので単純比較はできませんが、国民1人1日あたりの排出量で比較すると日本は901グラム、米国は約2.2キログラムで、米国の方が約2.5倍ゴミを排出していることになります。世界平均が726グラムですので、日本は世界的に見てやや多く、米国は圧倒的に多いと言えるでしょう。

一方、ゴミのリサイクル率ですが、日本は2020年度に20.0%であるのに対して、米国では2021年度の国勢調査によれば(※3)32%であり、日本よりもリサイクルの取り組み自体は進んでいると言えます。1960年にはわずか7%だったということですから、そこから半世紀かけて相当な取り組みを行ってきたと言えます。

※1 一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について | 報道発表資料 | 環境省
https://www.env.go.jp/press/110813.html
※2 Trash in America
https://environmentamerica.org/center/resources/trash-in-america-2/
※3 America Recycles Day: November 15, 2021
https://www.census.gov/newsroom/stories/america-recycles-day.html

米国リサイクル市場概況

改めてリサイクルに関する市場を見てみると、米国のゴミリサイクルサービス市場(※4)は2019年には83億ドルから2028年には10.8億ドルに、3.0%のCAGRで成長すると予想されています。急激ではありませんが、緩やかに今後も成長が続く市場になっていくようで、PitchBook(https://pitchbook.com/)のデータベースでこの市場に関わっている企業を検索すると1,300件を超える企業が出てきます。

※4 Waste Recycling Services Market Size Report, 2028
https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/waste-recycling-services-market

日本と米国のゴミ分別の違い

こうしたリサイクルを進めるにあたり、まず重要なのはゴミの分別です。日本は日本人の生真面目な性格からか、人手によってゴミの分別をしっかりキッチリ行うことが大事だとなっており、弊社の本社オフィスでも12種類に分別することが定められています。また各自治体によって分別方針は異なっていますが、日本一細かい徳島県上勝町では13種類45分別にも渡るそうで、これによってリサイクル率81%を達成しているとのことです(2022年現在)。

一方、米国では州や地域そして回収する業者によっても異なりますが、おおまかには一般ゴミと瓶・缶等リサイクルゴミの2種類で、もう少し細かく一般ゴミを堆肥用と埋め立て用に分け、合計3種類に分別することもあります。筆者が住んでいるレッドウッドシティ市内の例ですが、筆者のアパートメントの回収サービスは2種類の分別ですが、一軒家に住むメンバーが依頼している回収サービスは3種類の分別、といったように同一地域内でも異なります。ただいずれにしても筆者のオフィスなどを見る限り、実際は正しく分別されていないことも多いです。とは言え、近年はリサイクル意識の高まりから、回収サービスを提供するウェイストコネクション(Waste Connection)では6種類の分別とするなど細かいゴミの分別ルールも設けられてきていますが、まだ日本ほどではありません。

米国におけるリサイクルテクノロジーの例

あまりゴミの分別がされていない米国では、米国らしくテクノロジーを活用して解決するという発想のもと、このリサイクルの分野においても様々なスタートアップが登場しています。

ケンタッキー州ルイビルにあるエーエムピーロボティックス(AMP Robotics)というスタートアップでは、リサイクル可能な材料を選別するロボットシステムを提供しています。AIを用いた画像認識プラットフォームによって、金属、電池、コンデンサ、プラスティック、PCB、ワイヤー、カートン、ボトルキャップ、木材、段ボール、カップ、他10種類以上の多くの材料を選別しリサイクルすることが可能とのことで、性質として透明度、不透明度、折り畳み構造や形状も判断し、選別します。さらにブランドの認識も可能なので、どのブランドがリサイクルされているかの示唆を得ることもできます。実際99%の精度でマテリアルの分析が可能とのことです。 既に20州以上の施設で10億個以上のリサイクル品を処理しており、温室効果ガスの排出量は約50万トンの削減に相当するとのことです。

またバイオ的なアプローチとして、カリフォルニア州オークランドにあるイントロピックマテリアルズ)Intropic Materialsというスタートアップでは、ゴミに添加剤を付加してプラスティック等のマテリアルを取り出して再利用し、それ以外は堆肥として自然に返すことで廃棄量ゼロをめざしています。この先進性が評価され、10月にサンフランシスコで行われたカンファレンス「TechCrunch Disrupt」のStartup Battlefield 20というスタートアップのピッチイベントでは準優勝となりました。

さいごに

日米のリサイクルに対する違いを比較して見てみましたが、日本がより細かくゴミの分別を行ってリサイクル率を高める方向なのに対して米国はテクノロジーを活用してゴミの分別を自動化・効率化してリサイクル率を高めるというアプローチの違いが国の特性・文化の違いを表しているようで面白いです。

少しジャンルは異なりますが、ゴミ箱の量を監視したり自動で袋を密閉したりしてくれるスマートゴミ箱は米国で誕生して現在では日本でも販売・活用されています。今回紹介したテクノロジーも近い将来日本でも導入されていき、より効率的にリサイクルが進んでいくのではないかと期待しています。

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